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WARS&WARS  作者: OGRE
戦の始まる序章……覇王降臨
7/29

棘の辿り着く道に

 新しい仲間のマナが加わり賑やかになったギルド。そして、また一人新たな仲間が加わろうとしていた。クロス・ゼシ、ファンの友人でギアとも面識がある女性だ。体躯は小柄で華奢に見えるが元西の国の王族親衛隊に所属していた時期があり戦闘力も申し分ない。そんな彼女は既にギルドの住民からの評価も高めである。そして、森林地区でレイが起こした現象と能力をコントロールさせるためギアは着々と準備を始めていた。


「レイ。明日はファンの授業は休んで俺と特訓だ。本当は早すぎるが教えるべき時が来たんだ」

「わかりました」

「あと、マナは責任持ってお前が面倒みろよ」

「はい」


 フィトやリーン、病み上がりだがアルと訓練をする傍ら勉学をする彼らは多忙な毎日を過ごしている。加えてレイはギアとの壮絶な修行がまっているのだ。彼らの能力は相当危険であり簡単に解放してよいものではない。それは重々承知しているが戦闘で使えなくては意味がない。


「マナ? 着替えてたりしないよな? 入るぞ」

「あ……」

「…………」



挿絵(By みてみん)



 レイの心の中では何で返事をしないのか?……と呟いただろう。その後細々と小さな声で「いいよ……」と返事がありすぐにレイが入って鎧を脱いだ。こういうハプニングがたまにあるからこのギルドは面白い。未だ素性のはっきりしないマナは今レイと同質で生活しているのだ。


「ごめんね……。何か返事が出来なくて」

「今度から自分の部屋で着がえような? せっかく個々に個室が有るんだし……」

「うん……」


 少しぬけているマナだが今は料理婦として働いている。文字が読めないのが玉に瑕だがかなり上手で今ギルドに所属するメンバーからの評判は高い。レシピを読み上げれば何でも作れるのが強みだろう。そして腕も申し分ない。


「あの、レイ君は何で私の名前を?」

「成り行きかな? 君に記憶が無いから説明してもしょうがないんだよな」

「そうかなぁ……私はそこがとても大切な気がするんだけど」


 次の日からレイの壮絶かつ危険極まりない地獄の特訓が幕をあけた。それ以外にも大きな動乱が幕を開けようてしているのをまだ誰も知らなかったのだった。各地でクーデターや飢饉、宗派争いや強盗などの横行と言ったことが頻繁に起こっている。


「レイ。お前にもう一つ言葉を渡しておく。この力は無闇に使うな」

「はい」

「使う時は、守りたい者と自分を守るために使え。今から見せる力はこれからも起こり続けるだろう戦乱において自らを守るために使うもの。そして、仲間を守るんだ」


 ギアがレイがしているのとは違う方式で体を変化させていく。彼の体の変化は生物的な変化でアルがレイの変化は炎などのどちらかというと現象に近い。それにギアは心情や気分で攻撃様式の変化を為さないがレイはそれが起こるためなおのこと訓練が必要だ。


「お前は恐らくは自然主義の能力だ。俺は鬼寄主義能力、体を変化させ敵を殲滅する“鬼”の力だ。だがお前はそうではない。感情の起伏で形態の変化するものだ。そこを考えて動けよ」


 ギアが促す様に力を凝縮し再び赤い悪魔を作り上げた。そして、攻撃を始めるが片腕と角しか力を使用していないギアに一度も技を当てられない。時間は過ぎ昼を回る。いつまでたっても食堂に来ない二人を心配したらしいマナが弁当を作って二人が修行をしている荒野まで持って行こうとした。


「何で当たらないんだ……」

「暴走してもいい今ならな。本気で来い!」


 マナが荒野の半径二百メートル辺りに到達した時に爆発が起き砂柱がたった。その次に撥ね飛ばされて来たのがレイだ。意識がとんだ状態の彼は何をするか解らない。


「レイ……君?」

「うぅぅぅぅああぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」


 マナに向け彼の爪が伸びた瞬間に光の壁が作られマナを守った。ファンが後を追ってきたようだった。彼女の顔に険しい怒りの念が強く表れている。それは明らかにギアにむいている。


