聖戦……前を見よ!
戦闘は粗方片付け……無数の死体と手傷を追った騎士の風貌の二人が互いに背を預けていた。年を取っている黒い鎧の男は体に無数の血の跡をうけ赤と銀の装飾の赤い髪をした少年は手を見ながら覇王の紋章をみている。
「俺は……」
「悔やむな。前を向け。俺のようにな……今から見せるのは俺の過去と意識だ」
レイは急に意識が遠のくのを感じたが直ぐに気づいた。自分以外は全てモノクロな世界。そこには……一度しか見たことはない母がいた。その横には父、そのさらに遠巻きにプルトンがいる。プルトンは安心したような顔をしていた。レイの母であるギルはその時代の冥王家の跡取りだったらしい。だが……この時、プルトンは姉を逃がし、トゥーロンに託したのだ。
『俺が何故、敵役を買ってでたか? 簡単だ。お前を、甥を勇者覇王にするためだ。冥王一族や覇王一族とは言うが所詮は人間に尾や鰭がついた程度の人。だから、俺はわざとトゥーロンに警戒心を抱かせお前を守らせた』
真意は残酷だった。冥王一族は滅びずに生き続け覇王の代頭、そのたびに死ななくてはならないのだ。プルトンではなく本来ならば姉のギルが勤めるハズだった。しかし、プルトンはそれを阻止させて自分がそうなるように仕向けて姉を救い……トゥーロンに託した……とい外形だ。それでもプルトンには邪念が無いわけではなかった。
『俺は実際プルトンを憎んでいる。姉を守るためとは言え覇王一族に嫁がせたくはなかった。しかし、そうする他に道はなく……姉とトゥーロンは愛し合っていてお前が生まれている。その時には既に俺の策略は始まり……俺はお前に殺されるために今までお前を挑発しながら生きてきた』
プルトンが即位する光景を見ているレイ。プルトンも懐かしそうに……悲哀を含んだ瞳で見ている。赤い髪は一族の特徴らしい。プルトンもその髪を撫でつけていた。そして、プルトンは次の映像に飛ばす。レイが生まれて明覇が……ギルが慈しみながら抱いている映像だ。その中では信じられないことを口にしていた。トゥーロンと明覇は共に居られない運命だったのだ。そして、トゥーロンとプルトンが連れ立ちスウォード家に託す瞬間の映像が……。
「お前は……何故、覇の戒律を守るのだ!」
「殺したいなら殺せ……所詮は出来損ないの覇王だ。殺されても文句は言えん。だが、ここではやめてくれ……レイにレイには……血の上を歩む未来を歩ませたくないのだ」
「チッ……どの道、無駄なことだ。噛み合う歯車は止まらん。俺はお前のためには死なん! 姉様とこのレイだけだ。この甥の命は俺が救う、俺は貴様を許さん!」
「わかった……腹に据えよう」
レイ達はまた別の記憶に飛んだ。それは剣を握りプルトンを圧倒する母、ギルの姿だった。まだ、うら若い少女の面影が残るギルは口の端に呆れを帯びた表情でプルトンを見下ろしている。プルトンは木製の剣をとりまた構え直す。楽しそうに赤い髪を翻すギルをプルトンも憧れの眼差しで見続けていた。だが、やはりプルトンは勝てなかったようだ。
「ははは、やはり姉様はお強い」
「当然だろう。私はそのために居るのだからな」
プルトンの言葉は痛々しいほど沈み涙も浮いて震えていた。レイの肩に手を付くといきなり回想を停止させ辺りを睨みつけている。レイもそれに気づき警戒を強め柄に手をかけてプルトンの背側に回った。プルトンは一瞬驚いたらしいが頬の強張りを解いて笑顔を作り剣を抜くと前に出る。そこには白い装束の老人が佇みプルトンの剣を受けていた。
「ほう、冥王家が我らを裏切るか」
「俺は冥王ではない。ただのバールだ。貴様こそ見限ったぞ……最高神、ゼウス……」
猛烈な剣と剣のぶつかり合いが始まった。あの回想の時の彼とは同じ人物に見えないほどの剣の腕をしている。両刃の剣とゼウスと呼ばれた老人の大剣がぶつかり合う。……その時、レイの背中に寒気が走り彼も剣闘の最中に身を投じた。四本の剣が魔法で結合した大剣に黒い六対の翼を持つ血に飢えたナイフを持った男とぶつかり合う。
