第46話 魔法使いとの再会
「え、トラスさん奥さんいるの!?」
シアンは驚き大きな声でそう尋ねる。現在買い出しに出かけていたエマとトラス二人組みとローザたち四人は合流し、帰り道で雑談しているところだ。シアンの言葉に、トラスはへらりと笑った。
「へへ、そうなんです。子どももいて、もう五歳になります」
「えっもうそんなに大きいっけ!?」
ローザの言葉に、トラスは懐を探り写真を差し出す。
「これが、一番新しい写真です」
そこには、トラスによく似た元気な男の子と、優しそうな女性が写っている。
「わぁ、本当。大きくなったね!」
「今はもっと大きくなってるかもしれません」
「……悪かったわよ」
ローザが気まずそうにそう言うと、トラスはにこやかに微笑んだ。
「でも、こんな旅をする機会は滅多にありません。帰ったら楽しい話がいっぱいできるので、とても楽しみです」
「綺麗ですね、奥さん」
ローザが持っている写真を覗きこみながら呟いたコバルトの言葉に、トラスは身を乗り出す。
「そうでしょう!?学校のマドンナで、まさか僕と付き合って、いたっ!エマ、何するんだ!?」
「でれでれ惚気てるからでしょーが」
エマにはたかれた頭を撫でながら、トラスは不服そうに抗議する。
「何だよ、自分にはいい人がいないからって、僻むなよ」
「な!僻んでないわよ!いい、トラス?私は恋人を作れないんじゃなくて、作らないのよ」
真っ赤になって否定するエマに、トラスは鼻で笑って返す。
「はいはい。王子様待ってるんでしょ?」
「違うわよ!何言ってるのよ!」
言い合いをはじめた二人の動向を見ながら、ディアンは尋ねる。
「王子様?」
「エマはね、小さい頃助けられた男の子の事、今でも探してるらしいの」
「ローザ様!!」
ローザがあっさり言った情報に、エマはますます真っ赤になる。
「へー、どんな人?」
「ど、どんな人って……」
エマはシアンの問いに、言葉を切った。シアンは、不思議そうに首をかしげる。暫く変な間が続いた後、エマは意を決して口を開く。
「あのさ」
「リュオン様!」
ディアンの声が響いた。見ると、そこには辺りを見回し走るリュオンの姿があった。彼の顔は、苦しそうにゆがんでいる。ディアンの声に気づくと、リュオンは慌ててそちらの方に駆け寄る。
「!皆!サラを見なかったか!?」
リュオンの問いに、ローザは困惑しつつ答える。
「サラ?何で?寝てるんじゃ……」
「いないんだ!部屋にも、宿の外も、どこにも……!!」
*****
頭が痛い。クラクラする。
ふと、優しい何かが触れた気がして、サラは目を開けた。
「……リュオン……」
しかし瞼を開けて見たその光景に、サラは目を丸くする。
そこは周りには何もない、真っ黒な世界だ。
「目が覚めたか」
見るとそこには、紺のローブを着た、水色の髪の魔法使いがいた。忘れもしない、自分に呪いを解く方法を教えてくれた人。
「オルフさん……?」
サラがそう言うと、小さな魔法使いはにこりと微笑んだ。