「ギアの仕業か……」

「何だ! こぉのぉ!!!!!!!!」

「すまない! ファン! 助かった!」


 ギアがレイを地面に叩きつけ意識を飛ばし能力を停止させた。腰がぬけたらしいマナがヘタッと座り込みファンが事情を話している。ギアも申し訳なさそうに謝罪の言葉を入れているがマナよりも問題はファンの方だ。


「ギア……。なんの真似だ? 今更お前も使いたく無いだろうその力を……」

「それに関しては確かにそうだ。だが事情も変わって来たんだ。以前のように私情にとらわれていられないくらいの状況だ」

「何がだ! 第二のお前を作り出す気か!」

「こいつは“マスターカイザー”なんかじゃない。もっとも恐れるべき事態だ」

「あの、済みません。私はどうすれば……」

「マナか……さっきは済まなかった。責任は俺にある。…………弁当?、ありがとう。一緒に食べるか?」

「はい!」


 ファンも加わりとりあえずレイを起こして昼食にした。レイの力は不安定で危険な力のようだ。だが、マナは終始笑顔を絶やさずにファンやギアの話に耳を傾け、レイの過去などで出てくる笑い話を聞いては笑った。先程のことが嘘の様に。


「先程の続きだがお前は何故あの少年に、レイにそんなに恐怖を抱く?」

「もしだ。レイが同じ過ちを犯せば何が起こるかは俺には見当もつかない。今の内に制御させなければ俺が居たとしても、例えお前と組んでも勝てないだろう」

「何だと?」

「今の爆発は九割九歩九厘がレイの力だ。俺はお前の結界魔法を真似して威力を拡散させたに過ぎない」

「確かに、恐ろしいな……」

「俺が恐れるのはもう一つ。仮に奴が人類の敵になればこの世は地獄と化すだろうな。それを避けたいんだ。あの子がマナがいるうちは大丈夫だ。愛の神の名を持つ女の子か何か仕組まれてなければいいが……」

「…………」

「どうした?」

「悪かったな。こんな武骨な女で」

「誰もお前が武骨なんて言ってないだろ?」

「…………」


 タージェは嫌な情報を聞きつけギルドに動いていた。どこの告げ口屋かは知らないが現在の西の国の王がタージェの存在を知り討伐に大軍を送ったらしいのだ。それから一週間後にギルドに着いたタージェがギルドに居るメンバーに告げ中央大陸西区を守る戦線を張ると宣言した。その頃にはレイもある程度の力を使えるようになりギアが一安心した所だったようだ。


「皆、済まない。俺にデカイ足がついちまって敵軍を呼んじまった。このエリアを守るために皆に力を貸して欲しい」

「水臭いですよ。ギルド長」

「シドさん。俺はアンタに着いていくぜ」

「ウチも!」

「シドさん。アタシも行きます」

「私も行こう。なぁ、ファン!」

「えぇ、協力は惜しみません」

「助けられて数ヶ月。俺も協力します」

「私もお料理なら……」


 一同が思い思いの言葉を述べ直ぐに陣張りにかかった。敵は総勢30000の大軍。それに対抗するために個人戦は避けたい所だ。そこでこういう陣になる。


「先陣をレイとギア、その防御にファンが入ってくれ」

「了解」

「わかりました」

「御意」

「次に避難や防備を促す隊だが隊長をアルに頼む。腹心にフィトでリーンを動かせ」

「はっ!」

「了解や!」

「合点!」

「最後にマナはゼシと俺の近くにいろ」

「はい」


 ゼシがニヤリッと笑いタージェの目を見た。彼女は小柄だがスレンダーな体をしており実は隠密向きだ。そして、遂に戦闘が始まり二人が動き出した。軽装な鎧だがギアはかなり気合が入っている。


「レイ、よく見ておけよ。戦争の中で重要なのは何を守るかだ。今から俺がすることは長い歴史上でたった一つだけ、闇に葬られた事実を再現することだ。奴ら人間の型に入った悪魔は何を言っても聞きはしなかったんだ。それに自らが怒りのままに動くと自らの命を喰うぞ……。気をつけろこの世は食うか食われるかだ……」

