戦の終末は……
数年間の経過は早いようだ。彼らの中では飛ぶように過ぎて行くのだろう。特に以前は少年や少女の面影を残した彼らだがこの数年間で皆、その中でもレイやマナは多くを学び大きく成長している。ゼシとタージェの息子と娘であるアルファとミシィも5歳と4歳になり生意気さと幼心が合わさったかわいらしい時期を迎えている。レイやマナ、その時に幼さを残していたメンバーも21歳と22歳になり少し大人に近づいた。冥王プルトンとの戦いの後は彼らに大きな変化を与えギルドにも大きな変化を与えられた。街の大型化やギルド本部の更なる増築に義勇軍の結成。そして、御伽噺の再来……。
「フィト! お前の分団はどうだ?」
「紅蓮か問題ない。それよりも問題はルナの魔導師部隊だ。訓練をしてないのか?」
「してますし問題もありませんよ! だったら風崖さんなんて顔も見せないじゃないですか!」
「何をもめてるんだ?」
「レイか。軍の整備の話だ。お前は何をしにきたんだ?」
「俺は師匠と手合わせの約束があってな。意見に過ぎないが軍備はシド大軍団長に頼んでおけ。それよりは問題視すべきは紅蓮の事務がたまっていることとフィトがアルと飲みに行った付けがまわってきていることの方が問題だが?」
「そ、そうか参考になった」
「……そんなになのか?」
「月! あ、間違えた……ルナ! ルナ?」
「はい! お母様。今、行きます」
割合、厳しい言葉をぶつけられた二人はそそくさと逃げていきルナも母親と発覚した宙慧に呼ばれ魔導師訓練所に走って行く。レイは身長が伸び顔立ちも静観になった関係から街の女性からの人気を集めつつある。大きな城に成長したギルドはもはや“国”の域に達していた。軍備、内政、奉公の三大執政機能が整い各地から逃れて来た賢い若者や知識人を中心とした議会や街を区画整理し代表を決めそれに合わせた会合なども開かれていて機能は一国一城、既に既書の“国”というキーワードが重なるがこの城の責任者のシド・タージェはこの組織はあくまでもギルドであると位置付けを表明。その下に付き尽力する二人の弟子も執政に携わっている。特にギアは議会の中枢を取り仕切る重役になっていた。レイはというと……。
「レイ……腕を上げたな」
「いえいえ、まだ師匠にはかないませんよ。まだまだ若いんですから。そんな老けたことを言わないでくださいよ」
「よく言うぜ。身長も追い付かれたか……。これで俺のリーチは無くなったな。おっと……そろそろうちの嫁さんが来る頃かな」
「ギア! 気分転換もそこそこにしておけよ! 執務は……」
「上官の仕事だろ? 解ってる。それより、お前も身重なんだ無理はするな」
「あぁ、わかっている。レイお前もやるべきことがあるだろう?」
ギアとファンも子を授かり城の一角に構える屋敷で静かな暮らしをしている。ギアは日々鍛錬し武具と体の手入れ念入りにしているが今は数多く起こる人間同士の小競り合いには出ることは無い。ギルド本部にある部屋……軍議室の中で作戦を考えることに徹している。前線に立つのはレイでこれまでは負けなしという戦績を持つ。加えて彼は彼を慕う者を集め独自に騎士団を編成し大陸随一、無類の強さを誇っている。ちなみに副団長はアレンとライムズ。
「リーンちゃん。あの、レイはどこへ……」
「マナぁ? また見失ったんか。そんなことやと先にどんどん行かれてしまうで?」
「……。忙しいのは解るけど。私のことも見てほしいのは……やまやまで」
「お、マナさんとリーン。何してるんだ? レイさん? レイさんならそこの武道場でギアさんと手合わせしてたぞ?」
「そか、よかった……って動くの早! 初々しいなぁ。マナも」
彼の赤い髪は目立つ。すぐにレイを見つけたマナは声をかけようとするが先客がそこには居た。修羅の妹の闇剛だ。彼女は修羅が一人で他国に旅立った後もこのギルドに残り修羅の命令で七人衆のまとめ役をしている。それが何故レイのところに居るのかが気になったのだろうが勇気が出ず結局はその場を離れてしまった。闇剛の職務はシェイド、今は本名を明かしバステル・クレイア・スウォードと名乗っている彼の率いる第一暗躍機動部隊“アサシン”に次ぐ第二部隊、くノ一部隊“闇蝶”を指揮している。そんな彼女だから戦闘や暗躍に素人なマナが居たことなど造作もなくわかっていた。それでもあえて口にせずレイに訓戒を投げ渡す彼女。