「ふん、小童が言いよるは! 姉の一人も救えなんだ小僧が!」
「まだわかっていないみたいだな。お前は誘い出されたんだ。知っている。父上と貴様が通じ……レイを亡き者にしようとしていることくらいはな!」
プルトンの体から黒いオーラが吹き出しゼウスを吹き飛ばした。彼も自らが言うほど紛いではないのだ。大剣を撫でるように切っ先が走りゼウスの右頬を掠めて長い白髪の一部を切り落とした。
「ふん!」
「く……」
六対の翼を持つ黒衣の黒天使はレイの動きが止まったのにあわせて動きを止めた。ダガーを持つ手にはレイの大剣の付けた切り傷を見ている。暗く、光のない瞳を動かさずに気味の悪い笑顔を浮かべた。
「いい」
「……」
「良いぞ! この感覚! 一寸先は闇だ……俺は死ぬかも知れない……いや、お前が死ぬかもしれない。……そんなことはいいか……。もっと楽しませてくれよ!」
レイと男は同時に前進し切りつけあう。レイの鎧にも沢山の切り傷がつき頬や生肌の露出している部分には細いクリスダガーの切り傷を沢山受けている。その男はまるで訓練された猛犬のようにレイに詰め寄ってきた。首を狙いクリスダガーを滑らかに指をさばいて狙い続けてくるのだ。それを心配そうに見ているプルトンが……。
「余所見は……命取りだ!」
胸を貫かれ血を流し倒れ込む。しかしまだ、ゼウスと呼ばれた老人の足をつかみ進ませないようにしている。それを蹴り飛ばして老人はレイに剣を向け……レイは忽ちに追い詰められた。大剣は見事に弾き飛ばされ喉元にはクリスダガーが光り、大剣も光を受けている。
「お前さえ生まれなければ……わしは世界を我が物にできたのだ。貴様さえ生まれなければ……」
「俺が生まれても……何ら利権には関係ないだろう」
「お前さんのようなまだ、若く経験の薄い小童にはわからんだろう。世界にはな、論理では解決できない不思議な奇跡と呼ばれることが起きるのだ」
「それが?」
「お前が生まれなければ……世界の鍵を開く力はわしの物だった。しかし、鍵はわしには反応せずあろうことか貴様のような何も知らんガキに心を寄せたのだ!」
世界の鍵……それはこの世界に存在する異界との繋がりを閉ざす扉を開く鍵らしい。だが、ゼウスはそれを受け取るに値しないと思われたようだ。レイの剣がひとりでに揺れている……。その時、外部では地震が再び起こり全滅した黒天使の亡骸を黒いドロドロした液体が飲み込んだ。前進していたゼシやシドを飲み込もうとしたそれをトゥーロンが斬りさき明覇の開く結界の中に近隣の住民を非難させることを指示した。トゥーロンが崩れた空の向こうを睨みつけて悔しそうに叫ぶ。
「俺には……なんで俺には力がないんだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
明覇に協力するように魔導師の部隊が魔力を注入し続ける。ルナを始め魔力が強く体力に余裕のある人員は全て自主的にうごきだした。
「俺が……鍵?」
「そう、鍵だ。貴様は……生まれながらにこの世界を統べる力を持って生まれたのだ」
「おい、おっさん。コイツ、殺していいか?」
「いや、まだだ。こいつには最高の演出を持って死んでもらうんだ」
レイは意識を集中させながら意識を城に飛ばす。それを受け取ったのはマナだった……青ざめてベッドから起きあがろうとするが……動けない。それを察したのかファンは杖を軽く振ってマナに言葉を一言告いだ。
「今なのだろう? やりたいようにしろ」
