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王子は獣の夢をみる  作者: 紺青
第1章 そうして彼らは旅に出た
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第3話 ご対面

 急いで向かうと、そこにリュオンと陛下の姿があった。陛下は、白ヒゲをたっぷりたくわえた、名声高いサガスタの誇りである。しかし今彼は、ローザの姿を見るとオロオロし出した。


「ろ、ローザ様!何故ここに……」

「申し訳ありません、陛下。うちの従者が訳分からないことを言うもので」


 そうローザは作り笑いでサラサラと言ったが、リュオンの隣にいる者から視線をそらせなかった。者というと語弊があるのか。リュオンの隣には、獣がいた。

 獣は、全身黒く、その中で赤い瞳が鋭く光る。鋭い爪をもつ四つの手足を床につけており、どう見ても獣だ。ふさふさの尻尾は長く、床におち更に伸びている。


「ローザ様。お久しぶりです。相変わらず、お美しいですね」


 王のうろたえ様とは対象的に、リュオンはにっこり笑顔を浮かべるほど落ち着いている。その態度に、ローザは頬を引きつらせながらも、笑顔で返す。


「あら。お美しいだなんて。私の求婚を断っておいて、よくもそんな嘘を言えますわね」

「とんでもない。姫様は、お美しいお方です。ただ、私には貴方より愛しい方がいまして、胸が張り裂ける思いでお断りさせて頂きました」

「その愛しい者というのは、そのお隣の獣さんだと……?」


 ローザの低い問いに、リュオンはテンション高く答える。


「はい!姫様っご紹介致します。こちらが私のフィアンセ、サラです」


 ローザの中で、何かがきれた。


「ふざけるなーーーーー!!!」


 声の限り叫ぶ。エマたちも、盗み聞きしているサガスタの城の者たちも驚く。だがもう、抑えられない。


「結婚を断わっただけでも腹ただしいのに、理由が獣がフィアンセですって!?貴方、私をどこまで侮辱すれば気が済むの!?嘘つくならつくで、人間を連れて来なさいよ!いくら私より美しい娘がいなかったからって、獣連れてくる人間がどこにいるのよ!?」

「ひ、姫落ち着いて」


 陛下は可哀想に、オロオロし、今にも倒れそうだ。だが、今は賢い臣下が既に倒れており、彼が今倒れるわけにはいかない。


「息子はきっと、何か悪いのにとりつかれているんです」


 親が必死にフォローしているのに、息子は悪びれない。


「何言うんですか、父上。私は正常そのものですよ」


 ローザはよろめく。噂には聞いていた。リュオンには、恋人がいるのではという噂。それは、彼が度々城を抜け出していたからである。でもどこを調べても具体的な話が出てこず、デマだと思っていた。どのみちいたところで、自分が負けるわけないとも。

 それがまさか、獣だなんて。


「ああ、ローザ様。お気を確かに」


 よろめいたローザを、従者2人はしっかりと支える。


「……私が嫌なら、はっきりそう仰ってください、リュオン様。このままでは、私は国に帰れません」

「え、いやですから。私は貴方がどうとではなく、既に愛しい人がいまして……」

「まだ言うか!獣だろーが!」

「いえ姫様。この者は呪いにかかってるだけで、本来は人間なのです」

「……へ?」

「な?サラ」


 リュオンはそう言って、獣に優しく問いかける。気が狂ったかこのバカ王子。と思ったが、獣は彼をチラと見ると

「……はい」

と返事をした。


「ひゃああっ!?」


 ローザは驚いて激しく身動ぎし、彼女を支えていた従者共々倒れた。

 け、獣が喋った。低くはあるが、しかし女の声だ。それがことさら恐怖を煽る。

 まさか、本当に、この獣が。


「……初めまして。サラと、申します……」


 獣はそう言うと、深々とお辞儀をした。

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