「……。レイさん。マナさんが探してましたよ。もっと大切にしてあげないと……」
「ん? そうか……そうだな最近仕事ばかりでろくに話してないからな。そろそろ相手をしないと……」
「早く行かないと手遅れかも知れませんよ?」
「どういうことだよ」
「よくあるじゃないですか。そういうこと。本なんかではよく目にしますけど?」
レイが腰の鞘に剣を収め軽装の鎧を揺らしながら歩いて行った。たまたまその近くで日向ぼっこしていたらしい黒い龍、ダークネスが体を小型化させて彼の肩に赤い爪を立てないように乗ってくる。彼女は戦闘向きの龍で戦がない間はクリードと二人でいることが多いが彼も脱皮や角の生え換わりなどで忙しい時があるらしく今、彼女は暇を持て余しているところだったようだ。
「ふむ、お主も若いのぉ。覇王よ、月の女神はそのような弱い女子ではないぞ。だが、女子を大切にせねばならぬというのは確かじゃな」
「俺も解ってはいる。だが、必要としてくれているのはマナだけではないんだ」
「そんなことは他に押し付ければよかろう。お主は女神と結ばれれば大いなる幸せを得るが……それにしくじれば」
「世界がないか……。俺も彼女を愛している。それ以上の何かさえある。でも、この世界は人から成り立つんだ。彼女一人に全てを捧げれる訳ではない」
「解っておる。……おぉ、忘れるところであった。お主のために外に出る機会を設けておいた。女神を連れてゆけ。こんな機会でもなければ白龍は龍洞から出ぬのでな」
話の最後に愚痴をこぼしたダークネスは翼を開いて軽く羽ばたいてから飛び上がりギルドの隣の森に消えていく。そこには新たに龍洞と呼ばれる祠が創られ二頭はそこで暮らしているようだ。ダークネスはその入り口付近で見えなくなった。レイがマナと住んでいる屋敷に入り自室に入るとドアが閉まり鍵が閉まる音がした後にマナが歩みよって行く。彼女もレイと同様にかなり成長し女性らしい体系になりつつある。だが、幼そうな顔つきに大きな目は変わらず変わったとすれば身長と耳にピアスが付き大人びた点くらいだ。靴なども変わりはすれどやはりおとなしめでどことなく彼女は幼さやおとなしさがある。
「闇剛ちゃんと何を話してたの? 武道場で……」
「マナのことだよ」
「わ、私?」
目を見開いた彼女の金色の髪が揺れる。髪型は変えずに未だにショートカットの彼女の髪は癖が少ない。すると再びマナが問いかけてきた。今度はストレートにことの真意をつかみにくる。笑っているつもりなのだろうが笑っていない。明らかに怒っている。確かに一週間仕事で城詰めだた彼はその期間はマナとは話せていない。
「どんなこと?」
「大切にしろと言われたよ。仕事とマナとどっちが大切なのかってね」
「……」
「信じられない?」
すぐに彼女の表情に変化がでてうつむき歩きだした。靴は魔導師や弓師が履く革製の物に装飾がしてある物だ。コツコツ言わせながらレイの背後にまわる。
「ち、違うの。レイはずるいもの」
「そうか? 俺は……」
「だって……そんなこといわれたら信じちゃうから。レイはずるいよ。ホントに、私のこと何でも知ってるから」
「何でもか……わからないことの方が多いよ。マナは俺より明るいから追っかけるだけで精一杯だしな」
マナの首には金剛石。つまりはダイヤモンドの指輪が光っている。光を乱反射して綺麗だ。彼女は顔を赤くしてレイの背中に触れた。そこにはプルトンに刺し貫かれたであろう傷がある。彼はいつも軽装の鎧を身につけており肌はあまり見せない。
「なら、レイから教えてよ。あなたのこと。私は今のこの気持ちが本意だから」
「わかった。これでどう?」
「ん……」
