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WARS&WARS  作者: OGRE
血で血を洗う……大陸探査
17/29

征く者……ユクモノ・下

 ユートピア内の戦争はやはり膠着化が激しく特に東と北は動かない。それ以外の大きく進展したリーンと修羅以外にも海外で動き出した者たちがいる。今回はその二組の動向を見ていこう。まずはレイの指示を受けて海嶺の地殻変動から溶岩が噴出し島を量産する群島地帯である火山群島に向かうアレン、ヴィヴィア、ルナ、デルの四人に視点を移していこう。


「船がこんなにキツいとは……」

「デルは大丈夫なのね」

「僕は元々は海の上で生まれているので丘のドワーフよりも数段海には強いですよ」

「そうね。にしてもだらしないわね。アレン! もっとしっかりしてよ!」

「そんなこと言われても……。山育ち山暮らしの俺にウッ……そんな無茶を」

「全く、まだ女の子のルナなら解るけれどなんでこうも弱いのかしら」

「みなさん! 着きます振動があるので特に二人は船外に頭を出さないでくださいよ!」


 火山群島の周辺は修羅や風崖、雷軌が超えた広いが穏やかな海とは違い小さな島が点々と存在し海流が複雑で船が大きく揺れる。その分酔いやすいようだ。それでもアレンは目的地の陸に脚が着くや急に元気を取り戻し興味津々と言った感じで周りを見回す。そこは旧文明が存在したらしい大きな遺跡島で港まで整備されている。しかし、時間の力と自然の力は強くその石で作られている建物ですら木々に覆われ蔦が張り昔の面影は欠片も無い。


「凄い……こんな大きな石の建物なんてギルドくらいしかないと思っていたけど……こんな孤島こんな文化があるなんて」

「ホントに凄いな」

「うぅ、気持ち悪い……」

「大丈夫?」

「これが大丈夫に見える?」

「ここからは二手に分かれましょう。デルはルナを守ってあげなさい。私はアレンに守ってもらうから」

「調子いいぜ。全く……」


 雷軌は森の中に居る。うっそうとした森の中にゲリラのように隠れている。そこに居るのは戦車や機動兵などがわんさか現れていたのだ。彼は地面に伏せ背中に背負っていた武器の雷撃砲を構えていた。彼は世にも珍しい将軍級の兵なのに迷彩柄で最前線の機動隊を指揮する将兵でその関係から前線での情報収集がとてもうまい。そこに大きな砲火が聞こえそこに藪の中でほふく前進しながら進んでいく。


「姉様。この数では防ぎきれません」

「月光ちゃん! そんなこと言わないで!」

「ヤタの鏡よ……全てを水の力において消し去れ」


 どちらかというと目つきのキツい少女が胸の前で構えた鏡の方向に砲弾が吸い込まれ逆に敵の方向に放出された。その後にそこから吸い込まれた砲弾が放出される。


「姉様……防ぎきれません。本当に……」

「私もいくわ! ヤサカニの勾玉よ! 私に力を! 龍陣炎舞!」


 周りの木々まで焼かれるほどの業火が周りを包み周辺をぐるぐる回り戦車を片づけることには成功したが数人機動兵が生き延びている。散弾銃での掃射に対しては二人も対応できない様子で両手を上げている。


「これまでです。おとなしくしましょう」

「そんなぁ……」


 二人が座り込んだ瞬間に近くの藪から一直線に雷光が起こり敵の半数が感電死した。そこに雷軌が踊りこみ次々に格闘で殴り倒す。向こうもおとなしくしないのは解りきっているため雷軌もその策を練って出て来たのだ。先の戦闘で月光と呼ばれた少女の首にナイフを突き付ける最後の一人は普通に雷軌が指から発した雷光に打たれ倒れた。


「ご無事ですか? お二人とも」

「え、えぇ」

「怪我は……い……」

「月光さんでいいかな? 少し腕を見せてくれ」


 自分の服の一部を裂き月光の腕に巻いた。おそらく銃弾がかすめたのだろうが傷はそこまでひどくない。明るめの性格の姉が問いかけてくる。それもそうだ。名前も知らない男に助けられたのだ。名前ぐらい聞いてくるだろう。


