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WARS&WARS  作者: OGRE
戦の始まる序章……覇王降臨
5/29

鋼拳との誓い

 レイがギアの弟子になって早、一週間が経過していた。リーンも鍛錬に加わり修行は厳しさをましている。剣の修行以外にも総合的な格闘術や魔法なども教えているギア。彼の本職は魔法科学の研究者で世にもあまり知られていない魔法の力を研究しているのだ。レイはメキメキと力を上げ剣術、武術、ついでに学力もつけた。ギアは謎の多い男で弟子のレイもそこまで深くは知らないほどだ。


「レイ、そこはその公式じゃないぞ」

「あ、はい」

「リーン……。寝るな!」

「ホヘッ!?」


 アル、レイ、リーンは年齢が近いこともあり学業はギアやファンが教えることが出来る。現在はタージェが野暮用で不在のため副官のギアが管理を行う。レイは今のところは一人部屋で任務も二人居ないと困る任務にもついたことがなかったが最近は知名度の関係から少しづつ大きな依頼がくるようになっていた。


「レイとリーン。二人に簡単な任務を出す」

「あの、ギアの兄さん? そんなもったい付けてなんかヤバい任務なんですか? どう見てもあんまり乗り気のしない依頼に感じるんやけど」

「いや、ヤバくはないが少し面倒なだけだ。今、武道大会があちこちで開かれてるだろ? それのうちの一つがこの街で開かれてる、そいつに空きができたから出場して欲しいとスポンサーから依頼を受けた訳だ」

「なんら難しいことではない気がしますが……なぁ、リーン」

「負けるなよ? やっと知名度が上がってきたんだからな。ここでくじける訳にはいかないだ」


 中央大陸西地区に位置するこの街は比較的暖かな気候で安定した場所だ。そこは旅人の通り道になっていて宿泊産業が発展し流通が高い都市として今なお発展し続けている。武道大会では広場に座席を並べ観戦料をとって街の利益にし個人の利益としては売店、他にも出店や周りの店もこぞって売上を伸ばそうと試行錯誤を重ねる。レイ達は学業を免除されギアのより力の入った訓練を受け始めた。その教えているギアですら力が入り張り切りすぎの感が強い。


「レイ! 踏み込みが甘い! もっと力強く!」

「はい!」

「リーン! 回しに若干の乱れがある。そこを直せ!」

「わかりました!」


 大会までの期間はあと一週間。この三人の他のメンバーはどこに居るのかというと。まずはアル。


「遺跡か……。気味悪いわね……一人でこんなとこに来るんじゃなかったわ」


 西区の奥にある遺跡の調査に向かっていた。近くの村人の中に近付いて行方不明になった者がいるらしく依頼が来たのだ。だが、たまたまレイは他の任務へリーンは調査任務をするにはまだ経験が足りないためにいけずタージェは論外。ファンは南区の魔法学校に臨時講師として雇われていた。


「侵入者を確認……セキュリティ稼動。目標を撃破せよ」

「えっ!? ヤバッ!!」


 遺跡付近で行方不明者が出る事件の真相はこれだろう現在はアルが捜索中だ。これはアルが帰って来た時に聞くことにしよう。続いてタージェ。彼は野暮用とは言うもののどう考えてもしようでしかない。


「あいつはギアの話だとこの先に居るはずだ……。西の大陸か」


 野暮用とは人探しらしい。かなり思い入れのある人物なのだろうあまり行きたがらない西の大陸に向かう。武器の木製のハンマーは荷物と一緒に担ぎ上げ西の国特有の乾いた風を切りながら大股に歩いて行く。西の国東区から入って行く風が強く栄養のある土があっても乾燥に強い植物しか生えない農業に関しては貧しい国だ。


「お兄さん! 見てきなよ! 今日取れた果物だよ!」

「もらおうか……」

「お兄さんを見てると思い出すよ。ワシらはやっぱり若がよいのぉ」

「若?」

「あぁ、アンタはどこの出身かは知らんがこの国はもう終いじゃ。昔の栄えた面影は無いからのぉ。若が今もご健在ならば我ら国民は独裁を廃しかのお方をお迎えしたいもんじゃ」