「師匠! 何をするきですか!」

「離れろ! お前にやって欲しくないことを気は進まないがするんだ……」


 街の近くの防壁に腰かけていた天使のような少女が涙を流しながら魔法の杖を振った。大きく振った後にはギアだけが結界に入り他には誰も入らない。


「可哀想なギア……。柵はきえないのか」


 巨大な光のドームが作られ敵の軍隊をすっぽり覆った。ギアが体を変化させ龍の翼を持った人の姿に変わりそのギアの右手から放たれた黒い光線で一直線に薙ぎ払われた敵の軍隊は混乱の最中にある。上層部の偉い騎士も見えるが最早手遅れだ。


「アレが師匠の本当の力」

「レイ、君には知る義務がある。奴があぁなった訳をな」

「訳? ですか?」

「そうだ。奴は六歳で親と別れた、それも兄の策略によってな。ギアの兄が近くの軍に自分の村を売り代わりに見返りを求めた。その頃は奴らオウガは迫害の対象だった。ホムンクルスと呼ばれ殺戮されたんだよ。だから兄は素性を隠し家族を売ったんだ。高価な見返りを夢見てな……。だが、甘かったんだ。ギアが暴走し軍は壊滅した。そしてその兄は瀕死の怪我を受けその後の消息は知らない。ギアは暴走するままに東の国の都市を破壊した。だから奴はヒューマンや他の奴等から憎まれているし奴自信も憎くて仕方がないはずなのさ」


 涙を浮かべて話すファンを見ていたレイがファンに話しかけた。


「優しいんですね。だから師匠は貴方のことばかり話すのか」

「え…………。それは……」

「心配してましたよ。体が弱いのに無理をするって。あの、俺達は何も出来ないのでしょうか?」

「今は見ていろ。アイツが伝えたいことを見極めろ……」


 その頃、市街地上空で北の国の空を飛ぶ鉄の塊、つまり戦闘機が確認されアルが応戦準備にかかった。いつもは使わない長弓を取り出したアル……。フィトは周りから金属の細いパイプを集めリーンと位置会わせをしている。タージェとゼシがそれらの総合的な指揮をとり数少ない味方は機敏に動く。


「シド……。今更だけど、何で貴方は私を連れて行ってくれなかったの?」

「…………。お前を危険な目に合わせたくなかったんだ」

「なら、なんで貴方は私を迎えに西まで行ったのよ」

「時が来たのさ。俺がお前を迎え入れる準備が出来たから……とでも言おうか」

「ふーん……。でも、ビックリしたわよ。あんなに沢山、子供が居るんだから」

「あくまでも部下だ……」


 北の国の戦闘機が爆撃を始めたが弾は地上には落ちずに空中で炸裂して消える。理由は二つだ。一つはアルの弓矢。金属の塊には刺すことは出来るが貫くことは出来ない。そこで父親の形見である“雷神の弓”を使い誘電率を上げた矢を放ち数機に差し上空でサンダースパイダーネットを使うのだ。


「冷徹な奴ら……。思い知らせてやるわ!」


 二つ目はリーンが金属のパイプを爆弾に向けて投げているからだ。強力な力に加え暇なフィトが風の付加魔法を加え位置補正をし百発百中の勢いで狙っているからだ。二つの軍を相手にしていたがまったく相手にならなかったようだった。西の国の軍隊は皆殺しにあい。北の国の戦闘機は退却して行った。