振りかえり細い肩を抱いた。数年間でここまで変わるかと言うくらい彼はキザになったようだ。そして、良い意味では周りの気配察知能力が向上したのだろう。背中に回していた手をほどき襖に耳有り障子に目有りのごとく戸に耳を当てていた数人が急に開いた戸の方向に倒れた。
「え……レイったら何してるの? 急に何も……」
「そんなことわかるかいな。気づかれたんとちゃう?」
「何よ狼娘。その耳は飾りなの? 少しははたらせてみなさいよ」
「痛いです。アルさん……脚踏んでます」
「ゴメン。ルナ……」
「ヴィヴィア……耳触るな。気持ち悪……い?」
まるで雪崩のように……。
「うわ!」
「ぐぇ……」
「キャッ!」
「痛ぁい……」
「お前ら勝手に入って何をしてるんだ?」
『お邪魔してまぁす……』
ドジッ子のルナが途中で転んだが他は華麗に逃げて行った。未だに幼さが残り少しどころかかなり茶目っ気の強い乙女軍団の子供っぽい行動には手を焼く。だが執務や軍備の仕事は一応できていたようだから今回は見逃したようだ。明朝に二人は以前に行ったことのある海岸沿いのゼシの小屋に向かった。あれだけの大震災を受けてもそこは綺麗に残されていて感動に値するものとなっている。さらに川の流れが変わりその近くに小川を作っていたり森の途中の道には陥没し木漏れ日の綺麗なドーム状の場所ができていて美しさは増していた。そして、森を探検していると……。
「クリード……あれは、龍の卵なのか?」
「ふむふむ、これは……よくぞ生き延びたものだ。まだ生きておる。連れ帰れば生まれよう」
「誰が温めるのだ?」
「我らが交代でに決まっておろう。と言うわけだ……。覇王は水入らずを楽しんでくだされ」
魔法で体の大きさが自由に変わる二頭は見つけた数個の龍の卵を各々で口に入れて祠へ帰って行った。唖然とする二人は軽く目をしばたかせたがにこやかに笑い合い、一度小屋に向かって行った。
「これで……マナとレイも安心かな。シド、あなたにしてはやるじゃない」
「発案は闇剛とギアだ。俺は状況を作り上げたに過ぎないさ」
「謙虚なのはいいけど。書類溜まってるわよ? 始末書と任務の依頼書。後は施設の維持費の関係書類かな」
ゼシの手厳しい言葉の後は勿論のこと職務が始まった。レイ達以外にも旅に出た人間がいる。二人はゼシの小屋で過ごしているがこの人は密かに城を抜け出しこの大陸ユートピアの外にでて行った修羅を追っている。大きな鎌はホルダーに入り方には鞄と共に弦楽器が覗いていた。ハープだろう。その横には黒い塗りの横笛もある。
「ふふ、女の姿も悪くないか。身が軽い」
「修羅様。女の姿とはどういうことですか? 少し不用心ですぞ」
「ぶっ!! 風崖! 何故、お前が……」
「ギア将軍に許しをいただきまして同行させていただきます」
「あの悪鬼め……余計なことを」
風崖が加わり二人は大きな船に乗り込んで隣の大陸に向かった。隣の大陸は先進的な軍事国家でこちらの大陸の東側に度々、巡視船を送り込んで来ているらしい。彼女はそれを停止させ戦を退けるためにその大陸に向かい直接言葉で戦うと言っていた。皆が止めるのも無駄だったようで男の姿に変身することなく武器の薙払い大槍を担いで城門を出て行ったらしい。
「くそう! 風崖のやつ!」
「紅蓮よ。仕方ないだろう。ギア将軍の判断だ」
「二人より三人のがいいに決まってるだろう! 護衛は足りているのか? 心配だ。まさか女子だとは思わなかった」
「紅蓮の姉さん。叔父上も言っているが今回はあなたのように目立つ風貌で目立つ技を使う方は不適かと思いますがね。他にも志願者は居たのですが……二人が一番動きやすいそうです。それにあの風崖なら問題ないでしょう」
「そ、そうか? お前が言うなら間違いはないか」
「そうそう。そう言うことならば風崖は適任であろうな。この俺が呼ばれなんだは不覚じゃが……ギア将軍の采配であれば仕方なかろう」
「あなたが一番目立ちますよ雷軌さん。藪の中では隠れるのに便利でも街中で迷彩服の大将がいる軍などそうはないでしょうよ」
「そうなのか? 迷彩服ほど軍功に役立つものなかろう」