「あ、あの。お名前は?」

「は、申し訳ない。俺の名は雷軌。大陸ユートピアより探し人をしておりまして。先日、ここの周辺での戦闘を目にし貴方がたが襲われていることに気付いたしだいで」

「これはご丁寧に。私たちはこの大陸サンドウィンドゥの巫女をしております。私が姉の日光」

「手当のお礼はします。私が妹の月光。して、人探しをするということは思い入れのある方なのでしょう? その方のお名前は?」

「修羅様だ」

「しゅ、修羅? あの大大名のですか?」

「そうなります。我が主であり恩師になる。本来なら付き添いの一人が同行しているはずなのだが」

「それは不安ですね」


 傷を受けた腕をキリリとした顔に少し赤さを浮かべてみている月光に姉の日光が問いかける。


「月光ちゃん……どうしようか?」

「私は、礼がしたいです」

「うん、そういうと思った。しばらくは同行させていただきますね。雷軌様」

「様はいらないが……」

「よろしくお願いします。雷軌様」

「……」


 雷軌と二人の巫女らしい日光と月光が加わり一度首都に向かうようだ。雷軌は銃を担ぎ歩くのがゆっくりな二人に合わせて歩くようだ。こちらも探索を始めたようで特に動ける二人組のヴィヴィアとアレンは遺跡群の中で歩いている。たいするルナとデルは船酔いで気分が悪いらしいルナを案じて近い遺跡の内部で休んでいる。


「うぅ……ごめんね」

「何が?」

「デルも行きたいでしょ?」

「ルナが気分悪くて襲われたらもっと後悔するよ。だったら近くの石板とかを見ながらなんかの方が安心もできるし充実できる」

「大分楽になったから動かない?」

「ダメだよ。まだ顔が青いし。あんまり無理はしちゃダメだよ」


 ヴィヴィアとアレンは奥に入り込んでいた。そこで既に殺気と何か意図的に気配を消そうとしている生物の気配を感じ取っていた。それも野獣などの内の肉食獣などではなく明らかに知識のついた物だ。足跡を消している。


「気付いてるわよね?」

「あぁ、何かが付けて来てる」

「それだけじゃないわ。足跡を消してる。私が付けた足跡も消えてる」

「迷わせる気か?」

「たぶんね。もう一つ……この遺跡、誰かが探った跡があるわ。なのに誰一人いない。ホコリやチリが舞い上がってるのはそいつらのせいね」

「俺は探ったというよりは“掃除”したように思うがな。確証はないが。そこに落ちてる黒いものは人の肉が焼けた物だ。これだけ惨い殺し方になると……相当怨みがあるだろうな」


 二人は一度そのピラミッド状の遺跡の外に出ると入口に罠を張り一度下まで降りた。デルもレイとの修行の成果が現れ始め殺気に気づいている。デルは剣を持ってはいるがまだまだ扱える域ではない。そこで投げ具などの兵器を白衣の中に多く隠し持っていた


「ルナ……」

「ちょっ……ん、い、いきなり」

「少し伏せてくれ。誰か外に居る」

「へ?」


 外に居る物の姿をデルが小型の端末で移しアレンとヴィヴィアに渡しておいた物に送った。その写真に写っているのは信じがたいものだった。どう見てもカイザーエンジェルだ。翼の色は染めているのか明らかに違うが何かを探しているように見える。武器も銃器を持っていることからこちらの侵入に感づいたことは言うまでもない。デルの頭であればそれくらいは解りきっている。


「ん……」

「ご、ごめん。すぐに退くからちょっと我慢して」

「いいから。もう少しこうしてて」


 月光と日光の姉妹とそれに同行する形になった雷軌はボディガードも務める形になっている。雷軌は身長的には割と大柄で180を抜けた辺りだ。それに加え筋肉質で頭もよく洞察力や目利きに関しては七人衆の中では明らかに実力が飛び抜けていた。七人衆とは修羅直属の大将の七人をそう呼びメンバーは妹の闇剛から風崖、宙慧、紅蓮、氷鑓、岩鉱、最後に雷軌だ。その二人がこちらに来てしまい守りは大丈夫なのかとも思われるが問題ない。元の東の国の警護でも実質的にそれを行っていたのは紅蓮と氷鑓のみで彼らは散らばっていたからだ。


