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WARS&WARS  作者: OGRE
血で血を洗う……大陸探査
28/29

聖戦……剣を穿つ者

 ギアの鎌が弾き飛ばされるのと同時にスケアの剣も粉々になった。そこからはオウガ同士の壮絶な殺し合いが始まっていた。最初にその能力の真髄を見せたのはスケア。クリードやダークネスですら凌駕する大きさの翼龍となり未だ変身を終えていない彼に爪で攻撃を開始した。だが……、彼は怒りの形相と変化仕切らないその体でスケアの撃ち込んだ巨大な爪を持ちあげ投げ飛ばす。市街地から場所をはずし海に落としたのは彼にまだ理性が残っているからだろう。その後、彼も大きな変化を遂げる。彼の場合は全く大きさの変化を起こさずに……龍と拳をぶつけあい死闘を繰り広げていた。


「あれが……オウガの血統の力」

「我々も……あれほどの力はでない。よもや……キングオウガの王族がまだご存命だったとは……」


 大陸サンドウィンドウゥから移民としてこのユートピアに移り住み……ギアの管理する区域で彼に仕官したオウガ達もそのよう震える言葉を告いで恐れている。その後、強力な力のぶつかり合いで空気が大きく振動し徐々に兵士すら直立できなくなり始めた。その様子を城から見ることしかできないマナが涙を流しながら見続けている。その横には城に残るしかなかった数人が警護についていた特に昔からの女性の友人はほとんど残っていたのだ。アルを始め、リーン、ヴィヴィア、ルミ……他にも戦闘に向いた人物は城内外で警備をしている。ナイフを弄びながら中を気にしているヴィヴィア、城の兵の管理をしているルミ、銀狼の桜牙を撫でながらヴィヴィアと話すリーン。他にもいろいろなメンバーが集まっている。


「……騒がしくなって来たわね」

「あぁ、耳がズキズキするで……。ギアさんの戦闘やろう。ファンさんが急患で運び込まれたみたいやし」

「……銀狼長」

「どうしたんや? イオ」

「私も……」

「ダメよ。身重のあなたを動かさしたら外にいる男の連中全員から罵声を浴びせられちゃうわ」

「ヴィヴィア殿、しかし……」

「察してあげなさい」

「ルミ殿……」

「マナも……動きたいけど動けないの……。涙を流して泣いてるわ。夫は外で死闘を……これまでは自分も外に出て皆と肩を並べて戦えた……この大きな狂乱の最中(さなか)で自分が……最高権限を持ちながらそれをふるえない王妃が……どれだけ無力か、あの子は心から泣いているの」


 レイとプルトンは片膝をついて剣にもたれるように息をついている。彼らは既に始まりの地に居たのだ。薄暗いその空間の中で二人は剣を振り戦い続ける。それが宿命とでもいうように戦い続けていた。剣と剣が触れ合ったところは大きくV時にくぼみ刃毀れしている。お互いに剣をついて片膝をつき向かいあっている格好の二人。プルトンもレイも息絶え絶えの状態ではあるがまだ戦意はあるようだ。


「ギア、貴様は知らんだろうから俺が貴様ら『オウガ』を売った理由を教えてやろう」

「……」

「お前は……正妻の子だがな。俺は使用人との間に生まれた子供だ。しかも……俺は純潔のオウガではない! 貴様には何もかも奪われた。確かに俺は半人半鬼の不完全な体をしたできそこないだ。そのため、貴様のようにその力は俺には使えない! そして、父親は俺が成人すると……家から追放するつもりでいたようだ」


 ギアは表情を変えずにそのままスケアの巨大化した龍の顔面を殴り付けた。言葉も発しない。怒りの表情すら失い、彼は冷徹で無表情な……色の白い顔を彼に向ける。その時……、彼の口が微妙に動きスケアはそれを見ると背筋を凍らせた。このシチュエーションに体験があるらしく解っているように身構えて次の動作を取ろうとしている。