レイの護衛には親衛隊副隊長のアレンと数名の手練れが付く。それに上乗せされるように今や中央大陸の全てと南の大陸では大森林区のビーストと連盟を結び領有、西は西大陸全土に住むギガントというビーストの亜種と組み領土に組み込み、北朝とは敵対中だが南朝は阿蘇の力で協定を結び北はノースビーストや軍事国家化に反対の連合からのリンクにより一部を除き領地と認可した。それらの全てにシェイドの“アサシン”が網を張っている。
「こんなに綺麗な場所があるのに……何で戦争は続くんだろ」
「対意の勢力があれば必ず起こる……。それをなくしたいのがギア師匠。俺は仲間を失わないように闘う」
「いつか言ってたよね? 人は何故、何で争うのか……って」
「全部とは言えないがわかった気がするんだ。プルトンと刃を交えたり斬りつけた瞬間にやつからは負のイメージが流れ込んで来た」
「どういうこと?」
「アイツも俺も闘わなくちゃいけない運命ってことさ。対意の者は万象の理から会いまみえ刃を交える。伝承のとおりにね」
マナの金の目がレイの横顔を捉えているがレイは波を眺めている。そのすぐ後に立ち上がりマナに手を差し出した。細く色白な手が重なり 立ち上がる。そのまま小屋に帰って行った。
「レイはホントにずるいよ」
「……」
最近は大酒飲みと有名になったアルは月を見ながら酒を引っ掛けていた。お気に入りは見張り台でいつもそこで大きな日本酒の入ったツボから器に移している姿を目にする。そこにフィトが現れた。一つに結われた長い髪が風に揺られそれなりの雰囲気が出ている。身長も伸びギアと比較すると現在の彼は大きめに見え肩もしっかりしてきた。軍団の指揮官の中では昔のように
特攻隊長として拳を振るう。そんな彼の心の頼どころは姉さん女房のアルである。彼らも年代では一番早く結婚し新居も城内に構えていた。
「どうしたの? 久しぶりに相手をしてくれるの? フィト」
「いや、明日も仕事だ。深くは飲めないがもらおう」
「懐かしい。こうして並ぶことは最近はなくなったからね」
「あぁ、狙撃手総指揮監督と特攻隊長じゃ立場が違うからな」
「お前は隠し事が下手ね。すぐに解るわよ」
「レイがな。酒のつけを払えと」
「う……。それホント?」
ルミは戦に出るには出るがそれはほとんどの場合でフィトの前衛。騎馬鉞隊を率いる彼女はやはり小柄で幼い顔立ちだ。シェイドと結婚しよくファンと奥様談議にふけっていた。彼女はどちらかというと妹のヴィヴィアのことを気にしていた。周りは次々に結婚、婚約するが彼女はまだ独り身だったのだ。姉としてはほっておけないが最近はゼシのように派手な服装を好むようになってきたヴィヴィアはさらに近寄りがたい。
「ねぇ、ヴィヴィア。そろそろ相手見つけなくていいの?」
「いいの。チャンスはいつでもあるから。あたしはそれにかける」
「心配だなぁ……」
「姉の話は聞いておけよ? 少なからずためになる」
「義兄さんまで……わかってるから」
二人やほかのメンバーは知らない交際相手が居るのだ。種族を超えることは少なからずリスクを伴うがそれを無視して二人は付き合い始めた。お相手はアレンだ。今はレイの警護任務で野宿をしている。ヴィヴィアは過去に軽業士として働いていた時期がありその関係から動きは身軽で暗躍もシェイドや闇剛ほどではないが可能だ。
「誰だ! クン……この香水はヴィヴィア。近くに居るんだろう?」
「さすがは狼。鼻は効くのね」
「ヴィヴィア。どうした?」
「退屈になったから手伝いに来たのよ。悪い?」
「危ないだろ? この前だって敵の刺客は来るしレイさんは前に斬りに行くし……」
「ねぇ、あたしのことは守ってくれないの?」
「……言わなくてもわかだろ」
「わかんないなぁ。言ってくれないとぉ」
「あんまりふざけると……こうだ」
アレンが念糸を引きヴィヴィアを釣り上げた。さすがにこうも数の多い糸に絡め捕られては抜け出せないらしく声を荒げておろすように命令してくる。
「もぅ!! 冗談通じないんだから! 早く下ろしてよ!!」
