表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
WARS&WARS  作者: OGRE
戦の始まる序章……覇王降臨
13/29

魔王覚醒

 『魔王と覇王が相対し世界の歪が広がりを見せる。


我らの二人の王……避けられぬ古よりの理の中


我らは皆臣下を集い大いなる戦の幕開けを見る。


魔王の力と覇王の力によりて世界を破壊し冥界に導かん神の力を滅する力を生みださん。


光と闇は二つで一つ……我らは集う彼らの元に……心を一つに全てをかけて我らは集う。


皆と集いし光と闇はすべてをかけて力を尽くさん』


 巨大な爆発が上空のレイに見えた。マナも同じく気づき顔を合わせて二頭の巨竜はなおも翼を大きく開きはるか上空に飛び上がり急降下に入る。細く回転しながら巨大な槍のように落ちていく。ただ爆発は次々に場所を変え最果ての地と呼ばれる中央大陸北部の遺跡地帯でさらに激しさを増す。黒い閃光と白い結界の断片が見える。どう見てもファンとギアが戦闘をしているのだ。西の大陸では巨大な雷雲が立ち込めそれをかき回すように風の塊が渦を巻き雷と共鳴し大きなエネルギー波がまわりを囲んでいる。こちらはフィトとアルが奮戦しているらしい。


「ファン! 右側上弦三十度と左側上弦五度に面積4平方メートルの結界を……」

「まどろっこしい! これでどうだ!」

「そんな物で俺の攻撃をはじけるとでも思ったか!」


 巨大な薙ぎ払い槍を大きく振り簡単とはいかないが結界に刃を入れた。ギアに到達する前に刃は地面に突き立てられそれは回避の時間を与えてしまう。加え既に異形へと変身しているギアの鱗は鋼よりも堅い。

「あたしの力! なめんじゃないわよ!」

「アル! 無理するな!」


「五月蠅い! これが本来のあたしだ!」

「俺は修羅様に尽くすのみ」


 雷の魔力同士がぶつかり巨大な爆発を生んでいる。雷の波動は大型の雷の波動を凝縮して放つ武器から放たれている。アルは雷神の弓でそれに引けを取らないどころか圧し勝っているようだ。


「それが我らの務め!」


 ナックルをつけた拳を駆使し音速のラッシュを繰り返すフィトの相手はギアに似た姿を持つ風崖という少年だった。彼はオウガらしく一撃がかなり大きいが今は速度の上で勝るフィトが権勢を握った形だ。それでも巨大な風の塊が衝突し合うことで気候をねじ曲げ始めてしまった。


「こんなに早く大将たちと当たるとはな」

「リーンか……懐かしい。可愛い姪はどれほど力をあげたかな?」


 炎と氷の武器が猛威をふるう。中央大陸西部に根を張るギルド、ホーリ・プリセクトに大群を率いて進軍してきた紅蓮と氷鑓の二人だ。そこにはビーストのアレン、ライムズ兄弟とリーン。加えて元軍の教官であったルミがシェイドを横に侍らせ仁王立ちで並んでいる。


「やぁぁぁぁぁ! 貴様の顔には覚えがあるぞ!」

「そっちこそ! 名のある名将だな! 我が名は軍名ルミ・アクス・リフ! 本名オールクス・ヴィオ!」

「我が名は紅蓮! 軍名は朱雀槍」


 アレンとライムズを従えてリーンがハルバートを振り回しながら氷鎗の目の前に躍り出た。ただ、次の瞬間に氷鎗は微笑みリーンは一歩後ずさった。


「うちもビーストじゃ知れた名だよ!」

「知っている。俺の姪だからな。久しぶりだなリーン」

「うぇ! アイス・ハルバート! おっちゃんまだ、生きとったんか!?」

「俺らは北のビースト! アレンと……」

「ライムズだ! 以後よろしくぅ!」


 その頃に異変が起こり始めた。それは巨大な紫色の異様な光を放ち始まったのだ。中央大陸の“聖霊森林区”にありレイの力で崩壊し力を失っていたはずの遺跡が内側から再構成され遺跡としての機能をとりもどしたのである。そこから黒いオーラの翼を広げた男とそれに続く数人の部下が各々の様式で滑空している。それに気付いたゼシとタージェが敵味方関わらず周りに声をかけてうごき出した。そして、魔王がギアの攻撃を受け流しそちらに視線を送っていろ。策士としての才能の高い彼らは既にその状況の悪さに気づいたらしい。ギアもファンを連れてそちらに飛んで行った。


