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転職ばかりしていたらパーティーを追放された私〜実は88種の職業の全スキル極めて、勇者以上にチートな存在になっていたけど、もうどうでもいい  作者: 冬月光輝
第1章:激闘の【天武会】編

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第15話:準決勝第二試合を観戦しようとしたら罰ゲームみたいに【勇者】にまた絡まれた話

ダルバート王国チームの決勝戦進出が決まり、控室で休憩を取ろうとすると、突如として泥棒騒動が勃発した。

私は、ジェノスと共に泥棒を確保し、意気投合。決勝戦を共に観戦する約束をした。


――【天武会】、観客席――


「ごめん、ラミア。ちょっと取り込んでてさ。あっ、エリス様も観戦されるのですか?」

私はラミアの隣に腰掛ける。


「まあね、あたしも対戦相手を直に見ておきたいしさ」

エリスはニコリと笑った。

決勝戦進出が決まってもさすがに慢心はないみたいだ。


「ルシアール様、アレクトロン王国とジプティア王国って強いんですの?」

ラミアは私に質問した。


「アレクトロン王国は優勝した回数は最多だね。そもそも、勇者の人数が世界一だからさ、育成にも力を入れることができるんだ。だから、アレックスみたいに【守護天使】の【加護の力】を3回以上手に入れている【勇者】を【大勇者】って分けて呼んだりしている」

私はラミアに説明をした。

私の故郷、アレクトロン王国は間違いなく今大会の本命だろう。


「ジプティア王国も強豪の一角だよ。砂漠の国でね、新しい魔法の開発に力を入れている。有名な【大魔道士】や【賢者】が多くいるんだ」

私はジプティア王国について話した。

前に行ったときは【ヘルスコーピオンのミソスープ】が絶品だった。

また食べたいなぁ。


「へぇ、じゃあさ。ジプティア王国が勝っちゃう可能性も十分にあるの?」

エリスは私に尋ねた。


「そうですね、その可能性は……」

「ありませんよ、王女様……」

私が答えるより先に後ろから声がした。


「勝つのは我々のアレクトロン王国です」

アレックスが後ろから私達の席に近づいてきた。


「やあ、ラミアさん。奇遇ですね。是非ご覧になってください。我がアレクトロン王国の勇姿を……」

アレックスはニコニコしてラミアに話しかけた。

どこが奇遇なんだ、コイツこんなに頭のネジが緩かったっけ?


「……試合は見たいですわ。でも、あなたのお顔は見たくありませんの」

ラミアはアレックスを一瞥もせずに無表情でそう言った。

怖っ、ラミアよお前、そんなに怖い感じ出せたんだ。

私はラミアの新たな一面を知った。


「すました顔もお美しい。ルシアールくん、席を僕に譲ってくれたまえ」

アレックスは私を退かそうとした。

なんだ、お前の鋼のメンタルは……。

そのメンタルなら、隣の部屋で演歌くらい平気じゃないのか?


「一応、指定席ですから。それに、後ろで彼女さんを待たせてはまずいのでは?」

私はアレックスの後ろのロザリアを指さした。

もちろん、まだそんな関係になってないとは思っているが……。


「ルシアール様、誤解ですよぉ。アレックス様は確かに【勇者】としてはお慕いしてますが、決してそのような関係ではないのですよ」

ロザリアが慌てて私に弁解を始めた。

いや、お前はアレックスとナニを触った仲じゃないか。

ああ、あれは【アオダイショウ】だったっけ。


「ああ、僕らはそんな関係では断じてない! 本当ですよ、ラミアさん。ロザリアもティアナもただの仲間ですから、ご安心ください」

アレックスは額から汗を出しながら必死にラミアに説明した。

2人共部屋に連れ込んどいてよく言うなコイツ。

1つも安心できないのだが……。


「そうだ、良いことを考えたぞ。僕とラミアさん、ルシアール君とロザリアで分かれて観戦するというのはどうだ? アレクトロン王国とダルバート王国の交流も兼ねて」

アレックスは如何にも名案を思いついたという顔をした。

罰ゲームかよっ、却下だ、却下。

何が楽しくてお前らと交流せねばならんのだ?