「ですが、修羅様は不安ではないのでしょうか……」

「何故、そう思われる?」

「女子なら皆が思いますよ。誰かと一緒にいたいなどとは……」

「あの方はお強い。それに、我々が関わってはならない領域の彼女に我々がわざわざ触れに行く必要などないでしょ」

「私なら……側にいて欲しいものですが」

「それともう一つ、あの方に釣り合うのは俺達のような脆弱な者ではなくもっと……打たれ強い……肉体的に強固なお人でなければ……死ぬだろう」

「雷軌様はその方を愛されていますか?」

「月光ちゃん? もしかして……」

「……君主としてはだな。俺には相応の方が居るはずさ。俺に付き添うてくれる人が居ればだが」

「良かったじゃない。月光ちゃん」

「姉様? ……今、思ったことを口にだそうとしたら……」

「がっほうひゃん? ほっへひっはらないへ(月光ちゃん? ほっぺ引っ張らないで)」


 デルはその周辺が危険と考えあまり本調子ではないルナを背負って走り始めた。遺跡の各所にトラップを張りながら周りを気にしながら……音を立てずにいつになく更に真剣に走っていた。背中のルナも徐々に回復しているがまだ闘えるほどの快度ではない。それにルナの魔法はかなり破壊力が高く使うなら大規模に衝突してからのほうが得策だ。……そう判断した矢先にそこから離れた場所で砂煙が巻き起こりどう考えても戦闘が起こっていたしかも武器の破壊力から考え攻撃はアレンの物だ。


「ルナちゃん……ちょっと口当たりは悪いけど……」


 ルナは彼の予想どおりに口から透明な液体を吹き出した。相当な刺激薬でこの世の物とは思えない物凄い異臭と渋味があると解説をデルが入れるがルナは弱々しい声で不平をつく。


「……それ、先に言ってよ。もの凄く苦いんだよ?」

「僕は風邪をひく度に母さんに飲まされたよ」

「うぇ……、ドワーフの秘薬か何か?」

「いや、万能薬っていう薬さ。あらゆる症状の緩和をし体調を向上させてくれる薬。普通に出回ってるよ」

「そ、そうなんだ」


 デルがそれを口に含みルナに口移しで飲ませた。これが一番効率がよいと顔を赤くするデルとは対照的に思考のついていかないルナはデルに手を差し伸べられて気づき二人は走って遺跡の内部に入っていく。一方のヴィヴィアとアレンは……アレンの武器である念糸の先にレイのアドバイスでつけた剣のような形の重りをつけ振り抜きやすくなったそれを使う。用途は違うが簡易のクローとしても使える。


「ご、ごめん……油断したわ」

「今更、グジグジ言うな! お前らしくないな! そんな弱い女に惚れた覚えは無いぞ!!」

「……なっ何よ!! 私だって女の子なんだから!」


 片手で足に銃弾を受けたヴィヴィアを抱えて反対の手に装備した五指念糸のロックを解除せず振り回す。それは切れ味鋭く遺跡の建物を切り裂いた。大きな崩落はこのせいである。そのまま彼はデルの足跡を見つけデルが入って行った一番大きな遺跡に入って行った。


「どうやら……体力と体調は回復したらしいね」

「……」

「ご、ごめん。ここにはロートなんてないし……」

「初めては……普通にして欲しかったわよ!!」


 遺跡の内部にもかなりの数のトラップがありデルの手腕で何とか切り抜けた。後続のアレンとヴィヴィアもヴィヴィアの手癖と経験でなんとか切り抜け再び4人が集まった。雷軌と月光、日光もひたすら歩く。どうやら彼女らが探しているのは聖刃らしい。雷軌が空に浮かぶ式に気づき銃を構え撃ち落とした。見覚えがあると思い撃ち落とせば案の定……それは修羅が魔法で作った式だった。その足に付いている文を読み始めている。


「修羅様からの頼りじゃ……。ふむむむ……なんと……これはこれは……」

「雷軌様……お一人で納得されてはいけません」

「そうですよ! 私たちにも読ませるもしくは読み上げてください!」

「わかった……。『この文が届いていると言うことは七人衆の誰かが封を開けたことに違いないだろう。俺はこの大陸で無事に生き延び聖刃という男に助けられ世話になっている。成り行きだが……その男とギルドに帰った後に婚姻を結ぶこととなった。その知らせはしておく。現在、俺はチナにいる。この後は首都へ足を運ぶつもりだ。