「シド……。終わったわよ」

「解ってる」

「貴方も変わらないわよねぇ」

「お前は変わったよ」

「どういう風に?」

「色気付いた」

「何それ? 口説いてるの?」

「悪いか?」


 その頃に西の荒野ではレイが、市街地ではアルがくしゃみをしていた。


「風邪かなぁ」

「多分誰かが貴方と同じ子とを言ったのよ」

「違いないな。おそらくはシドさんがゼシさんに“色気付いた”とかいったんだろうな」

「クシュンッ!」


 市街地……。


「嫌だなぁ。風邪かな?」

「多分違うと思うぞ。アルさん。多分ゼシさんにシドさんが“色気付いた”とか言ったんでしょ? 因みにアルさんにはレイ辺りですか?」


 再び荒野。


「クシュンッ!」


 近くの街の中には被害が出た場所があったらしい。そこにもギルドからメンバーを派遣し救済や炊き出しなどを行った。その間のタージェはギアにやらせていたとは言えギアでは決定出来ないことの書類整理やギルドの増築を考えていた。執務は意外と楽そうで楽ではないようだ。ゼシがメガネをかけてタージェの隣に座って書類に目を通している。くすんだ赤色の瞳に鮮やかな緋色の髪が印象的な彼女はタージェと何らかの接点が過去にあるらしい。


「うぅぅぅ……」

「シド。これも変わってないわね。執務は嫌いなようね」

「お前、口うるささも変わってないな」

「そうでも言わないと話を聞かないでしょ?」


 クスクス笑いながらメガネを外したゼシの耳には機械のような物が見えた。彼女は北の国の出身のエーテリオンだ。タージェと知り合う前にも過酷な過去があるように感じられる。


「こうしてると懐かしいわね。13歳の私とアナタが大臣が居たとはいえ二人で書類整理したもの」

「あぁ、その後はだいたい大酒飲みなお前に殺されかけたがな」

「何よその言いぐさは。アナタが弱過ぎるのが逝けないんでしょう?」


 思い出話をしていると炊き出しから帰って来ていたマナとレイが扉を叩き返事と共に入って来た。盆の上には暖かそうなスープが乗っている。再びゼシが笑いマナを見た。

タージェが何でもないと付け加えて二人を部屋から出した。

「また、思い出した。みんな私たちの過去を知らないのよね?」

「知らないはずだが?」


 ギアとファンが二人で西の国に向かっていた。タージェの命令で罪のない国民を退避させるのだ。幸い西区は居住区に空きがあり住民を保護するにはうってつけだ。レイとマナは炊き出しでへとへとになり部屋でぐったりしていた。マナはそれでもベッドの上で座り込み起きていた。レイは昼間のファンの話を思い出していた。師であるギアが言っていた三つのキーワードがつながったようだ。


「レイ君」

「レイでいいよ。何?」

「何でそんなに悲しそうな顔してるの?」

「人が人を何で殺めるのかを考えてた……。ギア師匠は言ってた、力は恐れ、奢り、慣れ過ぎると己を滅ぼすと。人も同じなのかなってさ」

「難しいことでよくわかんないけど……レイ君はレイ君だよ。気にすることないんじゃない?」

「いや、マナは見たはずだ。俺の異形の姿をな。気にするなってのはちょっと無理があるよ」

「……」

「見たんだな? 気にしないからいいよ。師匠が言っていた意味がこれでつながった 。俺は……彼が進んだ道に行ってはいけないらしい」

「何だかわかんないけど。私はお料理を作って待ってるね!」

「ありがとう……マナ」


 その言葉のあとマナが顔を赤くして一度下を向いた。数十秒間考えたのかハッとしたように顔を上げレイを見て先程より大きな声でレイに話かけようとしたが少し遅かった。


「あのね! レイ……君? 私……」

「……スゥ……………………スゥ」


 彼はすでに寝息を立てて寝てしまってらしい。マナが肩を落とし再び顔を下に向けた。ベッドから立ち上がり光を反射して輝く髪を触り少し考えたあとレイの顔をつねったが反応はなくそのまま顔を近づけた。彼女は顔を前より一層赤くしベッドに潜り込んだ。


