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WARS&WARS  作者: OGRE
血で血を洗う……大陸探査
27/29

聖戦……『神よ我を見捨てたか!!』

 対峙する彼ら……レイとクルーエルの戦闘の最中にマナが産気づいてしまった。普通の期間ではありえない程恐ろしい早産で六弥も複雑な表情をしている。そんなタイミングでの破水では流産の可能性が高い。いや、確実に流産だろう。しかし、……生まれてきた子供はちゃんと五体満足にそろい普通体重程の女の子の赤ん坊だった。その父親と以外数名が外部で戦闘をし遂に……将軍級のメンバーが揃い城から離れて戦争を始める。赤剛は重武装になり敵軍に後込みせずに武器を振るい銀狼達の援護を受けて敵の無限兵士を刈り始めていた。レイが目指すのはプルトンのみだ。ただ、彼はいつものように高らかな蔑み上から見るような態度は見せず、その赤い髪を翻しもっていた杖を魔剣に変化させてレイと斬り合う。大きな無骨な剣とレイの片刃のキレ味鋭い剣が触れるたびに普通の戦闘では起きないような大きな金属音を放ちながら体をぶつけ合う。彼らは……何かに取りつかれたように切り付けあっていた。


「……くっ! 行くぞ小童(こわっぱ)!」

「ヤァァァ! 覚悟!」


 その戦闘の外郭ではギアの本当の実力を見ることになった。鋭い視線の兄弟が睨み合い補助をするようにクルーエルと風崖がつきじりじりとスケアを押し返す。ギアは鎌を振り回し龍の力を全開にして大きな攻撃をぶつけて押し返し続けていた。それに乗じて急所を狙い『暗黒刺撃』と呼ばれる魔法を体の中で増幅して爪や機能を異常なまでに増強するクルーエルの力を打ち込み、彼が切りつけられそうになると変身した風崖が風の魔法壁で遮断し逃げる時間を作り続ける。その傍らではファンとルナがオニキスを押し返していた。序盤は魔法での戦闘でルナとファンは息もぴったりな様子で透けてしまい攻撃の当たらないオニキスに迫る。


『神よ!! なぜ私を見捨てたのだ! 私はあなたにこんなにも尽くしたのに!』


 私の本当の名はマリン・ウィーティル……一応は聖職者の端くれだった。神に仕え、人を無償の愛を表しつくすのだ。その人生に私は誇りを持っていたし、それで幸せだった。……しかし、私は神に罪を告白し修道会を抜け出しある男と結ばれ……幸せにすごしていたのだ。貧しかったけれど私と彼は幸せだった。神の恩恵を感じられなくても……仕方ないと思っていた。けれど、私達は神を見捨てなかった。世界には神の秩序のもとで動いている。神が御心を表して清き精神を受け入れてくだされば……この世界は太平で居られると……いや、平和になるのだと……。


「ふん、わしは簡単には死なんよ。この世界の全てに復讐するまでは!」


 攻撃を全て流されることに苛立ちを覚えたらしいオニキスから邪悪なオーラが湧き出しファンもルナと後ろに退いていく。邪悪な力を使っているため魔力の差が高く、その黒いオーラに触れば二人でもただではすまない。ルナがオーラに星魔法を撃ち込むが……形が崩れはすれど効かない……。そのため、二人は味方に被害が出ないように二人で組み合い、誘い出すために彼女に唯一有効な幻術系魔法を使って魔力の集中する魔法泉エリアと呼ばれるエリアに引きずり込んでいく。その中でだんだんと狂ったようにオニキスは訳の解らないことを喚きながら暴れだした。声も変化し少ししわがれの強いこえから……若いころの声なのだろうか……そんな少し芯の弱い声を放っている。


『なぜ、何故なんだ! 神よ、私はあなたに仇なしたか? そんなことはない。私は悪魔になどなりはしていない! 私は! 私は!』


 そのオニキスの体が嫌な音を立てて変形していく……。肩からは角のような金属質な物が現れ目は異様に血走り人とは思えない異形の姿になって行く。爪も伸び体に大きく変化の出る魔法を使ったのだ。オニキスの声はあれからもっとしわがれた感じの声ではなく若々しい少女のような声になり妖美な雰囲気から少女の雰囲気を持ち始める。しかし、髪の毛は体を急激に変化させる禁呪の力に耐えきれず出血して真っ赤に染め上げられていく。彼女の体にはまだそのような個所は少ないが牙や爪などの発達で体にはとても大きなダメージがいっているのはたしだ。