『剣を穿て……失いし力を……ここに表せ……』


 ギアの動きが急に速度を上げ視覚化できない程の物になりそれを避けつつスケアが体を治し地面に降り立った。その瞬間、周りに彼が喚き散らす。敵だと言うのに逃げろだの何だのとクルーエルにも掴みかかりギアの攻撃を一発だけ受け止めた。そのスケアも一瞬で地面に埋もれ次に選ばれた標的はクルーエルだった。剣で受けたのは良かったが一瞬で吹き飛ばされ森の中で砂煙をあげギアを唖然と見ている。そこに次々に味方が現れた。彼を止めるためにシドや風崖、フィト、デルすらも防衛にまわっている。ギアに剣をふるうことは逆に命取りになり切り殺されかねないのだ。そのため武道に自信のあるシド以外は切りつけるなどの行為はしない。普通兵はシドの判断でかなり外郭に防備や救護を目的に待機させられていた。


「皆逃げろ! ギアが暴走を始めた! クルーエル! 逃げろ! クソ……グアっ!」

「な! ギア! な、何を……うわっ!!」


 シドはそれをあらかた知っていた。彼もその時オウガの村の周辺に居たのだ。ギアに記憶が無く村が壊滅した理由。それは……兄のスケアを殺そうとした父親を勘違いして殺そうとした時……、彼に変化が起きた。彼の力は強すぎる。そのためある一定のラインに到達すると彼は急に暴走を始めるのだ。それをスケアは必死に止めようとしたが……村は壊滅し何とか逃げ切った者もいたが数は少なく、ギアにはその実体の記憶と周辺の記憶がない。彼は……スケアはその後全ての罪を背負いその場からいなくなり……、プルトンに一時的に拾われたのだ。


『そう、俺も奴も……この世界の不浄を洗い流すために神に流されたんだ。俺の力は世の中の穢れを集めこの身に溜めること……。そして、貴様は……数十代に一人か二人生まれる……本当の覇王だ。お前に俺は討ち取られる……。そのためだけに居るのだよ。俺はな……。所詮はできそこないの冥王だ。私、オルドネス・バール・プルトンは……この時のために生きている』


 ギアの表情は相変わらず変わらない。光を欠いた穴のように完全な漆黒。彼の心はここにはないようなのだ。時たま、体が抗うように動きがぎこちなくなるがそれ以外に攻撃の手は埋まらない。攻撃を受けても動じないのだ。あらゆる事を感じないかのようにシドのハンマーに打たれても。


「ギア! 目を覚ますんだ!」


 デルの放つ爆風に吹き飛ばされても……。


「風帝招来! ギアさん! 起きてください! あなたを傷つけたくないんです!」


 風崖の強力なタックルにフィトのラッシュが加わっても……。


「ギアさん……あんたは……あんたはそんな人じゃないだろう!」

「あなたの力は傷つけるためのものじゃないだろう! 俺は……あなたのそんな姿は見たくない!」


 これだけの攻撃が当たってもギアの体は足取りを崩さずに何かを狙う訳でもなく周りに当たり散らすだけの行動を取るギア。そこに……。そこに居ないはずの人物が現れた。


「止まれ……。これが、お前を苦しめるのなら。私が終止符を打つ。……構えろギア……これが……、あの時の終末だ」


 すぐにギアに向けて剣を突き出すファン。シドがその動きを止めようとするがファンの魔法に吹き飛ばされて彼女の通過を許してしまう。デルも立ちはだかるが剣を弾かれ本人もかなり遠くに吹き飛ばされ、フィトと風崖は圧倒されるままに抜かれ……ファンが剣以外の武器にロッドを変化させる。それは槍。白く綺麗な抽象的でシンメトリーの取れていない槍を振りギアの頬のかすめる。そこからは剣を抜いたギアとの死闘だった。誰も近づかない。クルーエルも地面に剣をつきながら何とかそこに戻って来た。フィトと風崖も近づこうとしない。シドもゼシに支えられその様子を見ていた。神々しいまでの翼は焼け切れていて……彼女が魔力を解放するたびにさらに焦げついていく。ギアの体は先ほどよりも動きがぎこちなくなり始め意識を取り戻しつつあった。だが、まだ戻らない。地面をえぐり剣と槍をぶつけあいながら睨みあう。ファンの瞳には怒りではなく悲しみの表情を表すところが強い。ギアにも戻りつつはあるしかし、まだ……完全に戻りはしないのだ。


「お前の力はそんな物だったのか? このアテナは見くびっていたのか? ギアよ」

『ア……テ……ナ?』

「スフィア・ファン・アイリスは……私が父からもらった名ではない。天に仕えていたニンフであった母が私のために用意してくれた名だ。私の本当の名は……アテナだ。ギア! お前はそんなに弱かったのか? そんなに心が脆弱だったのか? 信念はどうした! 貴様の心意気はどこに行った!」