「止めろ! オーブ・ギア・オーガよ!! 貴様も気づいているだろう! 大天使アイリスお前もだ!」

「今は昔の呼び方で問題ない。……それよりお前体は大丈夫なのか?」

「言うな。ギア、行くぞ。どうやら我らははめられたようだぞ」

「そのようだな……」

「どういうことだ!! 私にはまだ……」

「ファン……行けばわかる。今は急ぐんだ!」


 東の国の後続隊の大将である岩鋼と宙慧シェイドの伝報を得て前線に向かい、シド・タージェとクロス・ゼシの二人に合流し緊急の合同作戦に移行する事に同意した。まだ到着していないレイとマナは二人の力で陸を移動している。原因は何者かが張った強力な結界に阻まれたからだ。空に作られた巨大な結界は言うまでもなく進路や退路を断っている。二頭が通れないためマナとレイが走るはめになったのだ。二人は以前にレイが遺跡の結界を崩したのと同じ容量で彼が一部を崩して二人は入れたようだがクリードとダークネスは通れずにダークネスの角とクリードの爪で傷を広げようとしている形なのである。


「ちょっとまって! 様子がおかしい……嫌な気が近づいてる!」

「あぁ、急ごう! この気は冥王だ! ヤツめまた力を増してきている」

「私も力を使うから……闘おう!」


 マナ一人がすっぽり入る半径一メートルほどの結界に入り空中をすべるように移動していく。レイも覇王の力を解放し波動を体から放ちおよそ人とは思えない速度で滑空していく。そして、一番戦闘をしたがらないこの人が最初に戦闘を開始している。


「ここは通せないわね。この嫌な空気の元凶は貴方でしょうから」

「ほう、貴様は? 意外と感の働く者も居るようだ。よし、俺も名乗ろう我が名はプルトン」

「冥王ね……。私はシド・タージェが妻タージェ・ゼシ。前姓はクロスここは私の管轄なんだ。通しはしない。私の愛する夫やギルドの子供たち、兄弟には手を出させない」

「俺を倒しこの茶番を終わらせるか……それは無理なことだ」


 後ろにいる深紅の派手なドレスに長いロッドを持つ女が不適な笑みを浮かべ一言呟いた。そのすぐ後には子供まで同じように笑い出し言葉を次いでくる。


「無駄なことよのぅ」

「僕一人で十分だよ。確かに強そうだけどね」


 ゼシの目が緋色から紺色に変化し魔力の壁が膨張していく。その近くにはタージェがいるが今は見守るようだ。他にもいろいろな面々の顔がうかがえる。魔力の壁が消え中から服装の変化したゼシが現れる。


「あれがアイツの本当の姿。北の国の最古の血筋を受け継ぐゼシにしかできない最古の魔法だ。あの魔法は強力すぎる」

「遅くなりました! ゼ……ゼシさん。あの姿は」

「シドさん……彼女は? どうして?」

「私の力はこんなものではない。来い私が倒せないことはわかっている。お前は私の妹の思い人が倒してくれよう」


 空中に細い短剣が無数に浮き敵を襲う。数人の名前もしれないただのお付きと思われる敵が数多く突き倒れ血塗れの肉塊になったがさすがに上位ランクたちには刃がとおらない。


「豪雪!!」


 雪と突風が吹き荒れ更に地面が氷に包まれ始めた。地面からは次々に氷柱が現れプルトンや他の敵を包むが斬り崩されたり普通に回避してきたりしている。そのまま彼女に攻撃を繰り出したのは両刃の剣を構えたオーブ・スケア・オーガだった。しかし、彼女も負けていない。


「妾とて剣の腕には覚えがある。今は隠しこそしているがな……我が剣を見よ!」


 大きさはそこまで大きくない。だが歪な形の長剣は切れ味鋭くスケアの剣を一刀両断した。大きな剣は見る影もなくなってしまった。


「ほう……意外とやるな。オニキス! 出番だ!」


 黒い炎のようなものが次々に飛んでいく恐ろしいスピードでさすがのゼシもついて行けず爆風に吹き飛ばされ後ろで控えていたタージェにキャッチされた。そして、元西の国の王の力を暴発させた。最強の力は歯止めの止まらない躍動を生み大地をゆがませた。治まることの知らない巨大な力によってゼシへのプルトンやスケアの攻撃は阻止された。