『私は……あなたには何一つとして……怨まれるようなことはしていない! なのに、何故私はこのような仕打ちを受けなければならないのか!』


 私はそれから……狂ったように不幸に襲われた。飢饉による物取りで夫を殺され娘と息子は病気で死んでいく……。私も、もう食料が無く生きてはいけない。何故、神は私を見捨てたのか? 私は神に仕え皆の命をたくさん救った。なのに……なのに! 何故、私の家族は救われないんだ! 神よ! あなたが御心を持ち我々人間に対して慈悲があるなら答えて見せよ! 我らは何故このように仕打ちを受けなければならないのだ! 私は……あなたを信じていたのに……。


「……生ける者に死を……。私の苦しみを味わうがいい」

「ならば……、私も本気を出さねばならんか。ルナ、離れろ」

「え? 師匠?」

「ふむ、私も力の出し惜しみなどできん状態であろうからな」


 言葉をつぶやき魔法を使う用あんしぐさをするとファンの杖が白い光に包まれ白銀の刃の剣が現れた。ファンの腕は見るからに細く剣が使えるようには見えないのだが……。これも魔法のようだが……同じような白い光に包まれて白い法衣が鎧に変わり翼を一度音を立てて力強く開き、さらに一瞥する。その姿は天使の戦士長……ミカエルにも見える。まぁ、ミカエルは男性らしいため。この場合はヴァルキュリアということにしておこう。その眼差しにオニキスは怯んだように一歩後退して……数秒後に意を決したように爪を繰り出してファンとぶつかり合う。剣と爪がぶつかる音は金属質で騎士の戦闘を思わせる一騎打ちの気迫が周りを包みこんだ。


「貴様は幸せだろう! 錬強なる夫に無限に等しい才能を持った娘を持ち……自身の体も強く生きられる! そして、安心が約束された暮らしをしている……。私にはそんなもの有りはしなかった! 羨ましい、妬んでいる。いや、貴様を怨みはしない! その不平等と不条理を生んだ神を怨んでいる。消してやる! 滅ぼしてやる! 全てを……闇に葬ってやる……。それが……私の失ったものだ!」


 叫び続けながら爪を振り回すオニキスにファンが一時圧されている。オニキスが血の涙を流しながら爪をふるいお構いなしに攻撃をしてきたのだ。その一撃が肩をかすめて鎧の肩当てが吹きとんでいる。オニキスの攻撃は魔法という際を超え既に怪物な成っていた。人間としての際は既に超えているが……今は実体もある。そこでファンも暴れ出す。剣を構えて攻撃を開始した。彼女も少なからず剣の心得があったらしい。


「そうか、過去に何かあったのだな……。だが、それは一時の時の流れの事象だ! 貴様の都合でこの私たちの世界をつぶされてたまるか! 私には可愛い娘、夫、国にいる皆が居るのだ! 貴様らの勝手で全てを失う訳にはいかんのだ!」


 ファンの剣とオニキスの爪がぶつかり火花が散る。それからは魔法も含めた総合的な戦闘に移る。ファンは両手を剣のつかに当て白い魔法の筋と半球形のバリアを張りつつ放ち続ける。それに対抗するようにオニキスも黒い光線を放ちつつ押し返そうと叫び続けた。ファンは今、このように叫ぶような戦闘ではないのだが今回は別らしい。ルナがその師匠を見続けている。人にはやらねばならない事がある……と。身にしみじみ感じていた。二人の魔法の力が集中しすぎて暴発し吹き飛ぶが各々体勢と武器を整えてまた対峙する。


『私は……私は……』


 そう、神は私を裏切った。夫と子供たちを私から奪い私の命すらも奪い……なおもこの世界の混沌を制さない。私は強い憤りを感じた。ならば……ならば、私が神の創った世界を壊し、私が創ってやる! 誰もが太平天国を望み争いのない美しい世界を……そのためには……世界を混沌に導き滅ぼさなくてはならないのだ。私は……神を……殺す! この世界を創りかえるんだ!


