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王子は獣の夢をみる  作者: 紺青
最終章 貴方のその手が、好きだった
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第87話 道

 バフォメットは映していたものを消し、呆然としているサラの方を見る。


「ありえないよな。殺しておいて、これからは共存していきましょうなんて」


 サラは何も言わない。よほどショックなのだろう。バフォメットはそんな彼女に、にこやかに尋ねる。


「どうする?俺に魂をくれるなら、地上に行く事も出来るけど」


 ローザという人間の娘の方を狙っていたが、つけいる事は出来なかった。今はこの王の方が、取り入りやすいかもしれない。


 バフォメットは予想していなかった展開ににやにやするが、その想像は早々に断ち切られた。


「……いや、有難うございます。大丈夫です」


 サラはそう言うと、立ち上がった。何故かふっきれた顔をしている。バフォメットは状況が飲み込めず、思わず声を出す。


「……は!?」

「私、どこに行けばいいんでしょう?やっぱり地獄かな。でもさっきどこ行っても何もなかっ」

「ちょっと待てよ、いいのかよ、仲間が殺されたんだぞ!復讐するのが普通だろ!?」

「リュオンは、嘘つきなんです」


 サラの言葉に、バフォメットはぽかんと口を開ける。サラはそんな彼の瞳をじっと見て尋ねる。


「本当はご存知なんですよね?」

「……ちっ」


 バフォメットが舌打ちをすると、サラはにこりと微笑んだ。バフォメットはその笑顔に顔をひきつらせる。


「……あーそうだよ!くそっ、じゃーこの世に未練はないんだな」

「んー、はい。……あの、良ければ行く前に少しだけ、話を聞いてもらってもいいですか」

「……もー好きにしろ」


 バフォメットは色々諦め、あぐらをかきサラにそう告げた。サラは彼のそんな態度を特に気にせず話し出す。


「私、王として、死んじゃいけなかったと思うんです。前も皆に辛い思いさせちゃって……今回も、裏切った形になりました」

「へー」

「……たくさんの人の、命を奪いました。そうして結局、何もできてない。自分の事最低だと思うし、後悔もしてます。……でも、心のどこかで、喜んでもいるんです」


 バフォメットはその言葉にちらと彼女の方を向く。サラは顔をうつむけ、胸に手をあてている。


「最後、リュオンが触れてくれて、嬉しかったんです」

「……ふーん」

「最低ですよね、本当なら、避けないといけなかった。私は結局、自分の事ばかりだったんです」


 サラの言葉に、バフォメットはため息をつく。


「……あ、そ。話はそれで終わり?」

「あ……はい、すみません!有難うございます」


 バフォメットはサラのその言葉には返事をせず、目の前の道を指差した。すると、遠くで分かれている道が一つ、現れた。


「分かれ道で右に行くと地獄だ。さっさと行け」

「は、はい!有難うございました!」


 サラはそう言って礼をすると、光る道を歩いていった。分かれ道を右に行き、やがて見えなくなる。


 バフォメットは周りがまた真っ暗になったところで、深くため息をついた。


「なんでそこで右に行くんだよ……」


 そう言って真っ暗い空間に寝そべる。


「はー……怒られっかな……本当俺ってついてない」


 地上に戻っても、ノアたちやオルフたちに遭遇して、トンズラした事を怒られたら面倒だ。かと言って、ここにいるのも恐ろしい。


「さて、どうするか……」


 これからを思うと憂鬱なのに、バフォメットは気づけば笑んでいた。


 どいつもこいつもバカばっかりだ。

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