「アレックスさん、素敵な提案ですがそれはなりません。ルシアールもラミアも王女である私の命令でここで観戦させてます。更に、これは次の戦いの対策を話し合う場でもあります。この意味、ご理解いただけますよね?」

エリスは優しい口調ではっきり話した。


「…………ふぅ。僕らがここに居るのはスパイ行為になるということですか……。確かに誇り高いアレクトロンの勇者の行いではありませんね。わかりました。僕がラミアさんをお誘いするのは決勝戦に勝ってからに致しましょう。ロザリア、席に戻るぞ」

アレックスはエリスが言いたいことを察してロザリアと共に自分の席に戻って行った。

ああエリス様、助かりました。

上司に恵まれるのって幸せだなぁ。


数分後、準決勝の第二試合が始まった。

アレクトロン王国チームは……、【聖戦士パラディン】、【賢者】、【魔法剣士ルーンナイト】、【槍使い】の4人か。

上級職で固めた、火力重視のパーティーだな。

実にアレックスらしい。


ジプティア王国チームは……、【大魔道士】が3人で【賢者】が1人か。

尖った構成だな。

とにかく魔法で押しまくる感じか。


「ルシアール様ぁ、前から思っていたのですけど、【大魔道士】って【魔法使い】とどう違うのですか?」

ラミアが私に質問をした。


「ああ、簡単な差だよ。【魔法使い】は魔法をそのままの威力でしか扱えない。【大魔道士】は魔力の調節で同じ魔法でも威力や規模の調節が自由自在に出来るんだ。もちろん、上限はあるけどね」

私はラミアに噛み砕いて説明した。


例えば、初級魔法は規模を収縮して貫通力を増すことが出来る。

最上級魔法は消費する魔力は増えるが、攻撃範囲を更に広げて放ったりすることが出来るのだ。


「へぇ、器用なのね。【大魔道士】って、あたしも知らなかったわ」

エリスは感心していた。


「あっ、ルシアール様。ジプティア王国の【大魔道士】が炎の魔法を使ってますね。確かにルーシーさんよりも随分と広範囲に渡って攻撃が出来てます」

ラミアは指をさしながらそう言った。


「同じ最上級魔法でも、あれは2倍の魔力を一気に放出しているなぁ。ジプティア王国は超短期戦狙いか」

私は惜しみなく魔力を使っているジプティア王国チームの面々からそう感じた。


私の予想通り、序盤はジプティア王国チームがかなり押していた。

しかし、一度ジプティア王国チームの攻撃が緩むと、アレクトロン王国チームの逆襲が始まった。


聖戦士パラディン】と【賢者】はボルメルン王国チームと同じく攻守のバランスが取れている強者。


【槍使い】は長いリーチの強力な槍術を使っていてかなりの曲者だった。


しかし、それ以上に目を見張ったのは【魔法剣士ルーンナイト】だった。

魔力を剣に纏って放つ【魔法剣】の威力はとてつもなく、ほとんど1人でジプティア王国チームのメンバーを戦闘不能に陥れた。


「ジプティア王国チーム、サークレット破壊を確認。よってアレクトロン王国チームの勝利!」

審判天使の宣言によって、準決勝の第二試合は終了した。


「「「…………」」」

しばらく、私達は呆然と無言で闘技場を眺めていた。

アレックスの妙な自信の源はあの【魔法剣士ルーンナイト】か。


「なによ、あの【魔法剣士ルーンナイト】、化物じゃない。あんなの……、どうすればいいの?」

エリスは珍しく動揺していた。


確かに、あれはにわか仕込の【魔法剣】ではない。

【魔法使い】と【剣士】の鍛練を高いレベルまで積んでいることを有無を言わさずに納得できる程の威力だった。


「今まで見たどの【勇者候補】と比べても、力の差は歴然ですわ。ルシアール様、どうすればよろしいですの?」

ラミアは泣きそうな顔になっている。


「ここまで、高レベルの【魔法剣士ルーンナイト】が出てくるのは予想外だ。でも、なんとかなる。弱点のない人間なんていないからさ」

私は腕を組みながら話した。


「それじゃあ、何か手があるのね。ルシアール」

エリスは私の目をじっと見た。


「アレクトロン王国チーム対策……、それは………」

私は口を開いた。


「「それは……」」

エリスとラミアは私に注目する。


「今から考えます」

私ははっきりと答えた。


「ルシアール!」

「ルシアール様ぁ! ふざけているのですかぁ」

エリスとラミアは叫びだした。

そんなこと言ったって私だって考えなきゃわかんないことぐらいあるさ。


「私は至って真面目だよ。確かに考えなきゃ、わからないけど、勝つ自信はあるよ。ボルメルン帝国に勝ったエリス様達も十分に強い。簡単じゃないけど勝たせてみせる、絶対に」

私ははっきりと宣言した。


「そうよね、あたしもらしくないわ。弱気になるなんて。ルシアールにだけ頼るんじゃなくてあたしも作戦を考えるわ。自分の頭でも……。さあて、帰ってひとっ走りするかな」

エリスの目に力が戻ってきた。

ああ、この人はなんて強い心なんだ……。

やっぱり、私はみんなを勝たせたい。


決勝戦は私の故郷のアレクトロン王国との戦いに決まった。

古巣との戦いに因縁めいたことを感じつつ、私は帰りの馬車に揺られながら、作戦を練っていた。



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