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王子は獣の夢をみる  作者: 紺青
第3章 アザフスの涙
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第16話 捨てたくて、捨てたんじゃない

「くっ!!」

 リュオンは、群がる魚をひたすら斬っていく。ディアンは己が腰につけている短剣を抜き、リュオンに加勢する。サラは、深い爪で向かってくる魚を切り裂く。

 何回か斬ったが魚がまた体を生成するのを見て、ディアンが叫ぶ。

「リュオン様!きっとこの魚も魔物です。無闇に斬ってはいけません。魔物は、一回斬ったぐらいでは死にません」

「え、そ、そうなのか?」

「彼らは再生機能があります。その機能を司らない部分はたった一箇所。そこを切ればいいはずなんですが……」

「一箇所……」


 そうだ、昨日。サラが教えてくれたところを斬っただけで、魔物はあっけなく死んでいった。あれはきっと、カンなどではない。


「サラ……分かるのか?」

 リュオンが恐る恐る尋ねると、サラはじっとただ、魔物を見ている。


「わかんない。……何も、見えない」


 魚はどこまでも増え続ける。



 ユアは、必死に体をおさえている。しかし、彼女の体は確実に変わっていっている。


「ユア様。あの魔物たちは、貴方が増大する魔力を捨てて出来たものですね」

 ユアは、ビクッと体を震わせる。


「ち、違う。捨てたくて、捨てたんじゃない。勝手に……」

「……暴走したのか」

 ローザは、動けない。あんなに綺麗だったユアが、今はどんどん形をかえていく。

「た、助けて……」


「やっと。やっと手に入れた居場所なんだ……もし自分の正体が知れたら、もうここにはいられない……」

 そうして彼女は、手を差し伸べる。ローザは、その手を掴もうとしたが、ジェラルドにふさがれた。何を、と言おうとしたがユアがそこで激しく震えた。


「ぐあああああっ!!!」


 ユアはそう叫び、巨大な白い生物となった。体が制御できないらしく、海面に腕をうちつける。


「ユア様!?」

「下がっていろ」

 ジェラルドはローザにそう言うと、暴れるユアの進行方向に進む。

「ちょ、ちょっと!」

 ユアは、彼に向かって腕を振るった。しかしジェラルドが睨みつけると、ユアは意識を失い倒れた。

 たった一瞬力を込めただけで魔物を操れる。兵士たちが言っていた言葉はそれまで半信半疑だったが、実感した。

 

「よ、よかった……」

 大きな化け物となっても、ユアの顔は今、安らかだ。ジェラルドに止めてもらえて、安心したのだろう。

「……それがそうでもないんだ」

「え、なんで……」


 ディアンは、考え込んでいる。


「どうした?ディアン」

「いえ……彼らは、洞窟に普段生息しているのですよね?」

「ああ、人魚たちがそう……」

「ならば、洞窟に彼らの本体があるのかもしれません」

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