017 七魔戦-③
アイリスさんが固有魔法を使う。すると、アイリスさんの背中からは白い翼が生え、太陽を象徴する光の杖がその手に現れる。
「今のボクはかなり強いよ?断罪光」
超高圧レーザーが飛んでくる。それに対して、僕は魔法陣を描き上げる。
「荷電粒子砲・二重・融合」
螺旋を描く荷電粒子が裁きの光へと飛んでいき、相殺す、る⁉
「ガハッな、なにを?」
急にダメージが来た。まるで体を内側から攻撃されるような。
「ついに、神童アイリスが固有魔法を使ったあああ。これは、決着がつくか?」
実況がウザい。
「無理だよ。今のボクの攻撃を止めるなんて。ほら次は?断罪光」
もう一度、荷電粒子砲・二重・融合を放つが、
「ガハッ」
またもダメージを得る。なぜだ?そもそも、アイリスの魔法は僕に届いていないはずだ……………
「まさか、それの本当の力は、出力の底上げなんかじゃない?」
「そうそう。ボクの固有魔法がそんなのな訳がないでしょ?」
「まずい、それは、それの本質は”神罰”の顕現か?」
先ほどからくるダメージ。それは、神罰の具象化だったのだ。神、すなわちここではアイリスに敵対しているものには、神罰が降る。そして、神罰とは防げていいものではないはずなのだ。だから、魔法そのものを打ち消しても、本来の効果として神罰が降るのだろう。
「大正解。それじゃ、降参してくれるかな?」
「絶対にしないよ。こんなことで降参したら君に失礼だしね。」
「そういうと思ってたよ。」
降参はしないとは言ったものの、状況はかなりきつい。やはりアレを使うしかないだろう。切り札というのは簡単に使っては意味がないが、出し惜しみしすぎていても意味をなさない。
界雷剣を取り出しながら、魔法陣を描く。
「でも、いつまで耐えられるかな?神罰からのがれる方法はないよ?」
界雷剣によって、切り捨てたり、荷電粒子砲を放って相殺したりしながら魔法陣を描き続ける。
「いや、方法は一つあるぞ?神殺しだ。」
「そんなことはさせない。断罪閃光」
ついに魔法陣を描き終える。
「さあ、反撃の時間だ。破壊の権化よ。その権能を示してみせよ。貫刺槍雷」
魔法陣だけでは出力に耐えられないため、詠唱をしなければならない程の魔法、貫刺槍雷。ケルト神話における、太陽神ルーが持つ、すべてを貫く槍。天使ウリエルの属する神話はキリスト教。そして、キリスト教において「槍」というのは特別な意味を持つ。すなわち、キリスト刺殺の象徴である。ちなみに僕は無神論者だ。これはあくまでも、神の名を使うことでイメージを強化しているだけ。
「なっ?」
荷電粒子砲が裁きの光を相殺した後雷神ノ槍がアイリスさんのほうへと飛んでいき、その体を突き刺す。すると、一気に羽がそがれた。
「槍は神殺しの象徴。これなら、僕のほうが有利だよ?」
「これでもだめなのか。しかたない、一気に仕留めてあげる。これが、僕の最大の魔法だよ。
天より降りくだりし光よ、我らが神敵に神罰を与えよ。それは、形なき天柱にして神の力。神撃光墜」
さらに強い魔法を撃ってきた。これは荷電粒子砲だけでは相殺できない。
「界雷権能・渦雷結界」
あの固有魔法の取得のための水晶ないほどではないが、かなり本気で結界を張る。
ズンッ
闘技場が揺れ、観客席との間の結界が不気味に軋み、悲鳴を上げる。
バチっバチバチッ
僕の結界が何とか持ち堪える。
「僕の勝ちだ。融合せよ。その神シヴァの権能は界雷と相互を及ぼす。界雷権能・複合魔法・超高層雷放電&貫刺槍雷。完成したぞ。神殺しの槍」
僕の名前を司る超高層雷放電。これは空高くで起きる現象。すなわち、無理やり「神に届く」ことの象徴とすることができる。そして、神殺しの象徴である「槍」が混ざれば…
本当に神殺しが可能だ。
「ちょっまっ」
アイリスさんが制止の声をあげるが、無視して放つ。
バシュッ
音をたててアイリスさんの固有魔法である神光顕現が消える。まあ神殺しの槍が象徴するのはあくまでも神殺しなので、そこまで大きな肉体的ダメージはないだろう。
ふー。やっと終わった。そもそも僕は日本人だから科学サイドの人間なんだけどなー。宗教的なとらえ方をして勝たないといけないのは大変だった。いや、アイリスさん強すぎ。防御不可能な”神罰”ってなんだよ。やばすぎでしょ。
「な、何いいいいい?固有魔法を使った神童アイリスに、ダークホースのテトが勝ったああああ。だれが、誰がこの結果を予測できただろうか。これはまさか、”最強の学院”ウラノス学院の復活かぁあああ?」
戦いが終わり、舞台から降りると紗奈が待っていた。
「お疲れ様です、誠くん。」
「ありがとう。それにしても強かったな。まさか界雷権能まで使うことになるとはね。あれは僕の正真正銘の切り札なんだけどな…。」