マナが病室から飛び出して追おうとする昔馴染みに……ファンが立ちはだかる。マナの華奢で細い体は見る見るうちに小さくなり城の最下層に繋がる階段を降りていく。その先の部屋は……覇王の間と呼ばれ、レイとマナが出会った場所だ。巨大な石の壁のような装置に向けてマナが言葉をかける。
「居るんでしょ? 以前の記憶を教えてくれた私……」
『いるわ。どうしたの? マナ』
「教えて……レイはなんで『俺は……帰れないだろう。皆と娘をよろしく』って言ったのかを」
石の壁から現れたマナの16歳の姿をした像が電子化されたような異質な声を放ちながらこれまでの顛末をつたえた。そして、マナに彼女が問いかける。最期に……と呟き彼女がにこりと笑う。
『じゃぁ、助けたい?』
「当たり前じゃない!」
『そう、なら、最期に……最期にあなたを助けてあげる。でも、その前に……ありがとう』
像がぼやけ面が荒くなりにこやかな笑みを顔に浮かべながら……彼女は消えた。その瞬間に再び地面が大きく揺れて一瞬だけ空が黄昏たように輝き亀裂が……閉じる。マナは急いで階段を駆け上がりロッドを掴み、法衣に着替えると階段を一気に降りていき衛兵の目をかいくぐると……エントランスに入った。そこにはかなり深刻な表情の面々がおり……一気にマナに視線が集まる。
「ま、マナ? マナ!? 何故ここに!」
ゼシの驚愕の叫びの直後に大股な足運びでマナの近くに詰め寄る明覇。その両目には大粒な涙がたまり……かなり張り詰めているように見える。レイの声が聞こえて居たのはマナだけではなかったのだ。いや、マナとは別にメッセージがあったようなのだ。マナの返答を聞くとマナの頬をうち服を掴んだまま崩れ落ちる。
「レイを……助けに行くのか?」
「はい……」
「お前たちの娘はどうなる!!」
「……」
「二親を失った娘の……哀れな姿を考えてみろ。お前を……生かせる訳にはいかない」
マナがにこやかに微笑みかけて……明覇の顔を覗き込みいつの間にかファンがマナとレイの娘を抱いて近づいていた。マナがファンから娘を受け取り慈しみながら少し強く抱くと……座り込んでいた明覇に預ける。
「お母様……」
「え……? 今、なんて……」
「私達は必ず二人で帰ってきます。お母様、だから、それまでこの子をお願いできますか?」
明覇の顔が一気に赤くなり頬を染めてマナに視線を返し言葉を返さずにマナとレイの娘を抱くことで返事をする。その頃の始まりの地内部では……。黒天使の男の首にレイの右手がつき、ゼウスの大剣の刃先はレイの能力で抑えられ……黒天使の体が光を受けて小さく光りだした。ゼウスが恐れながら後退りしていく。首根っこを掴まれた黒天使は……手足の先から純白の粉になり地面に落ちると真っ直ぐに……天へ帰っていった。その時のレイの体には金色のオーラが満ち満ちとしゼウスの放つ白銀のオーラの威力に引けを取っていない。
「貴様……まさか、覚醒したのか?」
「わからない。俺は自らのすべき選択をしただけだ」
再び高速のぶつかり合いが巻き起こる。速さ、力、策。共に互角でまったくといって良いほど先には進まない。二人がぶつかり合う度にオーラが弾け飛び空は星が弾けたように……次々と新たな生命に満ちていく。空間の外部では……空は星一つ無い漆黒だった。しかし、二人の撒き散らす細かいオーラの結晶がそらに散り、星になっていく。そのように様々な形で世界が新たな形になっていく。レイが地面に剣を突き立てれば北方の大大陸が二つに地割れし新たな形となり、ゼウスが空を波動で切り裂き空間をねじ曲げると嵐が巻き起こる。
「ほぅ、さすがはサラブレッドだな。強い……若木の癖にやりおるな。しかし、これならどうかな?」