「夫婦は二人で一つだろ?」

「シド……」


 大震神の力で巨大な土塊が壁になりその他の攻撃をすべてなくしていく。大きな衝撃で地震を起こしたり地面に亀裂を入れ川の軌道を変え土地に大きな変化が出ている。その地域以外にも北の大陸にある大地溝からは溶岩が噴出し西の大陸近くの荒野は大きな大絶壁を残し大陸と切り離される。南の海域では海底火山。東の大陸では地崩れや大地の基軸事態を変化させていくのだ。そこに少し遅れてアル、フィト、リーン、アレン、ライムズ、他の面々がそれぞれの武器を構えて集まり最後にレイとマナを残すのみとなった。


「七人衆よ俺に続け! やつが事の発端だ! やつの首を上げるぞ!」

『おおぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!』

「俺たちも動くぞ!」

「アレン!」

「おう、ライムズ!」


 フィトとアルが飛び上がり各々の特徴を合わせスケアに攻撃を集中させる。それを抑えるようにイオが大きな穂先の槍を振りかざしフィトの腕を落としにかかった。だがアレンとライムズの五指念糸が彼女の腕をからめ捕り吊るし上げる。


「解ってるがな!」

「えぇ、レイが来るまでは何とかもたせないと」


 それを力で抑えて回避したらしいイオに追撃をかけたのはギアとの訓練で力を付けたリーンだ。猛然と双方が槍を振り大きな金属音を立てながら戦って膠着状態にある。レイたちも急いで戦闘の急転地へ向かう。魔王こと修羅の攻撃は恐ろしいの一言に尽きる物だった。


「食らえ! 我が闇の力に葬ってくれる!」

「プルトン様! ぐぁ!」

「ふん! クズが粋がりおる!」


 タージェの能力の大震神の能力と合わさり加えゼシのアイス・クイーンの能力もさらに加わり大規模な総力戦になりつつある。彼の力は闇そのものであり巨大な能力を持つ。体内のエネルギーを闇の力で増幅し大きな力に変える。彼は魔王とはいえ元はヒューマンの原型。オリジナルのヒューマンだ。体は強くない……それにオウガ並の筋力増強に代謝の能力増強を行う。それは大きなリスクを伴い彼の体をむしばむのだ。


「ぐ……ここに来て……」

「ほう、普通の人間ごときでこの俺に刃向かおうしていたのか! フハハハハハハ! 貴様は真の闇を知らない! 混沌ではなく静寂の闇に落としてくれる!」


 巨大な魔力のぶつかり合いが起こりながらもはや止まることのないこの戦闘は大陸を揺るがすほどのものとなっている。それでも黒いオーラをまとう彼の力はどんどん……みるみるうちに落ちていく。翼のように見えたオーラは委縮し腕は徐々に細くなっていく。


「レイ君! 急いで!」

「解ってる!」

「うぬ……。我らがこの姿をさらすことになろうとはな」

「そうだな……封印される前にもこのようなことはなかったからのぅ。この代償は高くつくぞ。冥王よ!」


 修羅の力が加わり巨大な戦力は敵と互角にぶつかり合う程度にはなるがいくら連合を組んでいてもお互いのことをよく知らないこちらが不利なのには変わりはない。加え修羅の力がどんどん落ちてきている。周りにとりまく重鎮の七人衆は気が気でなく戦闘に集中できない。雷軌と呼ばれる男の放つ近代科学の粋を決した長銃で援護をするが全く意味がない。遂に修羅の体からオーラが消え肉体が縮んだように見えた。落ちていく彼の体が地面に落ちる瞬間……


「くっ……残り三十秒か、もう……もたな……い」

「修羅様ぁぁぁぁぁぁぁぁ!」


 体が縮んで姿が変わったように感じる……。髪が伸び肩が細くなり鎧はぶかぶかになってしまい大きな槍をつかんでいられず落ちていく。ギアが全体を変貌させ鱗で包まれた体を滑り込ませて何とか修羅をキャッチし一言叫んだ。