「そうか、わかった。そんなに良政をする男なら探しだそう。何年かかっても…………」

「ハハハ! 気長に待つことにするよ。話を聞いてくれた礼じゃ。金は要らんからそいつをあと二つ持ってきな」

「ありがとう。大事に頂こう」


 スキンヘッドで大柄な体の骨格がしっかりした大男がフードを深く被り直しうつ向いた。片手を目であろう場所に当て同じように歩いていく。手を下ろし前を向いて歩き始めた。


「済まない……皆。いつか必ず舞い戻ろう」


 頬を伝う涙が顎に溜まり乾いた地面に落ちた。何も知らない幼女がタージェの鎧の内着を引っ張り無邪気に問いかけてくる。


「おじさんどうしたの?」


「何でもない。それからおじさんじゃなくてお兄さんだ」


 そして、レイはけして完璧とはいかないがギアから教わった技を習得してきていた。リーンもそれなりに完成度を上げギアと一騎討ちになっても三分は体勢を保てるようになってきた。二人ともまだ未完成ではあるが目に見えてギアに圧倒されたあの日からは確実に強くなっている。


「レイ、リーン。今回の試合は力試しだと思え。最初に俺はお前等にプレッシャーをかけた。『負けるな』とな。今なら解るだろ? 俺が本当に言いたいことが」

「ウチはわかったで」

「解りました」

「よし、レイは取りあえず残れ。リーンにはペロペロキャンディーがあるから食堂の机の上を探して見つけろ。ただし! 食べすぎるなよ!」

「ハァイ」


 レイが不思議そうな顔をしてギアを見ている。ギアは左目の上の切り傷を撫でながらレイの肩に手を置いて外に出るように手を振り廃教会を改装した建物の裏手にある小川の縁に座った。レイも促されるままに座りギアに尋ねた。


「あの、師匠?」

「お前の能力についてはアルから聞いた。“マスターカイザー”歴史上存在しない血族か……」

「はい、正直不安です」

「ハハハ、お前は素直でいいな。俺とは違うよ。お前には伝えておく。今は一言だがそのうち、理解するごとに増やしていくつもりだ。先ずはその能力は恐れるな」

「恐れない……ですか?」

「恐れはそれ自体が危険な代物だ特にお前は感情によって動かせるタイプだろう? だったらなおのことだ。それと今回は能力を使うなよ」

「はい、解りました」

「よし! お前も何か食って来い!」


 背中を叩かれレイも建物の正面に向かって走って行く。そんな姿を見ながらギアは微笑んでいる。あと数日で大会当日だ。ギアは出場していないためギルドにいて執務をこなすらしい。そこにファンが現れ翼を折りたたみ横に座った。


「珍しいな。悔しいがお前はレイが気に入ったようだな」

「悔しいって何だよ。確かにレイには期待を持っているさ。素直で心配性でやるときは怒涛の如くってな」

「私と旅をしていた時のお前とそっくりじゃないか」

「どうかな? で、そっちはどうなんだよ」


 ファンが首を横にふりため息をつく。手の甲に描かれている紋章の線を撫でながら悲しそうにつぶやいている。彼女もギアに心を許しているのか彼には 何でも打ち明けているようだ。


「私の卒業した魔法学校だが悲しいな。見所のある生徒は一人だ。だが、その子も少々シャイで根暗なところがある。明るければいい術者になれるのだが」

「人のこと言えないだろ? 俺と魔法学校に居た時にすぐに黙るからかなり苦労したんだぞ?」

「し、知らん! そんなことは知らんぞ!!」


 食堂の上の階にはリーンとアルの部屋がありリーンがレイを連れて窓から下で話をしている二人を観察していた。二人の痴話げんかは面白いらしい。リーンはそういうことに関してはかなり興味を持っている。大きな目を瞬かせて口いっぱいに頬張ったぺろぺろキャンディーを一度出して例に問いかけた。


「ねぇ、レイ」

「ん?」

「あの二人はどういう関係なんやろうか?」

「俺が知るわけ無いだろ?」

「弟子なのに?」

「お前……弟子なら何でも知ってる訳じゃないんだぞ」


 その時には既に各地から集まった武道家たちが最終調整に入っており数はザッと100人以上。総当たり戦でぶつかるらしく相手は予想しにくい。しかし、レイは剣をリーンは槍を使っていいのでギアはそこまで心配をしていなかった。


「……そろそろか、俺も出れればいいのだが」


 その頃、ファンの友人のゼシがこちらに向かっていた。深紅のローブを纏い裾には体と同じく薔薇の模様が入った派手な物だ。背中には生活要具や工具などが入って大きく膨れたリュックがあり小柄な彼女が更に小さく見える。