ゼウスが指をはじくと地面が隆起し足場が不安定になる。レイに向け土塊で出来た竜が口を開く。しかし、レイにそれはとどかずに言わずとも外の世界に異変が起こる。海底から隆起した土塊が空中で島になったのだ。そして、細長い竜のような大陸と大陸をつなぐ道ができたりもした。ギアはまだ寝ているため変わりに風崖が彼の立場につき住民の避難や城の防備を固めながら……数人がマナを守るために途中までを同行する。マナの両肩には体を小型化したクリードとダークネスや修羅に付き添う馬頭と聖刃に付き添う牛頭、ギアの代わりに風崖、シドの親戚にあたる岩鋼、その妻のゼピュロなど……。そうそうたる顔触れが彼女を見送る。
「ここまでで大丈夫ですから」
「覇王妃が言うならばそうなのだろうな。我らは王の帰還のためにこの世界を全力で守り抜く」
「安心してください。わたくしや修羅が居ればこちらは問題ありますまい」
マナがニコリと笑うや地面に魔法陣が現れた。彼女が空間を歪ませてレイとプルトンのいる空間へと飛び込んだのだ。その背中には……黄金色に光る蝶の羽を携えて……神々しいまでの光は空の裂け目に現れた異質な光る塊に吸い込まれて行った。修羅と聖刃以下数名はそこに残り言葉通りに王と王妃の帰還を……目の前の敵と戦いながら待つのだった。
「私の娘に……どうか、どうか力を授け、夫と共に道を歩むことを許したまえ……」
「大丈夫さ。ギル、お前が認めた娘なら……やってくれるさ。俺たちにはできなくてもな」
異質な空間の内部ではどす黒い塊が彼女の行き先を遮ろうとする。どうやら亡者の魂らしい。しかし、その中に二つの光る球体を見つけた。その声は懐かしい響きを響かせマナの目の前で形になった……。宙慧である。懐かしそうに微笑み案内をしてくれるという。そこに、さらに球体が沢山集まってきた。彼女には初対面だが……宙慧が顔をしかめる……。オルドネスだ。その宙慧には目もくれずマナに握手を求め周りに侍らせたたくさんのカイザーが護衛につく。もちろん宙慧もだ。
「マナさん。お供します」
「宙慧さん!」
「なら、ワシらも混ぜてもらおうか?」
「オルドネス……」
「敵意か……仕方ないだろう? ワシも、娘の手前がある。覇王妃殿、ワシの娘、アイリスがお世話になっているそうだな。これからも迷惑をかけるだろうが……あの子をよろしく頼む」
それらが加わると全く亡者という亡者が寄り付かなくなった。そして、レイが倒されてからはゼウスと呼ばれた白髪の老人が訳き散らし勝っただの何だのと声を張り上げている。高揚感で周りが見えていないらしい。そこに……、新たな敵が現れるとも知らずに……。金色のオーラを体に湛えた少女がゼウスにタックルした。そのおかげでゼウスに再び火が付き……レイまでもが再び剣を取る。
「神ですか……?」
「貴様……その羽は……明覇だと? いや、ギルが託したというのか? そんなバカな……」
「私は……当代の明覇……、マナ・ムーンライトです。貴方を許すわけにはいかない。私の愛する人やこの世界を傷つける者を私は許すことができないのよ。レイを傷つけ皆の命を奪い……可愛そうな……運命を弄び、死ななくてもいい人間までもを弄び……許さない」
マナの魔法が次々にゼウスを襲う。ゼウスの力はマナには及ばなかった。覚醒したマナの力は圧倒的だ。ゼウスがそこで命を絶たれてもマナは攻撃をやめない。最後にはレイに止められる始末だ。レイの体の傷を丹念に調べマナが回復する。そして、レイの体が健全になったと思われる辺りで……。
「レイ……」
「う……」
「何で……死にに行くような事をしたの?」
「俺はそういう道を」
「あなたに死んで欲しくない人だってたくさんいるのよ! 私も、エルも! お母様も! 皆、あなたには死なれたくないの! 私だって……あなたが居ない未来なんて歩みたくないもの!」
「……そのとおりだ。ごほっ……。何のために俺が居るのかわからなくなってるな。マナ・ムーンライト……久しぶりだな。いや、今言ってもお前は記憶の違う新しい命だから解らないか?」
