016 七魔戦-②
アンナさんの固有魔法によって、会場をものすごい熱気が包み込む。
「すぐに終わらせるわ。煉獄召喚」
あたり一帯が一面炎に覆われる。そして、酸素が足らずに消えるはずなのに炎はむしろうなりをあげて燃え盛る。
「ついに、アンナが固有魔法を使ったぁあああ。さあ、さっきまで有利に見えていたシドは劣勢か⁉」
「こんなもんじゃないわよ。溶岩槍」
アンナさんの背後に紅蓮の槍が浮かび上がり、シドさんに向かって飛んでいく。大丈夫なのか?
「汎用記録・派生最上級第二章・四節・《氷結最下層》」
シドさんがそう口にした瞬間、会場が凍りつき、煉獄召喚が強制的に消される。
「俺のは地獄の最下層、すべてが凍りつく世界の魔術だ。煉獄程度じゃだめだぞ?」
「なっ、消した、ですって?地獄の業火を?で、でもまだ溶岩槍は…」
「固有記録・第二章 三節。《超重力場》」
溶岩槍がシドの前に来た瞬間叩き落される。
「どうした?大丈夫か?固有記録・第三章 一節派生。《万黒槍》。補助魔術派生。《重力補正》」
《万黒槍》はシドの魔術の補助を受け、アンナさんに向かってすごい速度で飛んでいく。
「くっ、炎よ、収束したりて結界となれ。火炎結界」
ガキーーン ピシッ
《万黒槍》は恐らく圧縮された超重力場。それが火炎結界を貫こうとし、何とか遮られるが、一発目で火炎結界に罅がはいった。
「へー。そんなんでたえられるのか?固有記録・第三章 二節派生。《黒絶閃》・2」
《黒絶閃》。恐らく、重力により歪む空間のずれ。それが二方向から迫っていく。そして、あっけなく火炎結界が壊れた。
「俺の勝ちだな。」
やばいな、あれは。やっぱり僕よりシドのほうが強いかもしれない。
そう思っていると、シドが僕のほうに叫んできた。
「すまんな、テト。今のでかなり魔力使っちゃったから、次の試合は出られない。」
「そうなの?余裕そうだとおもったんだけど……」
「慣れてるだけだ。じゃあ、そういうことで。」
「うん、わかった。」
次の試合にシドが出ないということは、次に出るのは僕だ。
「さて、一年生最後は大将戦。お互い万全の状態で、負けても言い訳はできなぁあい。ウラノス学院は今のところ手堅く勝ちを得ている。次の試合でウラノス学院Vs.ヴィーナス学院の結果がわかるだろう。ウラノス学院は今年、特待枠によって平民を2人も入れている。これが苦肉の策なのか、それとも、それだけの実力があるのか?さぁ、大将の入場だ。ウラノス学院からは平民のテト=スプライト、なんと風属性!はったりではなく、実力順で大将が決まっていることを祈るのみだ。ヴィーナス学院からは既に固有魔法を発現した光属性の「神童」アイリス=ヴェリティだ。さあ、互いに大将同士、どんな争いを繰り広げるのか?」
舞台に上がる。相手のアイリスも反対側から上がって来た。歓声が鳴り響く。すごい人気だなぁ。
「ふふふ、特待生の実力、見せてね。」
清々しい顔で話しかけてきた。そうそう、こういう人を待ってたんだよ。公爵令嬢のサリーは天然だからあんまり戦ってくれないし、レクサさんはなんか怖いし、そういえばあの決闘、負けた方が勝った方の言うことをなんでも聞くんだっけ?まあいい。とにかく、こういう恨まなそうな清々しい相手を探してたんだよ。
「ああ、戦うのが楽しみだな。光属性なんて滅多に見ないし。」
「そうだね。君はかなり強そうだし、ボクも思う存分戦えそうだ。」
「それでは、両校のプライドを賭けたこの戦いは、どちらが制するのか!?いざ、始まります。」
始まりの合図を審判から受け、手始めに風刃を撃つ。
「風刃・超弾数」
無数の風刃がアイリスに向かってばら撒かれる。
「ふふっ、光壁、お返しだよ。光刃」
当たり前のように無詠唱で魔法を使った。いや、正確には術式名を言うことだけで詠唱を済ませているのだろうけど。ウインドカッターは輝く壁に遮られ、お返しとばかりに光の刃を飛ばしてきた。
これは遊んでばかりだとやられるかな?
