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絶対君主の誕生

「俺たちは、人類と魔族の戦争において、神々と共に数多の戦場を駆けてきた」


「そして、そのすべてに勝利し、魔族を完全に殲滅してきた」


――だが。


ある戦争で、魔王は全軍を率いて戦場に姿を現した。

それは、人類の自由を懸けた、最後の戦いだった。


雲が流れた、その瞬間――

ユサカは剣を握りしめ、前へと駆け出した。


《フェイント・ステップ》を発動。

一瞬で姿を消し、次の瞬間には魔族の背後に現れ、その首を斬り落とす。


「……いくら斬っても、きりがないな……」


荒い息を吐きながら、汗が頬を伝う。

ユサカは無理やり呼吸を整えた。


「大丈夫か、凛――?」


言葉が、途切れた。


ユサカの目が見開かれる。


凛の立っていた場所に、魔法が直撃し、地面が吹き飛んだ。


「凛……!」


視界が滲み、呼吸が乱れる。

胸を締めつける不安を振り払い、ユサカは駆け寄った。


煙が晴れ――

そこにあった光景を、ユサカの思考は理解できなかった。


凛は、地面に横たわり、動かない。


ユサカは彼女を抱き起こした。


「り、凛……! お願いだ……目を開けてくれ……!」


涙が零れ落ち、視界が完全に歪む。


一瞬、奈落へと落ちていく感覚がした。


だが、それを無視した。

理性は、完全に崩壊していた。


「凛……目を――」


言葉が止まる。


理解してしまった。


――凛は、死んでいた。


世界が、音を立てて崩れ落ちた。


ユサカは、叫んだ。


その直後――

一柱の神が、近づいてきた。


「勇者! 何をしている!」


「なぜ魔族を抱いているのだ!」


「この魔族は、私が討ったのだ」


誇らしげにそう告げる神。


その言葉を聞いた瞬間、

ユサカの視界も、意識も、完全に崩れ落ちた。


奈落へと沈む中――

内側から、声が響いた。


――すべての魔族を殺す。

――すべての神を殺す。


白い空間で、ユサカは“もう一人の自分”と向き合っていた。


「殺すしかないだろ?」


ユサカ・ゼロが囁く。


「凛を殺した。なら、全員殺すんだ」


「神も、魔族も」


「――全部、だ」


視界が晴れる。

感覚が、戻る。


「勇者! 大丈夫か!?」


「聞いているのか!?」


神の声が響く。


ユサカは、静かに凛の身体を地面に寝かせた。


立ち上がり、剣を拾う。


反応しないユサカに、神は苛立ちを見せた。


「戦場での礼儀を教えてやる」


そう呟き、突進する。


だが――


神が見たのは、剣を静かに構えたユサカの姿だった。


次の瞬間。


ユサカは、消えていた。


「どこへ行った……?」


神が周囲を見回す。


「勇者! ふざけるな! ここは戦場だ!」


冷静を装いながら、内心では怒りが膨らんでいた。


「放っておくべきか――」


その瞬間。


神は、瞬きをした。


首が、地面に転がった。


「……は……?」


薄れていく意識の中で、神は見た。


ユサカの顔を。


「お前たちは、全員殺す」


淡々とした声。


「魔族も」


「……神も」


――それが、人類が敗北した戦争だった。


王座の間。


玉座に座るレグルス。


「本当に、一人で行くつもりか、勇者」


「はい」


「……あの戦争での出来事、本当にすまなかった」


「だが、事故だった。神に殺意は――」


沈黙。


やがて、ユサカが口を開いた。


「召喚された時、凛は“間違い”だった」


「神の慈悲だと言われた」


視線は、静かだった。


「……それで、神に殺されるのか?」


「凛は、そんな死に方をするべきじゃなかった」


表情は変わらない。

だが、深い虚無と怒りが、そこにあった。


「俺は、一人で魔王を殺す」


「誰も必要ない」


「……神ですら」


空が暗転する。


暴風と豪雨。


魔王城――


血を吐きながら、ユサカは立っていた。

身体は、これまでにないほど傷ついている。


追い詰められていた。


「ははははは!」


魔王が嗤う。


「一人で勝てると思ったか、勇者!」


「神ですら殺せなかったこの私を!」


魔王が迫る。


「二度と会うこともあるまい!」


「……そうか」


ユサカは、静かに告げた。


――秘奥義、発動。


傷が消え、魔力が完全回復する。


そして――

ユサカは、魔王の背後に立っていた。


剣――《祝福剣・レヴマナ》が、魔王の核を貫く。


「神は、お前を見捨てるぞ……」


「俺は、もう見捨てている」


「消えろ、魔王」


魔王は、存在ごと消滅した。


地面に、ひとつの宝珠が転がる。


「……これが、魔王の力の源か」


ユサカは宝珠を砕いた。


――起源魔法、獲得。


ユサカは、神々を一柱ずつ滅ぼした。


だが――

最後の神は、すべての創造主だった。


雷が走り、雲が渦巻く。


《創造主》が、手を掲げる。


一瞬で、ユサカは地に伏した。


純粋な雷が、四肢を貫く。


祝福剣レヴマナは、力を失った。


ユサカは、微笑んだ。


剣を手放す。


起源魔法で、新たな剣を生み出す。


その名は――《ヤイカツ》。


秘奥義、再発動。


拘束は、意味を失う。


ユサカは突き進む。


《絶対》が発動される前に――


雲が流れた。


ユサカは、消えていた。


次の瞬間――

創造主の背後。


剣が、振るわれる。


創造主は、存在ごと消えた。


だが――

世界は、崩壊を始めた。


ユサカは、創造主の宝珠を砕いた。


「……これで、俺は“一なる支配者”か」


ユサカ・ゼロは消えた。


虚無の中で、ユサカは一人となった。


――絶対君主。


五年が過ぎた。


ユサカは、大陸の全人類国家を統一し、

《グレイター・アンヴィシア帝国》を建国した。


絶対君主制。


玉座の間。


「本当に、これでよろしいのですか、ユサカ様」


「そうだ」


「……お救いしたいとは、思いませんか?」


「黙れ」


感情のない声。


「同情するな。哀れむな」


「……は、はい」


「五百年後に戻る」


「それまで、七柱の原初君主にすべてを任せる」


「ケゼイオス――万界の支配者」


「お前たちは、俺が信じた唯一の存在だ」


――それでも、空虚は埋まらなかった。


ユサカは目を閉じる。


身体は純粋魔力へと還り――

五百年の眠りへと落ちていった。


誰にも届かぬ、空の玉座を残して。

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