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白百合ホテルの手紙  作者: 市川瑠璃子
4/12

託された手紙 ひとつ目の事件

ある日、高校で私をいじめていたグループの子のリーダー格が死にました。

殺人事件があったのだと言います。

ほら、「百舌事件」です。ご存知でしょう?

百舌事件の被害者が、彼女だったのです。

その被害者の子を、そうですね、Aとしましょう。


Aはその日、帰り道におばあさんを見かけたそうです。重たそうな荷物をたくさん持っていたおばあさんは、そのうち、どんがらがっしゃん! と、荷物を落としてしまったそうで、Aはおばあさんを慌てて助けました。そして言ったのです。

「荷物をお持ちしましょうか?」と。

おばあさんは大喜びしました。

「ありがとうねぇ」

そういうおばあさんに、Aは「いいえ」と言って荷物を持ちました。

おばあさんの家は山奥にありました。

「こんな山奥は不便と分かっていてもねえ。亡くなったあの人との思い出が消えてしまいそうで、離れられないんだよ」

なぜ山奥に住むのかと問うたAに、おばあさんはそう答えました。

そして、山道の途中でおばあさんは「もう家が近いから大丈夫だよ」と言いました。

「これ、お礼にどうぞ」

おばあさんはそう言って、手作りのクッキーをAに渡しました。

Aはその場でクッキーを食べました。

「あらおばあさん、このクッキー、焦がしました?」

「苦かったかい?少し焦がしてしまってねえ」

不思議そうに問うAに、おばあさんはそう言いました。

「あら、そうだったんです、ね……」

その時、Aは突然、途轍もない睡魔に襲われました。そして、崩れ落ちて、眠ってしまいました。

実は、クッキーには強力な睡眠薬が入っていたんです。

おばあさんはそれを見ると、にやりと笑いました。

そして、腰の曲がっていたおばあさんがですよ? 突然荷物の中からブルーシートを取り出して、Aをその上に寝かせたんです。そして同じ荷物の中から包丁を取り出して、Aの心の臓を刺したんです。

思いっきり。力強く。

貫通するほどに。

そして、生き絶えたのを確認して、近くの木に刺したんです。

貫通してできた穴に、木の枝を通したんです。

まるで、餌を枝に刺す百舌のように。

そして、現場の後始末をして、去って行きました。


——これが百舌事件の全容です。

……え? なぜ私がいるはずがないのに、こんなに詳しく知っているか、ですって?

それは後でお話しいたします。

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