 その瞬間……ギアの右目が血走りファンに向けて剣が振られる。その攻撃の速度について行けずにファンは覚悟したように目をつむる。しかし、剣は彼女に届きはしなかった。鮮血が飛び散るが……誰の声も聞こえずその男は崩れ落ちる……。その血を見た瞬間にギアも意識を失い。クルーエルが近づく。クルーエルは乱暴ともいかないが負傷者を扱うようには扱わずスケアの体を横向きから仰向けになおした。


「おい、お前。罪を自分に当てて悪訳を気取るのは止めろ。そんな男じゃないのはすでに解っている」

「解ったようにいうな。クルーエル。俺は二つの目的……いや、細かく分ければもっとだが……こんなことで俺は死にはしない。安心しろ。俺は……この魂を無垢な弟に捧げるために生きていたんだ。ギアを……精神的に救い、彼の半分の罪を俺がかぶって本人に殺され……幕を閉じるつもりでいる」


 彼はわざと悪訳を演じ自らに汚名を着せることで自分を救おうと父を殺し村を壊滅させてしまった弟を救おうとしていたのだ。そう、そのために……ずっと生き続けていたらしい。彼の記憶を頼りに……ギアの過去に触れることになった。彼らは想像をはるかに超えて複雑な兄弟だったようだ。兄弟で兄と弟の場合弟が妾の子というのはよくあり得る。しかし、彼らの場合は兄のスケアが使用人との間に生まれた子供だったのだ。そんな複雑な兄弟の仲も孕んでのこと……。簡単には解決せず拗れに拗れ……今に至る。スケアはそれを運命と言っていた。


「アイツはな。俺の人生を奪った張本人ではある。だが、俺の救いでもあった。俺の……生きがいでもあったんだ。優しく無垢で可愛い俺の弟、ギアは……俺のために俺を父の魔の手から逃がそうとした。だが、俺達の計画なんて所詮はガキの戯れ……父親は俺を殺そうと刃を向けたが……その時、ギアの哀れな身の上を知ったんだ。確かに、ギアは正妻の子だ。ギアは……ギアは……奇形能力の持ち主だったんだ。オウガとはいえど人間の体だ。能力に耐えきれない体を持って生まれたんだ。それは……解っていても止められない。俺にもそれは苦しかった」


 ゼシが下を向き悲しげに口をつぐむ。能力のことで彼女も苦しんだらしいのだ。スケアは息を整え体を動かしながら……首をずらし、胸に刺さったままの剣を引き抜こうとするがシドが止める。おそらく剣は心臓を貫き、今抜けば出血が多すぎて助からなくなるからだろう。それをさせないようにしているのだ。静かに何も言わずに首を振りながらスケアをたしなめようとしている。しかし、スケアはそれに対してあまりいい顔をしない。


「止めろ。お前の言葉を……ギアに聞かせなければ……俺の気がすまん」

「よしてくれ、あんたのことは最初から見ていた。あんたらはプルトンの事を勘違いしているだろうが……アイツも俺と同じだ。あんたらは何も知らないだけだろう。そうだ、こんなことは今はどうでもいい。ギアにはこのことを伝えないでくれ。アイツの体のことは俺が死ねば解決できるんだ」


 全員が首をかしげる。そこに……アゲハ蝶の翼をはやした女性が降り立ち騎士の風貌をした男を連れ立ちながらスケアの近くに片膝をついて屈んだ。そう、『明覇』だ。その近くで立ち続けるのはトゥーロン。彼らはその事実を聞くと……顔をしかめた。レイとプルトンの入った空間には仕掛けがしてあるというのだ。彼らはある陰謀を止めるべく再びこの世に体を置き動いている。二度と会うことはないと思われた矢先のことであるため二人も少し厳しい表情でもあった。特に明覇は深刻そうな顔をしている。