「ファンの話だと……。あの先か」


 西の乾燥した風を受けて彼女はひたと歩く。その頃、武道大会当日。彼らより一回り大きなタージェ程の大男ややり手の弓士らしい女性。武道大会だが魔法使いまでいる。少しニュアンスがずれるが一応戦うための術を習得していれば大体の戦士、魔術師、騎士、弓師、などの人間が出場できるようだ。


「種族ってこんなにも多かったんやな」

「あぁ、亜主まで入れるともっと増えるぞ」

「アシュ?」

「ゴメン。難しかった?」

「まぁ、普通じゃない種類やっちゅうことは解ったで」

「そうか。なら問題ないか」


 控えの広場は混沌しており出場する選手でごった返していた。レイが一回戦で当たるのは明らかにヒョロヒョロしていて弱そうな剣士。リーンはビーストのギガントと呼ばれる巨大な種族の中でもさらに大柄な戦士。あと数分で競技が開始される。観戦者も続々と増えて来ていた。そんななか今しがた一回戦第一試合が始まったようだ。


「始まったか……」

「じゃぁ、ウチは行くな……」

「気をつけて来いよ」

「お、おおぅ」


 リーンが何かを言おうと再び振り返った時にレイが笑顔で手を挙げながら言葉をついだ。リーンは顔を赤らめながら短めの髪の毛を引っ張ったりねじったりして玩び最後に頭を人差し指でかきながらぎこちない返事をして広場へ向かって行った。明らかに挙動がおかしいが鈍いレイは気づかない様子……。


「兄ちゃんも罪だねぇ」

「あ、あの何がでしょうか……」

「解らねぇ内はお子様だな」


 隣でストレッチをしながら二人のやり取りの一部始終を見ていた男に話しかけられたようだ。それを真に受けて考え込んでいるレイは放っておこう。リーンは第一選抜二試合目に出場する。相手は大柄な戦士で先程見た時には持っていなかったアックスを持っている。


『さぁやって参りました! 注目の二試合目! 赤コーナーは前回のチャンピオンの巨人ダイオード!』


 司会者兼解説者が抑揚の強いよく通る声で広場の赤い塗装のされた入り口から入ってきた男をゆびさした。観客席からも同様に歓声が沸く。大きく魔法の炎を使って名前が中に現れた。


『続いて青コーナー! 最近噂のギルドに所属する看板娘姉妹の妹リーン・ハルバート! 初出場』


 女性の観客から多くの声援を受け比較的小柄で華奢に見えるリーンが青い門をくぐって入って来るとすぐに男が話しかけてきた。こちらも魔法で青の炎がリーンの名を中に飾った。ただリーン本人は恥ずかしそうに右の頬を人差し指でぽりぽり掻いている。


「嬢ちゃん! 怪我する前に棄権したらどうだ?」

「その言葉、そのままお返しするわ。ウチはアンタなんかに敗けはせぇへんで!」

「口だけは達者だな。だが大人を怒らせると危ないことだけは注意しときなよ。嬢ちゃん!」

「ふん、ゴチャゴチャと煩いなぁ。すぐに結果はわかるさかい安心しいおっちゃん!」


 戦闘開始のゴングが鳴り響き各々が相手に向かって前進する。リーチは明らかに敵の男の方が大きいが彼の振るアックスは空を切るばかりで進展が見られない。苛々しはじめている男は技の精度を欠いてきている。リーンはギアに教わった側歩と呼ばれる反復横とびの改造版のような歩き方で見事に回避している。大きな一撃は隙が大きく彼女にとってはお茶の子さいさいなのだ。


「どうした! 避けてばかりでは何も進まんぞ!」


 リーンはだいたい言葉等で熱くなるタイプである。だが今回は冷静だった。これもギアにアドバイスされていたのだ。矛槍を見事に使いアックスの軌道をずらしてそのアックスが地面と接触した瞬間に柄に恐るべきバランス感覚で駆け上がり矛槍を下げ拳を突き出した。


「でりゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」


 突き出した拳が一回りも二回りも大きな敵の頬を妙な音を立てながら打つ。大男は観客席付近までふきとばされのびてしまった。空中で美しく二回転し立ち上がると仁王立ちで矛槍を地面に突き立て審判を見てにこりと頬笑みかける。


「しょ……勝者。リーン・ハルバート!」


 歓声がおこりリーンはレイに向けてVサインを送っている。レイは笑いながら拍手をし入れ替わりに自分の試合に入った。リーンは手傷どころかスタミナはまだまだ残っているらしくおどけているしまつだ。