「貴様は『禁呪』を使用してはならない物だと言っただろう? それは違う、この世界の形状を変えるからこそ……使わねばならんのだ。必要のない人間(ゴミ)を再利用して使い神の戯れで創った世界など変えなくてはならない。私はそのためにそれを解明し……利用するために魔術師となったのだ」


 オニキスの胸元から血にまみれた十字架が現れ血走った眼から再び血の涙が流れる。その体中から……流血し始めていのだ。そう、所詮は人間の体である。そこまで強くはない。加え、オニキスの場合は透明にし肉体は別のところにあった体をここに転送している。彼女の体はおそらく冷凍保存されていてそれを引き出していると思われた。だから、体には凍傷のあとや腐食の後が何か所も残っている。一度生命を失った体を引きずり起こせばこうなるのも頷ける。オニキスは命の失い、人を怨み……この世を怨み……神を怨み……全てを怨んで……これまで復習することのみを考えて生きて来たのだ。


「そこまでして……貴様はこの世界を変えたいのか?」

「無論だ」

「そうか、ならば、私と同じだな。私の父も同じように破滅していったよ。だが、血は争えない。私にもある……貴様のように間違った道に進んだ者を生かしておく程私は優しくはない。覚悟しろ! 二度はないぞ!」


 オニキスに向かい指を弾くとファンが力を全開にし一騎討ちはさらに深まる。剣の速度は上がり恐ろしいまでに攻撃の頻度もあがる。ルナは周りに現れた無限兵士を法撃し吹き飛ばしながら途中から現れたデルと共に補助として戦い続ける。戦っているオニキスの足もとには傷でできた血以外の血が滴り時間が無いと悟ったオニキスは……禁呪を次々に本人の体に使い始めた。


「そうだな。貴様と私は似ている。だが、意思は対局だ! 大天使よ覚悟しろ! 貴様が天使と言うならば私は悪魔になってでも貴様を討ち取る! うわぁぁぁぁあっぁぁっぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああぁぁぁっぁ!!!!!!!!!!」


 あらかじめ体に付けてあった禁呪を使うために付けてある紋章に自分の血を吸わせるために爪で自分の体を直接傷つけ血を吸わせていく。そこに魔力を集中するだけで彼女の体には変化が大きく現れ苦しそうに叫びながら……その苦肉と戦い続けていた。そして、体が人間から遠のき硬質かした青白い物に変化して異形の姿になって行く。……そこに、ファンを押しのけるように現れたのが……。


「ここは私に任せろ」

「ゼシさん……」

「俺もいる。ギアのところに行くんだ」

「シドさん、解りました」


 ファンが翼を直し法衣に戻った状態で羽ばたきデルとルナを侍らしてギアのところに飛んでいく。オニキスの体は段々と大きくなり意識はもうないらしい。そのためオニキスにはファンがどこにいるかすら解らない。シドとゼシの能力を見るとそちらに攻撃をするが銀狼部隊が無限兵士の軍隊を食い破り協力姿勢で現れる赤剛も後半から加わり後方からの支援を始めた。反対側ではギアとスケアが一騎打ちをしている。……誰も近寄らない。そのような空気が流れクルーエルが能力を使い柵を作って誰も侵入させないのもあったが……。


「ここから先は誰にも入らせない。俺の……俺の恩人のしたいようにさせたいんだ。味方は敵の無限兵士を優先的に殺しにかかれ!」

「おう!」


 その頃、デルとルナにファンからの提案と告白が待っていた。ファンはメンバーとしては長くギルド時代からの仲間として国や地方では『大天法妃(セイント)』と呼ばれ、とても有名な魔法教導師として世界に名をとどろかせている。今でもクライスの世話と地域の政策を制定したりしていた。だが、その信頼感とは別問題に実は誰も彼女の過去やこれまでの生活を知らない。少し知っているのはギアだが、その彼もほとんど知らなかったと彼女もつぶやいた。話したのはクライスが生まれてからだと言う。ギアはその話を聞いても全く動じずに聞いて最期に抱きしめてくれたらしい。クライスのその道に進ませないために……。彼女にもそれなりの覚悟があったのだ。


「私は、あの女を救ってやりたいと思うのだ」

「え?」

「あぁ、解ってるよ。私の過去からになるが……。私も……この羽は白く見えて美しいと思うだろう。だがな、……そんなことはない。この羽と翼は……血で汚れ、それを血で洗ったように血が染みついているのだ。私は聖女や大天使などではない……。私も血に支配された殺人鬼だ」