「お前がオーブ・スケア・オウガだな。私が明覇。お前の主であるプルトンはどこへ?」

「よくはしらんが……始まりの虚空に行くだの何だのといっていたよ」

「解った。それから、口を挟むようだがお前がしたいのは遺伝子編能をし貴様にある能力を移すことだろう? お前の今の体では耐えきれずに死ぬぞ」

「いいんだよ。俺は死にたいんだ」


 その時、寝たままのギアが地面を殴り付けた。彼の体にも大きな負荷がかかっていて動くことができないのだ。涙を流すギアの背に手を当てて体を起こしたのはファンだった。槍をロッドに戻し……彼女も涙を流しながら言葉を告げてギアをおきあがらせる。ギアの顔は元々が白いがさらに蒼白になっていた。幾年もの間をあけた兄弟の……本来の会話が為される瞬間は……。本当に痛々しくこれまでの痛烈な過去を物語るようなものだった。


「おい……クソ兄貴」

「ん?」

「あんたは俺よりも何でもできただろう! ゴホッ! それでも俺にまだ気を使うのか! 喧嘩も俺を守り、学問も俺を教え、剣にしてもそうだ。お前は……何で俺に干渉し……何で……お前は俺を助けようとするんだ。兄貴……もう、俺のために生きないでくれ」

「バカを言うな。俺はお前がいたから生きてこれた。可愛い可愛い弟の笑顔が……俺の生きがいだ。なぁ、笑ってくれよ。お前の娘に見せるように……笑ってくれよ。俺も、最期にしたい……」


 シドが話に意識を傾けている間に彼は……剣の刃を握り貫いていた剣を引き抜いてその血液をギアの足もとに飛ばした……。息がいきなり弱くなりスケアは最期に笑顔を創り目を閉じようとしている。そこに明覇が呪詛を唱え始めた。それに合わせ血のついた剣をギアに握らせ血のついたあと……内容を理解したらしいファンにも同じことをしてから。明覇ではなくトゥーロンが金色のオーラをその剣に流していく。その剣は形が無くなり金色の繭のような塊になり段々と形を為していった。


『我ら覇王の名と冥府の妃の名において新たなる命をこの血のもとに授ける。天武の才女と鬼器の男よ。汝らに託す。我らの名のもとに……兄を召し、新たなる正を……』


 スケアの体が繭の形成とともに消え出す。ギアが涙を流しながら手を差し出すが……既にスケアの手足は消えている。笑顔には到底なれないだろう。壮大な勘違いをしていた兄弟のわだかまりは解けることなくその終末を迎えた。普段ポーカーフェイスの風崖やクルーエルも大粒の涙を流しながら泣いている。


「スケア……」

「従弟殿……」

「スケアよ。生きてくれ! お前は生きるべきだ!」

「は、は、大天使……オニキスは天に迎えられたんだろう? なら、俺ももう逝くべきだ」


 その言葉を述べている最中に金色の繭の中から何かがが現れギアの手の上に落ちる。ギアのその手の中には……白い布に包まれた白い羽根と角、頬に鱗のある男の子の赤ん坊がいたのだ。その赤ん坊は白い刃の短刀を抱いていた。ギアは泣きながらその子を抱きしめファンに抱かれながら大きな声を上げて男泣きをし続けている。自然にその傍へシド、デル、ゼシ……衛兵や近隣住民など他の皆までもが集まり……一緒に泣いている。敵であったスケア……憎まれ役を買って出た良き兄を彼は再び見返す。……が、彼はそこにはいなかった。次の瞬間にはギアの体にスケアと同じ刺青が浮き……彼にもその力の終末が訪れたのだ。


「この子は……スケアと名付けよう。スフィア・スケア・オーガ……。明覇…………い、居ない?」

「うわ!」

「何だ! 何が起きている!」

「見たところ中央大陸だけが揺れているぞ!」


 地面が大きく揺れギアを抱くように守るファンや他にも地面に手をつきいろいろな人を守ろうとしている兵士が見える。大陸中が揺れるなか……世界が黒く沈んでいく。城に帰還していく兵士たちが目にしたのは強力な呪詛を開きその黒い闇を跳ね返している明覇だった。トゥーロンも彼女に強力するように力を放ち跳ね返している。そこに……黒い翼を生やした人間のような生物が覇王の軍に攻め込んで来た。槍で武装し黒い装束に鎧を着た兵士が攻撃してくる中、それを防いだのは特殊技能部隊を率いたウィルだ。特殊技能部隊を率いて敵との間に水の遮断壁を創りすぐに味方の軍勢が体勢を整えられるようにしているのだ。そこに、有翼人の赤額の背にのった少女が現れ黒い翼に炎をぶつけていく。隣の大陸から日光が応援に駆けつけてくれたのだ。地上には肩に月光を担いだ雷軌が構え攻撃を助ける。軍団は壊滅的な被害を防ぎ、対峙を続けなんだか解らないが明覇とトゥーロンを守るように布陣した。