『さぁ、本日二人目の最年少です。先程、強力なパンチをかましてダイオード選手を打ち負かしたリーン・ハルバートの友人で凄腕の剣士! フェンク・レイ・スウォードだ!』


 三本の種類の違う剣を装備し闘技場に立つレイの相手はヒョロヒョロの剣士だ。だが持っている剣は特殊な物でウィップソードと呼ばれる伸び縮みする剣。本人も顎が細く舌が長い。まるで蛇のような剣士だ。


「シャシャシャ……」

「……」


 ゴングが鳴り響き蛇のような剣士が飛び上がってレイに向けてウィップソードを繰り出す。だが、彼には一発も当たらない。それどころか敵は疲れるばかりのようだった。伸び縮みする剣は速度があり威力とリーチは高いが扱うには相応の筋力と持久力が必要になる。使えても持久戦に持ち込まれれば敗戦は必至にの条件になってくる。もし体力があってもあの武器は扱いが難しく大概の剣士はこれを扱えない。


「シャァ!」

「やぁ!」


 レイが避けのステップから大剣を掴み伸びてピンと張ったウィップソードを断ち切った。剣士は唸り声を出したと思ったとたんに懐から小刀を取り出してレイに向けて投げ大剣でガードしたレイに向けて半分になったウィップソードをうちおろした。


「終わりだ!」

「どうかな!」


 中剣を反対の手で抜き。逆手で刃を返し軌道を変え中剣を投げ上げ短剣を抜き相手の手首に柄を打ち付け剣を落とさせた。空を切っていた中剣を短剣を鞘に納めてすぐに掴み大剣を肩にかけて相手に手を差しのべた。


「いい勝負をありがとう。剣士として多くを学ばせてもらった貴方の名前を知りたい」

「ふん……。ガキが。オレはスネークだ」

「スネーク。ありがとう」

「これからお前がどう転がるか楽しみだ。お前はスウォードといったな。剣を極めるなら『オーブ・ギア・オーガ』を訪ねな。ヤツならお前をもっと強くするだろう」

「我が師に伝えよう。スネーク彼も喜ぶだろう」


 剣士との勝負を終え今日の試合を終えた。リーンはレイとともに自由時間をもらったことに対して気持ちが高揚している。いつもの薄着で飾りの少ない民族衣装を身につけレイを急かし広場へでる。楽しい時間はすぐにすぎて夜を迎えた。ギルドに帰り各々の部屋に入って今日、一日の疲れを無くすように深い眠りに沈んで行った。


「二回戦か。昨日よりも強そうな奴等がそろってるな」

「うぅ、ウチ緊張してきた」

「大丈夫だって」


 今日はレイの試合が先だった難なく倒しリーンの試合が終わるまで控えで待っている。すると驚くべき名前が司会者の紹介で聞こえた。


『さぁ、二日目も大詰めだぁ! 今日のおおとりは最年少対最年少の闘いとなってるぞぉ! 先ずは赤コーナー! 流浪の賞金稼ぎフィト・ソニック!』


 長髪を束ね出身の和の国の民族衣装を着た精悍な顔立ちの少年が手にナックルと呼ばれる金属のグローブを付けて現れた。彼、フィトはレイの親友で元軍人。レイがタージェに拾われてから行方が解らなくなってしまった友人の一人だ。


『対する青コーナーは美しさと強さを兼ね備えた美少女戦士! リーン・ハルバート!』


 リーンが恥ずかしそうに顔を赤くしながら門をくぐり抜けフィトと向き合った。リーンは目の前の彼に興味を持ったようで目を凝らしてよく見ている。するとフィトがリーンに尋ねて来た。


「君はこの街に詳しいかい?」

「微妙やな。ウチも最近レイに連れられてココまで来たさかいあんまし知らへんのや。ごめんなぁ……それより」

「……!? 今、君はレイって言わなかったかい?」

「あぁ、ウチの彼氏や……っちゅうのは願望で。」

「もしかしてフェンク・レイ・スウォードじゃないか?」

「そや、どないして」


 その直後にゴングがなり両者とも武器を構えた。切り替えの早い二人は戦闘体制をとり間合いをとる。リーンもフィトもバトルスタイルは同じようなものだ身軽で速力のある重い攻撃が売りなのだ。体格はどう見てもフィトの方が上だが。