 彼女はギアの居たオウガの村がつぶされた時は近隣のカイザーが集まる村に住んでいた。カイザーは彼らオウガを快く受け入れギアも彼女の父のオルドロスに拾われ直後に拾われていたイオもそこに加わった。そして、ギアは……。彼は兄のスケアを殺すことしか考えていないような暗い目をしていたころだ。その頃は他人の心など考えずに兄を殺しに行くことが最優先の心情であった。無理もない。実の兄に……父も母も……友人も知人も全て殺されたようなものだからだ。


『俺は、もう、行く。俺には追わなくちゃいけい奴がいるんだ』

『……いかないで……。私のそばに居て……お願い』


 そんな彼女を振り切り彼は旅に出てしまった。まだ幼く顔の丸さが残る年齢のギアとファン……。ギアの本来の年齢は解らないが彼が居たころの生活で決められた年齢でそのまま生活している。そして、……ファンも彼女が15歳程のころに父の反対を押し切り旅に出てしまったらしい。それからは荒んだ彼女の一人旅の実態だった。ギアのように多くという訳ではないがたくさんの人間を殺したという。カイザーは人攫いに狙われる。それの関連でいたしかたないことも間々あったが……彼女は多くの人間を殺し……一時期は本当に殺人鬼になったこともあったという。


「解るんだよ。オニキスの心が、私はカイザーの中でも希少なカイザー・エンジェルだ。私もあの女の辛さは解る。あの女を救ってやりたい」


 そして、その瞬間にデルが剣を鞘に納めて着地し二人がそれに合わせたように着地した。デルもルナに話した断片以外はほとんどが謎の少年だ。ルナにもまだ他のことを話してはいない。数歳年下らしいデルを見上げるルナに謝罪した後にその作戦を始めようと彼もファンの背を押した。彼は別にそのような経歴があるようではないが……ファンは魔法学では偉大な権威だ。その彼女の人柄と正義感を知っている彼にはその心息を曲げられなかったからである。


「ルナには謝らなくちゃならないな。僕は……僕の母はヒューマンじゃない」

「え?」

「人間ではなく……先代の『明覇』だったんだ」

「な……それは本当か?」

「はい、レイさんのお母様が現代の『明覇』だとは聞いています。ですが、僕の母は……空王も兼ねた『明覇』で……すぐに力を引き渡したとはいえ彼女の体への負担は相当でした。早死にはそれが理由です……おそらくは。そして、僕には母から『空王』の素質があるんです」


 彼が化け物と化したオニキスの方に剣を構え力を込める。足元に小さな風の輪が数個浮かびあがり彼は目を見開く。オニキスへ一直線に白い線がつながった。緑色に変色した瞳のデルがファンに告げオニキスの記憶の中に入って行く……。それは不思議な旅だった。空間が異質で少しぼやけるような空間。しかし、彼らはちゃんと前を見据えて歩いて行く。


「さぁ、行きましょう。彼女の記憶に……」


 デルとファンとルナが降り立ったのは荒廃した村だった。確かにこれは酷い。村のほとんどに人がいるらしいがやせ細り路地には死体も転がっている。その中に……翡翠色の髪の毛を束ねた女性が居た。あの顔はオニキス……だ。まだ若いその少女は必死に人々の介抱をしている。その横には若い男がいて麦の入っている袋を配っている若い男の中にまじっていた。その男は優しくもう、息を引き取った老人の目を閉じ手を組ませて担架に乗せてその仕事をしている男に頼み運ばせている。


『マリン……もう、二日も寝ていないじゃないか。残りは僕がやるからさ。寝てきなよ』

『ダメです……。そんなことをしているとこの街の皆さんが……』


 ファンやデル、ルナもその仕事をさりげなく溶け込み続けている。遂にファンがマリンと呼ばれたそのころのオニキスに近づき話しかけるところまで段階を進めた。


『私が変わります』

『あなたは?』

『スフィア・ファン・アイリスです。修道会の援助人員として配備されたギルド・ワーカーをしています』

『ありがとう。なら、お願いします』

『あなたも……休んでください』


 すかさずデルとルナが圧し、例の男も休憩に向かう。その間にデルとルナがファンの埋め合わせも行いファンがオニキス……いや、マリンと今は呼ぼう。二人がちゃんと結ばれたことを確認して、その日から急にスピードを上げて時間を飛び越し、彼女とその男が修道院から抜け出す瞬間の補助に入る。このころの修道院はかなり凶行をおしていた。そのため戒律を破る聖職者は下手をすれば殺されかねない。そのリスクを伴ったとしても……彼女らは外に出るという選択を選んだのだ。