修羅』」

「大神官様が婚姻を……あの方の心を射止めるとは相当な美貌の持ち主」

「姉様……無駄に興奮されるな。その内赤額も帰って来ますとも……」


 雷軌の能力は放電や蓄電が主であまり防御や移動には向かない。雷軌や二人のいるエリアと首都はかなり距離がある上にチナは島のちょうど反対側だ行こうと望んで簡単に行けるような距離でもない。まずは街を探してそこで休息をとらなくてはならないのが実状である。あまり月光の傷の状態が良くないのだ。雷軌が気にしているのは出血の量と傷に悪い菌が入り化膿しないかを案じているのだ。彼はデルやアルのように薬草の調合などわからない。種類はわかっても使う相手がデリケートなため彼が使うようには使えない。その方法は……直接擦り込む。


「もう少しで青龍の頂につきます。そこで月光ちゃんの傷を洗いましょう。あと体も洗いたいですし」

「えぇ。それには賛成します」


 雷軌は周りを見回し水の音に気づいた。緩やかな沢がある。彼女達が言うのはそこだろう。一方のヴィヴィア達。四人が合流し把握した状況で動きに支障がでそうなのは怪我人が一人居ることのみだ。デルの薬を綿に染み込ませて傷口につけると痛みに耐えかねてヴィヴィアが声を漏らす。


「うぅ……あぁぁぁ……いたっ!」

「静かにしろ。敵が来るぞ」

「アレンさん。少しはいたわってあげてくださいよ。いくら自分が不甲斐なくてもそれでヴィヴィアさんに当たっても仕方ないんですから」

「ぁぁ……すまない。気がたっていてな。やはり、俺は指揮官には向かないか」

「何よ。さっきは人のこと弱いとか言ったくせに」

「確かに言ったな。だが、俺が弱くないなんて一言も言ってないぞ」

「アレンさん! ヴィヴィアさん! いい加減にしてください。一応はレイさんからメモはもらってますから立て直しましょう」


 かなり大胆な作戦というより陣張りだ。もともと攻撃的な魔法が得意なルナを前衛に出しデルを補助に回すのが大まかな概要として言える。その他の二人は探索の手伝いとトラップの設置などをするのが得策らしい。


「まずは情報を手に入れましょう。僕が入れた情報では断片的すぎて何とも言えなくて」

「どういう情報だ?」

「はい、大まかに言えばこの島は昔はかなり高い文明を持ちそれで何かのテクノロジーを使っていたことです。そのわからないところは石板が破壊されていたりなくなっていました」

「ねぇ、デル。この部屋……これまでとは違わない?」

「そうね。石の質感が違う」

「これは……文字?」

「あった! これだ!」


 辺りを這いずり回り草を剥ぎ取って床や壁の文字をメモ紙に移し形状や近くにある小さな壁画から読み取り次々に解読していった。


「最後なんですよ。テクノロジーの鍵はこの部屋に星が光るときに何が起きるか……」

「星……」

「二人とも目はちゃんと付いてるの?」

「何だよ急に」


 上を見た二人は絶句した。そこには海から離れ空を飛ぶ島の絵があったのだ。その中心には杖を持つ少女の姿が映っている。謎は深まるばかり……。青龍の頂についた三人は水浴びを始めた。三人とは言うが二人が水浴びをしている間の見張りが雷軌だ。彼は岩にもたれ雷撃砲の手入れをしながら体を休めていた。思えばこれまで彼等は休憩することなく歩き続けていたのだからわからなくもない。特に雷軌は慣れない船に乗り大陸に足を下ろせばいきなりゲリラ戦。果ては年下の双子を警護。気が抜けないのだ。


「雷軌様も一緒にどうですか?」

「遠慮しよう」

「あ、照れてる」

「からかいすぎですよ。姉様」

「見てほしいんじゃないのぉ? 月光ちゃん!」

「……」

「いったぁい!!!!」

「申し訳あません……。破廉恥な姉で……」

「いや、月光もこちら側に来るな。服を着ろ」


 雷軌は今年で25歳になる。意外と年は過ぎており結婚適齢が22歳程のこの世界ではすでに行き過ぎている。別にできない訳ではないが彼は一途なる忠臣でする気もなくこのまま未婚で過ごしてもいいと思っているらしい。月光は彼に思いを寄せたようだが彼はどうなのだろうか。それもそのはず……彼女は今年16歳になる少女でまだ成人の義すら終えていない。歳差は9歳。この差がネックになるのだろう。