とりあえず定番の魔法陣を描く。
「嵐装展開・攻撃術式・竜巻槍・超弾数」
ただでさえ割と危ない竜巻槍を大量に打ち出す。さあ、どう対応する?
「ふふ、しっかり偵察したから、まねさせてもらって作ったんだよね。ボク一週間こればかりやってたしね。
光装展開・攻撃魔法・螺旋光煉・超弾数」
こいつは天才だな。僕の嵐装展開を知っただけで真似した。しかもたったの1週間後。僕がこの嵐装展開を作れたのは転生してから9ヶ月後。いかにこの「神童」が規格外か分かるだろう。
そして、風の光属性版で打ち返してくる。しかも、光は希少属性なので風よりも少し強い。
このままではやばいので進化した魔法陣を描く。
「風神嵐装・防御術式・龍巻の加護」
僕の体を中心とし、周りを龍巻が吹き荒れる。龍巻は光刃を取り込み、さらに強化される。中から見ると竜巻の中を光の筋が通っているみたいだな。
「しっかり受け止めろよ?風神嵐装・複合攻撃術式・龍巻超気流」
風神嵐装。嵐装展開の進化版だ。その中の竜巻の進化版である龍巻と下降超気流の組み合わせだ。
「ッ、すごいね。凄く強い。じゃあこっちも。
光よ、私の意にそいて祝福を授けよ。光明の祝福」
アイリスが詠唱した途端、アイリスの周りを光の筋が覆い、アイリス自身にも光が降り注ぐ。ただ、光と風では相性が悪い。風に実態はないから、蒸発させたりすることもできないしな。それでも、
ジャリッ ズザザザザッ
光明の加護にふれたところでつり合っている。そしてしばらく拮抗した後、龍巻超気流が霧散する。恐らく、光明の加護の魔力自身に干渉されたのだろう。光は風を通り抜けるから、魔法の核部分まで届いてしまう。どうやら、光と風の相性は風のほうが悪そうだ。
「まったく、まったくもって互角の戦い。そして、二人とも試合が始まってからほとんど詠唱をしていない!テトは神童アイリスと互角に戦っているぅうう。思わぬダークホースの出現かぁああ?」
合間に実況の声がはいる。
「これでどう?光よ、貫け。光線砲」
かなり強い魔法。やはり風だけでは対応できないな。そもそも光線砲は光なので、認識した時にはすでにやられている。たいていの者は何もわからず一撃だろう。そして、その詠唱時間は一秒にも満たない。
しかし、それは僕も同じだ。0.1秒ほどで魔法陣を描き、
「超電子弾」
電子。それは、原子核の周りに回転する負の電荷をもつ素粒子。原子核から引き離して自由電子とし、それを強引にまとめあげて撃ち出す。
光を構成する素粒子である光子とぶつかり、おし勝つ。
「な、なにいいい?神童アイリスの、あの使えば勝つという”光線砲”をテトの魔法が食い破ったぁああああ」
光線砲を食い破った超電子弾がまっすぐに飛んでいく。
「え?まじで?や、やばっ。聖光盾」
咄嗟にアイリスさんが聖光盾を展開し、聖光盾は破壊されたが、超電子弾は止まった。
「すごいね。まさか光線砲を相殺どころか超えてくるなんて。というか何よ今の魔法。強すぎでしょ。仕方ないね。ボクの固有魔法を使うよ。
天に輝く大御神よ、この身に祝福を。それは神罰にして神の慈愛。顕現せよ、”神光憑依”。ボクの固有魔法はこれ。耐えるものなら耐えてみて?」