「右舷先回! 全体シド攻撃団長に続け!」

「女性機動軍! 私に続け!」

『イエス! マム!』


 ゼシとシドも先陣を切り攻撃に徹する。その後、ギアや、同じく動けないファンは城内の医務室に搬送された。そこにマナが現れ城中大騒ぎになっている。ファンがマナの顔を撫でる。病室を同じにし話続けていたようだ。ギアはあれから意識が途切れたように深い眠りについている。ファンはマナの姉のような立場だ。その関係からマナはファンには隠し事をほとんどしない。立場的にはマナの方が数段上なのだが……マナはファンを尊敬してやまず。彼女としては話を聞いてもらえるだけでかなり楽になるらしい。


「ほう、やはりか」

「え?」

「解っているよ。お前が外に出たいのはな」

「はい……レイが心配なんです」

「そうだな。私も柄にもなく……本当の姿を見せてしまった。ギアのためだから……背に腹は代えられん時は私もそう成るのだよ」

「……ギアさんは?」

「安心したんだろう。眠っている」

「そうですか……」

「時が来たら……私が出してやる。物語は違う動きを見せた。もう、賽は投げられている。私も見てみたいのだよ……一人の人間でどのようにこの世界が変えられるのかがね」


 その時、空に大きな亀裂が開き世界……皆が驚愕した。この世界に綴られた創世記の伝説が彼らの目の前で起こっているのだ。


『箱舟は光の輪を描き混沌を鎮めんと現れ……その身に刻まれし名を呼び命を補完する』

「おい、あれ……」

「箱舟……」

「あぁ、箱舟だ」


 その頃のレイ達は……。


「ほう、これが神の選択か……世界を終わらせ新たな世界を創る……覇王! 剣を取れ! お前は世界を守らねばならん! 屍を越えろ! 人はいずれ死ぬ……お前は生きねばならんのだ!」

「プルトン……何を言ってるんだ?」

「来るぞ、剣を持て! 黒翼の天使は終焉の使者だ! こいつらは世界の破滅が目的のクズどもだ。俺の背は預けた。姉様の御子を失うことなど俺がさせない!」


 黒い翼の兵士が彼らの居る荒野のような岩がむき出しの平らな土地にひしめき二人を取り囲んでいる。プルトンが……レイを守るように剣を振るいその黒翼の天使を切り殺していく。プルトンにも何かがあるようだ。しかし、彼も維持を張っているのか何なのか何も真意を語らない。レイもプルトンとの共闘を試みて剣を振るい黒翼の天使を切り殺し続けた。その天使の数はどんどん増えていく。


「くそう! 数が多い!」

「クルーエル! 全開でいくぞ!」

「ハイヤァァァァ! レイ君を助けるんだ!」

「うむ、我が弟の窮地に何をのんびりできようか……かかってこい! 貴様らは俺が相手をしよう!」


 シドの作り出すゴーレムが数体敵の軍団を蹂躙しながら突き進み……ゼシが開けたところに陣取り絶対零度を作り出し凍結させていく。こちらの軍との戦力差は五分と五分、押せば押し返され引けば圧される。向こうは疲れ知らずの天使軍団だがこちらは人でありスタミナもあり突破も時間の問題だった。


「……間に合いましたね。修羅……」

「あぁ、行くぞ!」


 そこに救世主と言わんばかりに聖刃と修羅が現れた。剣をふるう聖刃と大槍を振り回す修羅も殴りこんでの大乱戦になる。次々に味方の凄腕集団が各地から舞い戻り前線は再び維持しどんどん押し切り始める。


「はぁはぁ、プルトン……」

「何だ? 小童」

「お前は何で戦う?」

「俺は死ぬために戦う。この世界を維持するには俺は死ななくてはならないんだ」


 衝撃の言葉を聞きとりレイも覇王の能力を全開に開き剣をフルに使う。刃毀れはオーラで回復させどんどん敵を切り殺しながら……。


 聖戦……前を見よ!へ

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