「ダァメ。俺はレイさんみたいに優しくないからな。反省するまで吊したままだよ」
「ひ、ひねくれ者!」「少なくともお前には言われたくなかったが……」
「なんでよ」
「ヴィヴィア。お前が一番わかってるはずだぞ」
ギルドの城郭の最奥にある一番高い建物である鐘楼の天辺にはリーン、ライムズ、氷鎗の三人がいる。氷鎗も元はビーストの森狼でありリーンと同族だったらしい。三人は同様に月を眺めていた。その静寂を破ったのはリーンで唐突に重い質問をまずはライムズに投げかける。
「なぁ、ライムズ……」
「んん?」
「戦争が無くなる日なんてあるんやろうか」
「解んね」
「おっちゃんはどない思うとるんや?」
「重いだろうがそんな日はないだろうな。人が居る限り。生き物が存在し意思がある限りな」
今、この大陸はかなり不安定な状勢にある。特に東、北、南にそれぞれが国という組織を一部に持っており内乱と言えばそうだがそれは大きな軍事的波乱を起こしている。東の北朝と北の元軍幹部が組んで領地を広げようとしているようだが今は小休止状態だ。大きな戦闘は怒る気配はない。しかし、前線の監視をしているシェイドからの報告ではいつ大きな戦争とかしてもおかしくないという。
「しかし、ギア。ここまでアイツを育ててなおまだ不安なのか?」
「あぁ、アイツの力はあんなもんじゃない。まだ心のどこかに迷いがあるんだろう。いくら覇王となれる“器”だとしてもその中に入る物が本物でなければ……アイツは覇王にはなれない」
「それを後押しするのがお前の役目と言いたいのか?」
「そんなに奢る気はない。ただ、アイツには生きていてほしいんだ。仮にこの物語をすべて変えてしまう結果になっても」
「ふふ、父上は凄いことを言っているぞ。お前もこんな風になるのかな?」
「少なくとも俺たちの子の運命もやつが握る。俺もできる限り戦いたいんだ。未来を拓くためにな」
プルトンが捨て台詞を残しこの世界を離れた後彼の力で復活したと思われる遺跡を彼らが調査した結果開けるかどうかは別としてもこの世界以外の異界は七つ。一番大本になるのがこの世界を含めた四つの世界である天界、宙界、地界、魔界。次にギアが新たに発見した扉には……冥界、龍界、月、幻界と記され新たなものと認可されるが開くには相当のリスクがかかる上に開き方すら解らない。
「……とこういうことだ。敵はこの状況の打開を狙い北と東の二面作戦に出て来た。今はシェイドの隠密部隊に張らせているからそこまで大きな動きは無いがいつ来るかは解らない。そこで今回の人割を発表する。まずはアルとフィト二人には南の最南端に行きこちらに引き入れるか中立を保つように交渉してきてほしい」
「お、俺が交渉ですか?」
「お前は護衛だ。確かアルはクーデターの鎮圧に協力していたよな? その軍部が今は政府の重役を占めている。とりあえず言ってきてくれ」
「解りました」
「次にだ。紅蓮と氷鑓は東の軍の口利きを勧誘しろ」
「意は解した」
「御意」
「次に、本隊と第一分隊は攻撃してくる敵の主力飲みに集中的に攻撃を行い敵も味方も被害は最小に抑えろ。修羅が海を渡ったとはいえ向こうの国のことも気になるからな。本隊の指揮は大軍団長とゼシさん、第一分隊は俺と岩鋼、雷軌に付け。さらに魔導師部隊と義勇兵は本拠の防備だ。今回の作戦会議は以上で解散にする」
「解った」
「ふぅ、故郷に行くのか」
「さすがに……元の味方と相対するのは」
「気が引ける。俺もその感は同じじゃ」
新たな波紋はプルトンのようなものではなく同じ土を踏んで生きるもの同士が起こすことによって広がりを見せるようだ。これにも古の物語が深くかかわっているとギアは言う。その他の大将やメンバーも気を引き締め戦の中に身を投じるのであった。そのころのレイはそんなことが起こるとは知らず小さく寝息を立てるマナと共にひと時の幸せを感じているのだった。もうすぐ、これまでの物とは違う多くの人が一瞬で消える戦闘がおこるとは知らずに……。
……TO BE CONTENEW……