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さよなら生産性

作者: Q作くん

 無職だ。ニートという呼称もいいが、古き良き穀潰しでもいい。何故無職かって? そこに職がなかったからさ。どこって、職安とか求人サイトとか、その他もろもろさ。無いものはねだれない。え? ねだるな勝ち取れ? 体育会系のスローガンなら送る相手を間違ってるよ。

 とにかく、無職だ。意味するところは金がない。金がないから食えない遊べない睦めない。ないない尽くしだ。無いのに尽くしというのも変な話だ。哲学かこれは? 振り返ってみれば偉大な哲学者は皆無職だったかそれに近い存在だったハズ……これは、使命、なのか? 無職はその有り余る時間を用いて広く社会に貢献するような思想なり論理を構築せよという。だがもしも使命感をもってことに励めば、それはもう無職とは呼べないのでは? 前提条件が崩れてしまう。パラドックスというやつだ。え? 給料は発生しないから無職のままだろって? 

 この資本主義に肩まで浸かりきった守銭奴め! ゲットアウェイ!

「あんた今何時だと思ってるの! 一人でぶつぶつ! さっさと寝なさい!」

「うるせぇクソばばぁ! 今哲学してたんだよ!」

「哲学なんていいからさっさと仕事しなさい仕事!」

「これは俺に与えられた使命なんだよ!使命!」

「あんたに求められてんのは生活費を収めることよバカ!」

「バカとは何だバカとは! 哲学者に謝れ!」

「ごめんなソーリー♪髭そーりー♪」

「クっ……!」

 俺は布団から起き上がりドアを蹴破ってやった。瞬間目が覚めた。カーテンから射し込んでくる街灯の明かりに起こされたらしかった。

「……」

 時計を見ると深夜2時だった。また1日、俺は無為に過ごしてしまったらしい。

「母親とケンカする夢って……」

 情けなくなって、俺は枕に顔を(うず)めて思いっきり叫んだ。全てを吐き出したところで、残っているのは無職という現実。

「明日、死のう」

 ポツリと死を宣言してみたものの、気にかけてくれる人などいない。当たり前だ。深夜2時。みんな明日に備えて寝静まっている。明日に準備の必要のない者だけが、真っ暗な世界を起きている。

 意味もなく、起きている。

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