『僕についてきてください』

『え……』

『君は?』

『デル・トマックです。ギルド・ワーカーですが……僕は今一つの目的のために動いているのであなた方をお送りします。さ、急いで!』


 デルが導き数人遭遇した修道護衛士……いや、監視役を切り殺し二人を通過させ出口にいたファンに隠れられる場所までの護衛を任せてデルは門を閉めてから先にいった四人に合流した。


『帰りました』

『お帰り、デル』

『帰ったな。それでは任務の内容をお話します。私は……天使です』


 そう、この時代にはファンのようなカイザーは存在していない。だから、翼のある女性とくればみな天使と見るだろう。そのため……ファンは上手くそれを使ったのだ。オニキスの記憶は変わっているのだろうか? 変わってくれていると嬉しいだろう。


『私は、神からの任を受けてあなた方にお話しがあります。いえ、罪などということはないのでご安心を……。私はあなた方を助けるためにここに置かれております。神は……あなた方のように抗う方々を助けます。私は、神を語る人間達を滅ぼすために居ます。貧しい人々を救うのは神ではありません。神とは人々の心です。心が清い者のみを助けます……。私は……あなた方のように清い道を進ませるために仰せつかってこの場におかれました』


 唖然とする二人をよそにデルとルナは御使いとでも言いたげに胸に手を当てファンの横に立って言葉を告げる。それからまた数年が一瞬で経過し記憶は確実に変わっていた。彼女は本当の意味で行動派の少女だ。ファンを担ぎ……協会の中で彼女の意見に同じような意見を持つ聖職者たちは皆こちらがわにつき皆が……平民のみなさんもこちらについている。作戦の考案や指揮の先陣はデルがとり戦闘の最前線での切り崩しもデルが薙ぎ払いを続けていた。大乱は広がり……彼女の望まぬ道も多く通ることとなった。


『こんなに上手くいくものなのですか?』

『僕が居れば大丈夫だよ。それから……皆さんは僕らが死んでも……死なせはしません誰一人!』


 私は……マリン……オニキスか。記憶を変えるのは……天使? あぁ、私は神に助けられている。


『そうです……』


 オニキスの感情に訴えかける。憎悪の象徴を消し……禁呪に支配された体を解放していく。


『そう、私は、望まない……惨殺なんて』

「そうだ。マリン、未来のお前も同じように……混沌の最中に居るんだ。お前は清純のまま……生きてくれ」


 そのまま、現在に引き戻され……三人はほとんど体力を使いきりぐったりしている。その脚のまま三人、特にファンは杖をつきながら歩きオニキスに光の魔法を使い……。


「我、対価を払い。この者の魂を緊縛の呪いより解放する」


 ファンの翼が焦げるようなチリチリよいう音を上げながら焦げ付きオニキスの姿がマリンの姿になって行く。マリンは薄らと目を開けてファンを見ながら……。


『あなたも……戦場に立たれて……苦しいですか?』

「私は守らねばならない。愛する家族と『友人』をな。そのためなら、私は血をかぶろうと……泥をかぶろうと生き続ける」

『そうですか……。でも、あなたの翼。綺麗だったのに……』


 マリンが手を上にあげるが……その手は砂が崩れるようにサラサラと落ちていき……最期に口の動きで判断できる程度の言葉を残し……その……悲しい命を絶った。


「この翼は……生え換わるんだよ……。マリン」

『あり……が……と……う』


 その光景を見ていた周りの皆が黙とうをささげオニキスの亡骸……いや、彼女の命を穢し続けた……記憶という灰は……ファンの記憶を頼りに転送魔法を使い。故郷の空より故郷の地にまかれた。そして、その瞬間、ファンは力尽きたように倒れ……シドが本城に背負って運んでいく。それに付き添うように高官たちは本城に帰還していった。


「これで……一つ未来が変わる。我が甥よ! 来い!」

「言われずとも!」




……次話『聖戦』へ

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