010 同郷の人
ルーク魔法学院からウラヌス魔法学院にかえました。そこまでの支障はありません。
「受かってるかな?」
試験結果が張り出されるまであと三十秒。
「大丈夫ですよ、誠くん。私たちは恐らく成績上位でしょう。」
いよいよ張り出される。
ルナ=フレアナイトとテト=スプライトは…あった。一番上の特待枠。全部で五人が特待枠に入っており、僕と紗奈さんを入れて五人の特待生と成績上位20名ほどがSクラスのようだ。ちなみに下から順にCクラス、Bクラス、Aクラス、Dクラスがある。
「よし、受かった。」
「そりゃそうですよ。あれで落ちてたら学院側が忖度してます。」
「確かにね。それじゃ、お祝いになんか食べに行こうか。」
「誠くん、忘れてませんんか?こういう時のためにドラゴンの肉を残しておいたんですよ?」
「そういえば!」
森の奥にいたとき、たまたま弱ったグランドドラゴンを見つけ、運よく倒したのだ。ちなみに弱っていた理由は僕たちが倒したあのにっくき大鬼だ。
「じゃあ、宿に戻って食べようか。」
「いいですね。」
そのまま帰ろうとすると、後ろから話しかけられた。
[君たち、話をさせてくれないか?]
日本語。永らく聞くことのなかった日本の言葉。
[Sure, but can we switch locations?(いいよ。だけど、場所を変えない?)]
それに対し本当に日本人か確かめる意味もこめて英語で返す。たとえ英語を喋れなくても反応することはできるはずだ。
[Okay, where are we going?]
すると、その人、シド=ルイストラは笑いながら流麗な発音の英語で返してきた。これはもう同郷の人間だと考えてもいいだろう。ノリもいい。
[ついてきて。]
そういって宿へと歩き、部屋に招き入れる。
「無音結界」
部屋に音が漏れないよう結界を張る。すると、驚いていたので話しかける。
「僕は風属性だからね。これぐらいのことはできるんだよ。」
すると、ルイストラは苦笑しながら話しかけてきた。
「そうだったのか。でも、風属性はこの世界ではラノベと同じく火力なしと呼ばれているのに、よく特待生になれたな。」
「まあ、魔法ってのはイメージが強ければ威力も上がる。科学で現象の原理を知れるしね。」
「それもそうか。まあ、そんな話をしたいわけじゃない。一応聞いておくが、お前は日本人だよな?」
「うん、そうだよ。名前は四条誠。2175年生まれで16歳の時、地球で圧死した。横にいるのは16歳で月夜紗奈。死因は同じく圧死だ。この世界での名前は僕はテト=スプライト、紗奈さんはルナ=フレアナイトだ。」
「よろしくお願いします。」
普段知らない人とはしゃべらない紗奈が珍しく口を開いた。さすがに同郷の者とあってはしゃべらないわにはいかないのだろう。
ちなみに圧死した時の記憶はない。そんなん残ってたらまともに生活できんしな。
「は?2、2175年生まれ?まじかよ。そんなん全然俺より年上じゃねえか。ああ、すまんな。自己紹介が遅れていた。俺の名前は神薙蓮真。2841年生まれで、24歳の時に霊魂が崩壊して死んだ。地球での職業は魔術師で、探索者だ。この世界に転生したのはつい昨日のことで、向こうの世界で死んだと思ったら、奇妙な声が聞こえた後こいつの体になっていた。」
「え?なにそれ。というか、2841年生まれ?それに、魔術師だって?」
耳を疑う。それが本当なら、この世界での二年と半年が地球の666年に当たるということだ。
「ああ、本当だ。俺は2841年に生まれた。そして、2835年に、ある天才日本人科学者が【魔術】ってものを作ったんだよ。詳しい説明は省くが、量子力学の応用だ。ちなみに霊魂ってのもその科学者が発見したもので、俺ら人間の自我を司ってる。」
「そうなのか。いつの間にか地球がそんなに発展していたとは。」
驚きだ。地球でそんなことができるなら、その時代に生きてみたかったな。
「でも、魔術ってのはいいことばかりじゃなかった。」
「どういうこと?生活もよくなるし、技術も発展するでしょ?」
神薙さんが暗い顔をした。
「【厄災】だよ。魔術の行使は世界に拒絶反応を起こさせた。そのせいで、【厄災】つまり魔物の巣窟が生まれたんだよ。こいつは中から宝が出てくるわけでもない。ただうじゃうじゃとバケモンがいるだけだ。そして、時たまあふれてきて魔物の氾濫を起こす。それで、俺の両親も死んだよ。だから、人は定期的に魔物の巣窟に入って魔物を間引かなきゃいけないんだよ。」
かなりつらい過去があるようだ。苦労してきたのだろう。
「その魔物を間引く人のことを探索者っていうんだよ。わかったか?」
明るい声で話し始める神薙さん。
「そうだったのか。まあとりあえずは話はいったん終わりにしようか。神薙さん、ご飯食べていかない?」
「お、いいのか?ありがたくいただ…だめか。そういえば護衛まいてたんだった。そろそろ帰んねえとな。ああ、俺のことはシドでいいぞ。地球の”神薙蓮真”は死んだからな。」
「わかった。それじゃ、また明日。」
「ああ、明日な。」
シドは窓から飛び降りていった。下を見てみると屋根の上を走ってきた護衛が追いかけて飛び降りている。あの護衛すごいな。そういえばあれでもシドは侯爵家次男なのだ。
「じゃあ、紗奈さん。少し遅くなっちゃったけど、ドラゴンの肉で焼肉しようか。」
「はい、そうですね。」
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焼肉を食べて寝る。ベットの中で、先ほどの暗いシドの顔が頭から離れなかった。
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「おはよう、紗奈さん。」
先に起きていた紗奈さんに起こされ、顔を洗う。
「いただきまーす。」
「はい、どうぞ。」
やはり紗奈さんの料理は美味い。それに、初めのころに比べて確実に料理の腕が上がっているようだ。
「ごちそうさまでした。」
「お粗末さまでした。」
着替えて宿を出る。今日は魔法学院の入学式だからな。一応早めにいったほうがいいだろう。
ウラヌス魔法学院の前に着き、Sクラスの中に入る。そこにはすでに数名の生徒がいた。
「よおテト、それとルナ、さん。」
紗奈さんをどう呼ぶべきか迷っているようだ。
「ルナでいいですよ、シドさん。」
紗奈が微笑みながら口を開く。
「おお、それは良かった。じゃあ、テトとルナ、あらためてよろしく。」
「よろしくー」
しばらくシドと話していると、教室に先生が入ってきた。
「おい、お前ら。いつまでしゃべってるんだ。そろそろ入学式が始まるから講堂に移動するぞ。」
「はーい。」