「『キス……。しちゃった……』」


 晩酌モードに入ったタージェとゼシの二人はさらに懐古にふけっている。タージェが城を抜け出る時の話やその前に起きた出来事など話題は様々だ。


「懐かしいと言えばレイだったか? あとギアはお前にそっくりじゃないか」

「血の繋がりは無くても師弟だからな」

「アナタ覚えてる? 私と喧嘩して殺し合いかけてアナタの叔父様に大目玉をくらったのよね?」

「あぁ、お前が別に付き合っていた訳でもないのに浮気だの何だの言うからだぞ? あの爺が本気にしてホントに話が持ち上がったんだからな」

「フフフ。そんな感じだったわね。でも、本気にしてたのは叔父様だけじゃなかったのに……」

「暗殺を企てた偽臣に追い立てられるように俺は城から逃げた。それからは苦労したが今は失った仲間を救えるだけの力を付けた」

「そこも変わってないわね。だけど、私はもう待たないわよ? ファンに押されたわ……」

「言葉遣いを変えていたのはそのせいか?」

「何で知ってるのよ」

「ギアから聞いている」

「忠義が厚いわね。彼は何者なの?」

「人が幸せに暮らせる世界を創りたいと願う懇願者だ。既にアイツは動き出したから革命家とでも言おうか……。自分の愛する人を守りたいからだとよ。18のガキが言う言葉か?」

「面白い子ね。相手はファン?」

「あぁ、だが……俺たちよりも過酷な過去を持ってる。二人ともな」

「解るわよ。見てればね」


 少しの間沈黙が走り互いに大振りなカップに注がれた泡立つ琥珀色に近い色の液体を口に含む。先にタージェが口を開いた。


「お前、何で棘なんだよ」

「これ? 予防線。私にはトゲが有るのよってこと」

「ふーん。そろそろそのトゲは要らないだろう?」

「どういうこと? 今更口説くなら、それなりの覚悟が要るわよ?」

「正直に言ってやる。本当はガキの頃からお前しか見ていないつもりだった。だから危険な目には遇わせたくなかったし俺が守ってやれる保証なんて何処にもなかったから連れて行かなかったんだ。…………だが、今は違う。俺にはそれがしてやれるだけの力もついた」

「…………しょうがないわね。許してあげるわよ。その代わり幸せにしてよ?」

「約束しよう」


 過去のいさかいも晴れた二人は更に勢いをまし朝まで飲み明かしたらしい。レイは昨晩にギアが任務に出たらしいことを既にタージェから聞いており少しゆっくり起床した。マナはいつもゆっくり起きる。まだ幼さが残る顔立ちに似合わぬ顎の細さと大きな目がまじまじと覗き込んでいたレイの目の前で変化した。息づかいで気付いたのか起きてしまったのだ。


「うぅぅぅん? フェッ! レイ君…………」

「あ、ごめん。起こしちゃった? あまりにも気持ち良さそうに寝てたから……つい」

「ヴァァァァァァァァ! 今何時!」

「9時位かな?」

「また、やっちゃったよ……」

「体調が完全に戻ってないんだから無茶はしないほうがいいと思うよ」

「でも……」

「下に行ってみな」


 そこには白衣を着たゼシの姿があった。厨房からはなんとも言えないいい臭いがする。マナがゼシに近よりしきりに頭を下げている。


「ありがとうございます!」

「きにしないでいいのよ? アナタはまだ本調子じゃないみたいだし……。レイ君に甘えて来なさい。三日に一日のペースでいいから始めましょう」

「はい!」


 マナが背筋を伸ばし再び頭を下げた。そして、パジャマ姿のままスカートをあげずに走り出し案の定突っかかりレイに突っ込んだ。まだ鎧をつけていないレイはもろにみぞへ頭突きを食らい仰向けに倒れた。


「キャァァァ!」

「ぐぉ……」

「レイ君! 大丈夫?」

「マナ……気をつけような……ガクッ」

「レイ君? レイ君! …………」

「アハハハハハハ!」


 ゼシの高らかな笑いが起きマナはわけがわからんという顔でレイの頭を支えている。このように不安定な情勢だが日々の中でも愉快なことがあるのだ。そこにタージェが顔を出し通りかかったフィトとアルなどが加わり笑いの輪が広がる。だが、ここにいる面々はこの五つの大陸を巻き込む動乱が始まろうとしていることを知らなかった。中央大陸の今まで小競り合いでしかなかった戦闘が他の四大陸を巻き込んだ巨大な戦争へと発展していくのだ。


TO BE CONTENEW

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