「大丈夫ですよ。切り札なんて使ってこそ価値がありますし、誠くんはすぐに新しい切り札を作るでしょう?」
「ああ、まあ、今回ので新しい切り札への道筋がちょっと見えたしな。」
僕が固有魔法を得るための魔法。その鍵は、神殺しの槍にあるだろう。
「やべえな。テト、お前あんだけ魔法使ってなんで魔力が残ってんだよ。」
「僕はひたすら魔力量を鍛えたし、僕の魔法陣は魔力の変換効率がいいんだよ。」
「チートすぎだろ。」
「重力魔術の使い手に言われると皮肉にしか聞こえないなぁ」
シドが先ほど放った《黒絶閃》はやばい。僕の界雷権能でも防ぎきれるかどうかだ。まあ、それでも魔力はかなり使うようだが。
さて、今は回復に専念しないとな。なぜなら、
その時、実況の声が響く。
「ただいま、一年生の部において、全ての試合が終了した。さて、今日の七魔戦一年生の部、勝者の発表だ。優勝候補だった「神童」アイリスは平民のダークホース、テトに負け脱落。よって、勝者の四校からの次の出場者はウラノス学院からテト、ネプチューン学院からはジェット、ジュピター学院からノックス、そして前七魔戦の覇者、サターン学院からゼインだ。ちなみに、覇者のサターン学院はシードでの出場だああああ。」
そう。午前の先ほどの戦いは前哨戦なのだ。本番は各学校一年最強同士の戦い。
「誠くん、さっき界雷権能見せちゃいましたし、もうバンバン使っちゃっていいんじゃないですか?」
「それもそうか。じゃあ、最速で倒すよ。」
「それがいいです。」
紗奈の助言を受け、再び作戦を練り直す。
「さあ、決勝トーナメントの始まりだああああ。まず、第一回戦出場者は、ネプチューン学院のジェット、水属性と、サターン学院のゼイン、闇属性だああ。両者とも固有魔法を既に発現している天才。さあ、去年の第三位の学校対第二位の学校、どのような戦いが繰り広げられるのか?さあ、始まりだ。」
実況に合わせて、二人が舞台に上がる。とりあえず一戦分は休憩できそうだな。この後戦う相手だし、ちゃんと見ておくべきだろう。試合が始まった。
「行け、氷弾」
ジェットの背後に大量の氷の弾丸が作られ、放たれる。
「あー、めんどくせぇ。雑魚がなんで俺に勝てると思ってんだ?闇盾、闇刃」
ゼインさんの闇盾が、ジェットさんの氷弾をすべて止め、ゼインさんの闇刃がジェットさんを切り裂かんと飛んでいく。あの闇魔法、かなり応用が効きそうだな。
「なっ、くそっ氷壁」
ゾンッ
ジェットさんが氷壁を使うが、その氷壁を飲み込みながら、闇刃が飛んでいく。
「はあ?」
闇刃が氷壁を破壊し、威力は減衰しながらも闇刃は向かっていく。
「ガハッ」
咄嗟にジェットさんが体に氷の鎧をまとい、体を守ったが吹き飛ばされ、壁にたたきつけられる。
「これでどうだ。固有魔法を受けてみろ。
天を支配し大神ゼウスよ。我が敵おも、穢れし地上を洗い流せ。それは天の怒りにして人への憎しみ。浄化氾濫」
大洪水が起きる。闘技場の真上に超大規模な水が現れた。これは固有魔法の中でも珍しいな。副次効果として魔法が強くなったり、強い魔法が放てたりするのではなく、ただただ威力が強い魔法か。純粋に威力が強いだけの魔法だから、めちゃくちゃな質量攻撃だな。
「だからさー、めんどくさいんだけど。お前ら下等生物がどんなに頑張っても僕には勝てないんだって。喰らえ、暗黒暴食」
水が、全て吸い込まれた。いや、喰われたというべきか。上空から落ちてきた超大質量の水は、ゼインのほうへと迫ろうとし、闇に喰われた。ゼインの目の前に生まれたちっぽけな球によって止められたのだ。
「そんなっ、今ので倒せないなんて…。」
「だから言ったじゃないか。下等生物の雑魚がどんなに頑張っての俺に勝てるわけないって。おとなしく負けを認めとけよ。闇槍。」
闇槍がジェットを吹き飛ばす。あいつ、強すぎだろ。一言の詠唱であんな威力の魔法が使えるなんて。
「おおっとお、試合が終わったあああ。ゼイン、圧倒的な実力でジェットの固有魔法すら一蹴したぁあああ。さあ、どんどん試合が進むぞ。次の試合はジュピター学院対ウラノス学院。代表者はそれぞれノックスとテトだあああ。既に固有魔法を発現している「鉄壁」ノックス、土属性。そして固有魔法を発現していないにも関わらず神童アイリスを倒したダークホース、風属性のテトの試合だ。しかもこのテト、なんと魔法陣なるものを開発したことで、無詠唱で魔法を使う。さあ、どちらが勝つのだろうかぁあああ。」
「それじゃ、行ってくるよ。」
「いってらっしゃい、誠くん。」
「よし、誠さっさと勝ってこい。」
応援されながら席を立ち、すでにノックスがいる舞台へと飛翔魔法で飛び降りる。これはただの演出だ。