「雷軌様は何故一人身なのですか?」

「月光……そんなことはどうでもいい。…………そんな目で見るな。お前の目は細いから目力が強い。強いて言えばだ、結婚したくないなどとは思ってはおらん。だが、このような職についておるとな……妻を残して先に逝くこともまれではない。それが嫌なのだ。最後は決別するとしても。その横でお互いにみとりながら眠る。それがよいのだ」

「私は……貴方がよければ……」

「月光……お前はまだ若い。早まることは無いのだ。俺のように先のないものなどを選ぶことも無い」

「いえ、貴方はご自分のことに気づいておられない。私は貴方のお優しいところに惚れ貴方の元に行きたいと思いました。姉様もそれに関しては認めてくださいました。義兄上も認めてくださるでしょう」


 雷軌と比べるとかなり小柄な月光が彼にもたれる。その頃のデルとルナは遺跡内で奮闘している。デルの器用さで簡単な弓を作りそれをヴィヴィアが使って隊列の前後を固めるためだ。空を飛んでくるそれらはかなり強いがこちらも全力で立ち向かう。特にルナはデルに推され魔法の属性の中で一番強力かつ危険なその力を解放した。


「我が体に宿る星の聖よ……。我に付き従い力を貸せ。星帝獣! イグニフェタス!」

『ほう、これまた若い者が呼び覚ましおったか……わしを呼び出したのだ。覚悟はできておろう?」

「えぇ、皆を守るために存分に力を放ってもらって構わないわ。私も星帝杖で攻撃をする」

『よかろう、主と認めるにふさわしい小娘じゃ。懐かしいのぉ。ルナとやらわしに乗れ!」

「凄いわね! まさかあの子にあんな力があるなんて! デル! 見てる?」

「解ってますよ! でも……星帝獣……ってまさか」

「デル! 剣は振るわなければ意味がないぞ!」


 アレンは敵に容赦することなく殺しにかかる。彼の武器には三種の特性があるのだ。一つ彼の強靭な筋力を伝える念糸の堅さ。二つ。先についた重しの破壊力。三つ。ビーストにして初めての亜種である微量の魔力で念糸を無限に伸ばす。これで遺跡に大きく切り込みを入れたり敵を糸で巻き取ってからめ捕ったりして近づかせないのだ。ヴィヴィアは類まれなる状態適応能力で弓を使いこなし遺跡に敵を近付かせない。デルはレイに教わったその全てを引き出し近距離で確実に仕留めていく。気味が悪いのはカイザーエンジェルの数の多さである。そして、彼らの多くにはない過激な思想がここのカイザーエンジェルには存在する。


「ね、ねぇ。今気づいたんだけどさ」

「何だよ!」

「ここって入口二つなかった?」

「キャー!」

「ルナ!」

「クソ! 魔力の防止壁か! アレンさん! 敵は中でルナの力を利用する気です! 阻止、もしくは途中で止めなくては!」

「解ってる! 俺とヴィヴィアで時間稼ぎと防衛はしてやる! 走れ! ルナを助けてこい! レイさんに四人でいって仲間失ったなんて顔向けできないぞ!」

「ハイ!」


 敵は数人のカイザーエンジェルで編成された部隊で魔力を遮断する特別な石を使いルナをそこに閉じ込めたのだ。デルが靴に仕込んだジェットで飛んでいく。内部にはカイザーエンジェルの近距離攻撃部隊が網を張っていたが……。


「いたぞ!」

「どけぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」

「ぐあぁ!」


 こういう時に彼らは向こう見ずではあるががむしゃらに突っ込み怪我をしてもなお攻撃する。このデルにもその気は強い。何せレイの教えでギアが彼に教えたことを教わっているからだ。


『己を守り力を尽くさねば。愛しい人や仲間は守れない。まずは強くなるんだ。俺はそうやって師匠にいわれて強くなった。何、お前もなれるさ。守りたいものがあるならな」


「守りたい……もの」


 彼は猛進していく。二か所で別々の進展をとげ革新には至らずとも前進はした。若い力と老練ともいかないが彼らの中では力を蓄えた者の力は徐々に協調なし空に地に響く。彼らはそんな世の中に生きている。征く者の運命は一つには決まらない。なぜなら、彼らには為さねばならぬことがありそれは容易いことではないのだから。


……TO BE CONTENEW……

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