その瞬間……、内部が揺れ始めた。ゼウスが管理していたのだろう空間が崩壊し始めたのだ。崩れ始める世界に……カイザーエンジェルの魂たちが彼らを高速で運び始める。マナがレイを担ぎ……プルトンは……。
「言っただろう。俺は死ぬためにここに居るんだ。お前は俺の自慢の甥だよ。姉様によろしく頼む」
「それはできない。お前もいくんだよ」
「無理さ、この空間はな……一人でも残らないといけないという性質がある。俺はここに残るんだ」
「レイさん……もう、彼に背負わせないで上げてくださいな」
「宙慧」
「行け、覇王。貴様にも娘が世話になっている。アイリスをよろしく頼むぞ」
「解った」
プルトンは最後に剣を投げ渡した。レイが柄をつかみ一礼すると……空間を飛んで……入口まで飛んでいく。魂となったカイザー達は入口付近でレイに一礼するとすぐに帰って行く。レイはプルトンの剣を握りしめて歩いていた。そこに、修羅と聖刃……皆が駆け寄り……。レイのまわりに集まって陽光をたたえた森の中を覇王宮の前まで凱旋していく。そのあいだにどんどん仲間が増えて行った。日光と月光、赤額、雷軌、風崖、ファン、ゼシ、シドに支えられたギアと彼自身と……昔のギルド時代からのメンバーから新たに加わった者たちまで全員が彼の帰還を見守る。
「レイ、お帰り」
「よく帰った。さすが俺の息子だな。レイ」
「只今戻りました。皆さん……心配をかけました」
レイの一言と共に明覇が彼に近寄り彼の娘を手渡した。金色の髪に同系統の瞳……。覇王家の特徴を得た娘を受け取り名前を呼んだ。
「エル……。はじめましてだね。お父さんだよ」
「キャッフア……アァ……」
「元気だな」
「うん、私たちの娘……。エル、フェンク・エル・ムーンライト姫」
空間に残ったプルトン……彼はどうなったのだろうか。剣を託し彼は最後にレイへ笑顔を見せた彼は槍残したことの無いような心の透き通った顔をした。それまでの彼が演じていた悪役から彼に上を向かせた立役者になったのだ。
「プルトン」
「その声は……マナ?」
「これで良かったの?」
「あぁ、すまないな。俺の目的のために体まで捨てさせてしまって」
「いいの。もう一人の私は嬉しそうに笑って旦那様に尽くせるいい女になってたし」
「そうか、お前がいいならいいさ」
「ここも、消えちゃうね」
「そうだな、一緒に……冥界へ行こう」
「うん」
彼らにも……気持ちの上での終末が訪れたらしい。再び現代の彼らに戻ろう。形式的な儀式は皆が嫌う。だが、こればかりは国の全ての人々が喜び祝いの言葉を述べた。エル……『神の……』という意味の名を持つ姫が生まれ国としての対策や政策も始まったようだ。各大陸や都市に昔の子供のころからの仲間たちが管理官などを務めるようになった。そして、……。
「父上! 父上!」
「お、どうした? ルシィ」
「剣の稽古をよろしくお願いできませんか?」
「解っ……」
「あなた? お仕事残ってるわよ。ルシィももう少し待って上げてくれない? お父様も王様としてのお仕事がたくさんあるのよ」
彼は再び子宝に恵まれ息子が生まれた。その息子、ルシィは冥王家の血筋に近いらしく、レイの赤い髪を受け継いだ。明覇……いや、今は退いて本名を名乗っているギルやプルトンなども今は城で隠居生活を営み夫婦となったメンバーは次々に後継ぎ達に恵まれている。覇王宮殿にはシドとゼシの娘と息子のミシィとアルファが奉公に来ていた。北の地を納める前にレイの手腕を見ておけとの御父上、シドの通達でレイの秘書をし、マナの秘書には芳納が付き、その手伝いにミシィが付いている。その他にも子供たちに受け継ごうとしていた。フィトのアルの娘二人は故郷の森を走りまわり、レイの兄であるシェイドと妻のルミの間に生まれてレイの甥も今は訓練兵として軍に所属……他にも次々と未来へつないで行こうとしていた。
……次話へ続く……