第27話:私に新たな目標が出来た話
【天界】に着いた私とラミアは【女神】と会うことに成功した。
そこで、私は自分に【魔王】の血が流れていることを知った。
――【女神】の仕事部屋――
【女神】から感じられる威圧感は、【バルバトス公爵】以上だった。
ヤバいなぁ、助けを求める相手に殺されるのは勘弁してもらいたい。
「ちょっと、タンマです。【女神】様、私は確かにラミアから【加護の力】を受け取りました。でも、あれですよね? この力を受け継いだ【勇者】って全員死んだって聞いたのですが……。だったら、私を殺す理由ってないじゃないですか。それよりもこの力を抜き取るか、完全に封印するかしてくださいよ」
私は論理的な話をしたつもりだ。
【女神】なら悪魔や魔王と違って話くらい通じるだろう。
「はぁ、ラミアの【加護の力】の話を知っているのね……。まったく、わたくしとしたことが【失敗作】の【守護天使】を世に出すなんて……。追放したら悪魔のところにすぐに拐われると思ったのに、ノコノコやって来て、【魔王】の子孫に【力】を渡すなんて……。どこまで、わたくしの顔に泥を塗れば気が済むのかなぁー」
【女神】はラミアを今度は睨んだ。
ラミアが【失敗作】?
悪魔に拐われるのを予期していた?
この【女神】は何を言っているんだ。
「【女神】様、確かにわたくしは【失敗作】ですわ。でもでも、ルシア様は素晴らしい方です。会ったばかりのわたくしを悪魔から助けてくれました。どうか、慈悲をかけてあげてくださいまし!」
ラミアは涙をボロボロ溢しながら、【女神】に訴えた。
やめろ、お前は【失敗作】なんかじゃない。
「ふん、貴女が【加護の力】を制御できる状態で渡すことが出来たら、【最強のスキル】になるはずだったのよ。わたくしの【自信作】が【勇者】に【加護の力】を渡して、【魔王】を討伐するシナリオが出来ていたのに……。そりゃあ、わたくしも1度や、2度の失敗は許します。でもなぁ、5回は多いんだよっ、出来損ないがぁ!」
【女神】はラミアをまだ罵っていた。
「はい、申し訳ありませんですの……。でも、ルシア様は……」
ラミアは口を開いた。
「無理よ。わたくしだって完全に封印出来ないもん。そもそも、完全に封印出来てりゃ、受け渡しなんて起こらなかったのよ。それで、ルシアだっけ? 貴女だけはその【才能】で【ラミアの力】を制御できてしまう恐れがある。【穢れた血】の貴女にわたくしの【最高傑作】になるはずだった、【勇者のスキル】を操られてなるものか!」
【女神】の殺気は消えなかった。
「そんな危険な【加護の力】なのに、悪魔の手に渡るのは良かったんですか? おかしいですよ、さっきから言っていることが。なおさら、ラミアを追放するべきではないでしょ」
私は何とかして会話を繋げようとしている。
結構、【女神】はおしゃべりみたいだし……。
「悪魔ごときに、使いこなせるものじゃないの……。無理に抽出して自滅するに違いないわ。そのために噂をばら蒔いたんだから、【呪いの力】のね。【魔界貴族】の一人でも道連れにすれば【失敗作】にも利用価値ができて万事解決でしょ」
この【女神】……、【天使】を、【人間】を、なんだと思っているんだ。
なんか、私の性格のことをダメとか言ってたけど、この【女神】も中々酷いぞ。
まぁ、恐ろしいほどの現実主義者ということなのかもしれないが……。
「貴女、わたくしのことを性悪女って思ったでしょう? フフフ、そのくらいお見通しなのよ。貴女にはわからないでしょ、最小限の犠牲で【魔界】からの侵攻を防ぐ義務があるわたくしの心労が……。【守護天使】を一人作るのがなぁ、どんだけ大変かわからんだろ!? コイツのことどれだけ期待してたか知らんだろーが? ちょっとぐらい、【天界】に貢献しろって考えるのがそんなに悪ぃかよ?」
だんだん【女神】はヒートアップした。
ダメだ……、ラミアが【女神】から隠れていた理由がよくわかる。
「ラミア……、逃げるぞ。用事が無くなったからな……」
私は【女神】の威圧感に飲まれそうになりながら、ラミアに小声で話しかける。
「あっ、でも……」
ラミアは心配そうに私を見る。
「大丈夫だ、私の【才能】は【女神】様にお墨付きを貰ったんだぞ。今の話が本当なら【ラミアの力】は制御さえできれば、毒ではないんだ。私は使いこなすよ。そして、【最強の勇者】になってお前を【最高の守護天使】にしてみせるさ。そしたら、誰もお前のことを【失敗作】なんて言わなくなるだろ?」
私はラミアに微笑みかけた。
お前を【失敗作】なんて、しないさ。
「フフフ、バカな冗談はおよしになりなさい。わたくしが、それを許すとでも?」
女神から虹色のオーラが吹き出した。
【女神スキル発動】
光系拘束魔法
