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王子は獣の夢をみる  作者: 紺青
第3章 アザフスの涙
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第14話 アザフス

 翌朝。呼びに来たディアンとともに、サラとローザは朝食に向かう。サラが前を歩く中、ローザはディアンの服の裾を掴み、小声で話しかけた。


「なんですか?」

「ねぇ。リュオン様って、あの娘のこと好きよね?」

「ええまぁ」

「そうよね。全く、今度丸焼きにしないと」

「?」

「何の話ですか?」

 後ろを振り向いたサラに、ローザは腕を組んで告げる。

「聞かないの。ほら、早くご飯行くわよ」

「は、はい!」


 ローザはすたすた歩いてサラを抜かそうとし、サラもそれについて歩く。

 ディアンはその2人の姿を見ながら、サラ様はリュオン様には強気なのに、ローザ様には素直だなぁと感じた。

 

「お早う、サラ、ローザ様」

 リュオンは2人の姿を見つけると、優しく微笑んだ。

「お早うございます、遅くなって申し訳ありません」

「お、お早うございます」

「いやいや、こちらこそいつも急に呼んですまないね」


 ジェラルドは今日も爽やかだ。彼が給士と話している間、こっそりサラが隣のローザに話しかける。


「ジェラルド様ってお優しいですよね」


 その言葉に、ローザは表情は微笑んで、サラにしか聞こえないほど小さな声で告げる。


「バカね、絶対あれは本性じゃないわよ」

「え、そ、そうですか?」


「さあ。では朝食を頂こう」

 朝食の準備が揃いジェラルドがそう言うと、途端に何か奇妙な感覚に襲われた。見ると、船が沈んでいっている。自然にではなく、ゆーっくり、規則的に。


「なんだぁ?今度は一体」

 ジェラルドが眉間にしわを寄せて立ち上がった。海に全てが入り切ると、船は急激なスピードで進む。


 そうして気づけば、巨大な竜巻が目前にきていた。


「ジェ、ジェラルド様!どうしましょう!?」

 もはや船兵はパニック状態であるが、対してジェラルドは不敵な笑みを浮かべている。

「落ち着け。皆息が出来るはずだ」


 そこで皆冷静になる。確かに、息ができる。何故。


「ほ、本当だ……!?」

「へ、陛下……?」


「皆の者、すごいのが見られるぞ」


 竜巻の中に吸い込まれていくと、ふとした瞬間に澄んだ空間に突入した。そうして船が、静かに着地する。皆、慌てて船室の外に出る。


 そこには、淡く綺麗な、黄色の髪の娘が10名程いた。……ただし、人間ではない。彼女たちは、腰から下が水色の鱗で覆われた生き物だった。


「へ、へ!?」

 サラが驚いてローザにしがみつく。ローザも、驚いた様子で固まっている。彼女たちは、リュオンに見せてもらったおとぎ話にも出てきた。

 そう、確か名前はーー


「ここは、人魚の都。アザフスですね」

 ジェラルドがそう言って、彼らに微笑む。


「そうです。手荒な真似をして、ごめんなさい」

 そうして奥から、1人の水色がかった銀髪の、美しい女性が現れた。周りの人魚たちは、道をあける。彼女は他の者たちとは違い、長く、薄いドレスを纏っているように見える。


「この都の長、ユアと申します。聞けば、貴方たちは昨日魔物を退治したそうで……」

 何故知ってるんだ?リュオンたちは、驚きの顔をしていたが、ジェラルドは至って冷静だ。

「はい。この同行した者たちが、退治してくれました」

 そうして、リュオンとサラを手で指し示す。

「そう……」

 彼女は、両手を胸の前で組んで、ジェラルドに懇願した。

「お願いします。実はまだ、魔物は海に潜んでいます。この都にいた人魚も、次々と魔物の餌食に……」

 怯えた表情をしたユアに、ジェラルドは優しく微笑み、左胸に手を添えて答える。

「ご心配には及びません。必ずや、私たちが退治してみせます」

 ジェラルドのあっさりとした返答に、ダグラスは焦り出す。

「じぇ、ジェラルド様!そんな安請け合い……!帰りが遅くなったら、セナ様が何と言うか!」

「女性が困っているんだ。ほっておけるはずがない」

「怒られるのは私なんですよ!?」


 そこで、ユアがダグラスに向けて告げる。


「勿論、ただで助けてくれとは申しません。このユアの加護のもと、通常より遥かに早く目的地に皆様を送ります」


 その言葉に、サラたちの目は輝く。

「一ヶ月かからないということですか……!?」

 それは、早く目的地に着きたいサラたちにとって、朗報だった。


「ほら見ろダグラス」

「はぁ……分かりましたよ、好きにしてください」


 それを聞き、ジェラルドは皆の方を振り返り、にまっと笑った。


「よし、では、決まりだな!!では、腹ごしらえをしてからだ」


 皆とりあえず船の中に戻っていく。その列にリュオンたちも混じる。

「でもすごいな、人魚って本当にいたんだね!」

「通常人間の前には姿を現さないって聞いてたから、よほど困っていたんだろうな」

「皆男性陣鼻の下伸ばして。全く、不謹慎だわ」

 そうして戻っていく三人の後ろで、ディアンがぽつりとつぶやく。


「…アザフスの涙……」


 その発言に、三人が真顔で振り返った。そうだ、ジェラルドはさっき。


「あーー!!」


 かくして、魔物退治プラス魔法材料探しが始まりました。

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