「行くよ!」

「臨むところや!」


 レイはリーン側の控えに入っていてその特徴的な容姿を見つめている。懐かしい仲間に再開出来たからだ。長い髪が揺れリーンの突きや流し技を返す様などは美しいと言えよう。彼も生き延びていたことに感動を覚えているレイは勝敗のことを完全に忘れていた。


「やぁ!」

「はっ!」


 試合は長引き息を飲むような闘いになっている。決着は激闘の末について惜しくもリーンの判定敗けだ。そして、互いの健闘ぶりを確かめ合うように握手をする。そんな清々しい姿を目にした観客達からも健闘を称える拍手が響く。


『勝者! フィト・ソニック!』


 審判の判定の後の司会者の締めの言葉を聞いている途中に気が抜けたのかリーンがよろめいた。レイが抱え起こし一度外に出ることになりその横でフィトもレイに話しかけている。


「大丈夫かい? リーンちゃん」

「大丈夫や。リーンでええよ」

「わかった。それからレイ……久しぶりだな。そして、無事で何よりだ」

「あぁ、お前こそ無事でよかった」


 リーンとフィト、レイは一度ギルドに向かって歩いた。その間はレイが前線地からどうやって生き残り今に至るかを話したようだ。そして、フィトも軍が取った選択を話自分達が取った経路を語っている。タージェの予想通り友を付けずに秘密裏に逃げようとした現王は討ち首になったらしい。フィトやそのほかの残党はいく組にも分かれ祖国に帰るなり他の国に寄属するなど別々に別れて行ったとフィトはいう。


「俺は前線地で敗戦し大臣の命令で国を出ようとしたんだが敵の増援に阻まれちまったんだ。今はその時に助けてくれた人のギルドに所属してる」

「ギルド?」

「あぁ、リーンもその人からの任務でボア・アロウ・ルースを探しに行った時に助けたのさ」

「ボア・アロウ・ルースだと? あの碧独の美女か?」

「たぶんそれだな。行ってたのは南の大陸だった」

「なら俺の経路と被る点があるぞ。もっともクーデターの影響で少し着港が遅れたがな」


 それからは入れ違いになっているらしい。レイが陸路を進んでいる時にフィトは海路を進んでいたようだ。そしてギルドにつく頃にはフィトが背負っていたリーンが寝息を立てていた。


「レイ、お帰り。リーンのことは残念だった……ってそちらは?」

「師匠。リーンが少し緊張からか貧血を起こしまして俺の親友のフィトに手伝ってもらっていたんです」

「そうか。ならいいぞ。ところで君は軍にいたようだね。行く宛は?」

「今は特にないです」

「なら家に……俺たちのギルドに入らないか?」


 ギアのいきなりの勧誘に驚くもフィトはそのまま入隊を志願した。フィト自身の身の上もこれでひと安心だ。リーンは彼女の部屋に運び込まれ近くのお婆さんなどに着替えを頼みフィトとギア、レイは話している。


「へぇ、確かにきれいな作りだな」

「だろ? オレも来た時は正直驚いた」

「だが、ボア・アロウ・ルースは?」

「任務に行ってるはずだが?」


 その時、パジャマのリーンが起きてきて会話に口を挟んだ。


「なぁ、レイ。思うんやけども。ながすぎやないか? アル姉さんならもうそろそろ帰って来てもええ頃やと思うんよ」


 三人が食堂で食事をしているとギアがその話を持ち込んで来た。頭の上に丸く悪魔のような翼とギアにある三本の角のようなトケが生えている物体がある。ギアが新しい任務について説明してる間も三人はずっとそれを見ていた。


「聞いてるか? ……こいつも連れてけ。明日、大会が終了時にアルが帰還していなければフィトとレイが出ろ」

「あのギアの兄さん。ウチは?」

「他の任務についてもらう。ファンとついてもらうつもりだが……」

「うう゛ぅぅぅ。ウチも一緒じゃダメなん?」

「別にいいぞ。別にファン一人でもできない仕事ではないしな」

「ありがとう!」


 次の日の決勝はレイとフィトがぶつかり激戦の末にレイに軍配があがった。二人とも息を切らせ疲労感が見えたが爽やかな顔立ちで握手をし表彰と記念品の贈呈を受けてギルドに帰って行った。だが、嬉しくないことも同時に起きている。アルはその日の内に帰還することはなかった。ギアの指示を受けて三人が各々荷物を持ち次の日の出発に備えその日は眠りに着いた。


  TO BE CONTENEW

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