――ギンッ
何が起こったのか、わからなかった。
気付いたとき、私とラミアは光の輪で体を縛られて、宙に浮いていた。
ちっ、体の自由をこうも早く奪われるとは……。
どうしたら、この状況を抜け出せる、考えろ……。
「あら、戦意がまだあるの? えいっ」
女神が手を握る仕草をした。
――ギュゥゥゥン
「ぐっ、締め付けられ……」
私を拘束している光の輪に体がドンドン締め付けられる。
このままだと、体が千切れる。
「ルシア様ぁぁぁ! 【女神】様、どうしてですの? ルシア様は何も罪を犯していないですわ。これが、【天界】の頂点に立たれる方のすることなのですか?」
ラミアは泣きながら訴える。
「わたくしは、慈悲深く寛大。【魔王の血】を色濃く継いでいても無視したぐらいにね。でも、世界の平和の責任者として、これは見逃せない。新たな【魔王】の可能性は摘まなきゃ。【ノーティス】の名を持つものが【勇者】になれるはずがないでしょ」
女神はさらに力を込める。
「ぐぐっ……。ラミア、【女神】様は間違っていないかもしれない……。私は人格者じゃないし、自覚はないが【魔王の子孫】らしいからな。多数の犠牲が生まれる前に対処をするのは合理的だよ……。ぐはっ、ぐぅぅぅ……。まぁ、私がそれに付き合う理由はないけどな……。ぐっ……」
私は締め付けられる輪に苦しみながら声を出した。
「まだ、喋れるの? やっぱり、貴女の【強さ】だけは本物なんだ……」
【女神】は顔をしかめた。
ああ、声は出せる……。
声は出せる?
ルシア→女神
【武闘家スキル発動】
特大声砲弾
「グギェィァァァァァァァァァァァァァ!!!!!!」
私は全力で声の砲弾を【女神】に向かって放った。
完全に油断していた【女神】は体が痙攣して動きが止まった。
――どさっ、どさっ
私とラミアの拘束は解けて、動けるようになった。
私はラミアを両手で抱えて一目散に逃げ出した。
並の人間なら10分以上は動けないが、【女神】だったらどのくらい止められるか?
――パァァァァ
【女神スキル発動】
全状態異常回復魔法
「馬鹿でかい声を出して……。やはり、貴女は品がない!」
女神は一瞬で動けるようになった。
くっ、【勇者のスキル】の本家本元って感じかよ……。
【仙人スキル発動】
全感覚醒、仙舞影歩
全ての感覚を研ぎ澄まして、女神の動きを察知しながら、的を絞られないように残像を出現させながら逃走した。
「ちっ、うざったいねぇ! 天使達、アイツらを捕まえちゃって! 短髪の方は殺しても構わないから」
女神は空中を浮遊しながら、私を追跡する。
オリゲルトちゃんを召喚するのは、外に出てからだな……。
「侵入者だー!」
「女神様に狼藉を働いたらしい……」
「堕天使もいるぞ!」
「神を恐れぬ愚か者がっ!」
【見張り天使】達が大量にこちらに向かってくる。
ちっ、あの虹色の輝きは……。
【守護天使】まで出てきたか……。
後ろに【女神】、前に【天使】達の盛大な歓迎を受けて、私はどう逃げるか思案していた。
ラミア、少々無理な動きをしているが大丈夫か?
「耳が全然聞こえませんが、ルシア様にお姫様抱っこされて、ラミアは死んでも構わないくらい幸せですわぁ……」
ラミアは恍惚とした表情だった。
あー、そういえばこういう奴だったな……。
アホ堕天使、かなり乱暴な手を使うから落っこちないようにしっかりと掴まってろよ。
【召喚術士スキル発動】
地精霊召喚
【天界】は地震って起こるのかな?
――グラグラッ
城内の床が激しく揺れる。
天使達は突然の地震に怯んでしまった。
「よっと、翼があるから空にでも回避すると思ったが……。やっぱり面食らうと、一瞬動きが硬直するのは人間と一緒だな」
私は天使達の間を走り抜けた。
よしっ、もうすぐだ!
――ドンッ
見えない壁が私の行く手を阻んだ。
これは……?
【守護天使スキル発動】
光系結界魔法
「くっ、【守護天使】はさすがに地震くらいで怯まないか……」
私は結界を作り出した【守護天使】を見てそう言った。
「ここまでだ。人間……。処罰は【女神】様に任せよう」
【守護天使】は虹色の淡い光に包まれながら私を睨む。
「ごくろう。わたくしをここまで馬鹿にした人間は貴女が初めてね……。でも、慈悲深いわたくしは、苦しめずに……」
【女神】が私に追い付いて何か言いかけた。
――ズドーン、バカーン、ズギャーン
辺りから爆発音が聞こえた。
何事だ?
「大変です! 【女神】様!!」
階段から見張り天使が駆け降りてくる。
「何が起きたの? わたくし、忙しいのよ! 本当に怒るぞ!」
【女神】は不機嫌な声を出す。
「【魔界貴族】が宣戦布告をし、【天界】と【地上】に同時に侵攻してきました!!」
大きな声が城内に響き渡った。




