託された手紙 他人の殺人
私はもうまともに行きていけないと分かっていました。
私をいじめる人はこの先もいると分かりました。
もう、この苦痛からは解放されないと。
それに、私はもう、人を信じることができなくなっていましたから、社会には到底出られないと思いました。
ならば死のうと決めていました。
ただ、母が死ぬまでは死ぬまい、それだけが私の命綱でした。
しかし、その命綱が、消えたのです。
母は、死にました。
母の葬儀は簡単に済ませました。
そして、父が家に残していた遺品——骨董品を、売り払いました。
そして、売り払ったお金で復讐劇の支度をしました。
まず、ホットケーキミックスで、フライパンで作れるクッキーを作りました。その中に、大量の睡眠薬を混ぜ込んでおきました。すぐに眠りにつくぐらい、大量の睡眠薬を。
それは、先述したAとCの殺害に使いました。そしてBを殺す前に同じ薬を飲ませました。ええ、高校で私をいじめていた3人を殺すために。
百舌事件、血のミルク事件、風見鶏事件の犯人は、私です。ただの女子高生、高校2年生による殺人事件です。
百舌事件では、風邪をひいたときにAを手にかけました。風邪をひいたときの声って酷くなりますでしょう? Aは私だと気付きませんでした。それに、おばあさんに見えるように化粧も多少はしましたし、何より、フードを被って腰を折っていましたからね。大量の荷物の用意は容易でした。市販の缶詰や果物を使いましたから。買う場所もちゃんもバラバラにしましたし。包丁なんて家にあるもので事足ります。指紋が残るようなものは持ち帰りましたし、Aを動かすときには手袋をしましたからね。Aは自分をいい人に見せるためにボランティアや手伝いを率先してする人でしたから、その性格を殺害に利用しました。
血のミルク事件では、Bの家の近くにあった空き家を使いました。マグカップや牛乳ぐらいなら家にありました。いつも遅い時間に暗い防犯カメラもない街を歩いているのを知っていましたからね。知っていたというか……彼女を尾行して知った、ですかね? さびれた町で、空き家を探すのは簡単でしたよ。
風見鶏事件では、風見鶏は私の家についていたものを使いました。ダンボールに包んで、指定日配達で配送したんです。Cが風邪を引くのはしょっちゅうでしたから、何もしなくても大丈夫でした。しかも、いつも風邪を拗らせて、最低でも一週間は治りませんから、風邪を引いたと分かってから配送しても間に合いました。自宅から遠い、防犯カメラのない宅配便の取扱店で、発払いで配送しましたね。Cが私のことをいじめていたのはAとBに嫌われたくなかったからで、本意ではないのは知っていました。でも殺意を抱く相手であることには変わりませんでしたから、それを利用して家に上がらせてもらいました。インターホンを押すときとカーテンを閉めるとき、Cを動かす時、家から出るときには手袋をつけました。家に上がる時はCが戸を開けてくれましたし、家には指紋を残さないようにしましたからね。ダンボールやクッキーは持ち帰りました。宅配便の伝票は聞き手の反対の左手で書きました。でないと筆跡でばれますからね……
……とまあ、実際の殺人事件についてはこんな感じでしょうかね。