「無理しやがって! 女だということを忘れていたのか?」

「くっ……こんなところで……俺は倒れる訳にはいかんのだ」

「姉様ぁぁぁぁぁぁぁ!」


 冥王の波動攻撃が彼女に向けられギアがとっさに黒い壁を構え一時は抑えた。それでも圧倒的な力の前にじりじりと押されていく。そこに……。


「師匠……何とか間に合いました」

「レイ君! 急いで!」


 背中に大きな丸い輪を付けたようなマナがレイの短剣を握って魔力を解放しギアの前に張った金の壁によって守られている。レイがギアを立たせそこからの退避を勧めレイ自身が大きなオーラに身を包んだ。


「二度目だ。俺も力を付けている。来い」


 プルトンの腰の剣が抜かれ周りの連中が皆退避した。もちろんこちらの味方は誰一人動かない。


「ふん! 貴様など今の俺の力の前には無力だ! 消えろ!」


 大きな波動を受けたように見えたレイだったがその前に何かが彼の体を守っていた。それ以外の味方は何とかゼシとタージェの防御が間に合い軽傷ですんだようだ。プルトンと彼の間に居たのは……。


「俺を舐めるな……。たとえ体は女でも力は魔王そのものだ。“覇王”! やつを打つのはお前だ! 行け! 全力で守ってやる! 修羅征夷大将軍直々の命である! これより前軍はギルド、ホーリプリセクトお呼び中央大陸西区の防備に入る! 腐りかけた国など捨てよ! 妻子のいる者は呼びよせることを義務付ける! 我に従う者は皆“魔王”の旗の元立ち上がれ!」


 これまで遠巻きに戦いから避ける行為を取り続けていた大軍団が一斉に二手に別れた。未だに少女の姿の魔王は体を変身させ白い瞳を動かしてレイの方に向き直った。その後剣と槍が触れた瞬間に全軍とギルド方面から雄たけびが上がり一気に感極まった。


『おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!!!』


 そこからプルトン以下数名の敵が再び闇の中から姿を現し攻撃態勢を取る。オニキスの魔法はすべてマナと遅れて現れたルナによって防がれそれに加勢する宙慧が召喚魔法を駆使しオニキスの動きを止めてる。スケアはギアと風崖、フィトから滅多打ちにされその対処に追われていた。イオも同じようにルミ、リーン、アルの自称美少女三戦線に阻まれており動けない。クルーエルはというと七人衆に攻撃を集中的に打ち込まれ八方塞がりになり後方回避以外はままならない。そこに前回洗われたトゥーロンの姿はなく代わりに鎧を着た女性の槍使いがフィトに攻撃を仕掛けるも……アルの矢から誘電し気絶。


「舐めおってえぇぇぇぇぇ! この冥王がこのようなことで崩れるとでも思おもったか!」


 レイと修羅の息の合った連携攻撃にあい全面的に回避できないプルトンもオーラを全開にし攻撃を続けてくる。こちらの善戦だと思われた矢先にその事件は起きた。


「ゴハ……」

「魔王! くそ!」

「フハハハハハ! 勝機は我にあり!」


 レイが修羅をかばい前に出るが……胸に剣が刺さり鮮血がしたたりおちる。修羅は人体に負荷をかけすぎたせいで吐血し体機能が崩れつつある。双方が一人づつ救出に走りレイをマナが修羅を妹の闇剛がそして静寂の広がる荒野の真ん中に一人の男が現れた。その男に数名は見覚えがある。その男とは……かつて北の大地にて名をはせた男で今回の戦線に現れなかった男。そう、トゥーロンだ。


「やっと見つけた……。俺の息子。レイ。お前はこんなところで死ぬような男じゃないだろ?」

「あ、貴方は?」


 マナがレイの頭を抱きながらこわごわと聞いた。それにトゥーロンは優しく応えレイの両腕にそれぞれ手を当て彼に力を注入するようなそぶりを見せた。


「俺は父親になりきれなかった……コイツ、レイの父親さ。君は月の女神か。なら、レイを頼んだぞ」


 ひとしきり言葉を継ぐと彼が手袋をはずし拳を意味ありげな言葉と共に光を放った。それと同時に修羅の手の甲にも光が現れ同様に光っている。


『世界の秩序を守りし者よ。我の紋章を我が子に託し我、覇王の退位を宣言す! 四界秩序の名のもとにこれを行使する!』


 トゥーロンの手から紋章が消えレイの額と手に紋章が徐々に浮かび上がった。そののち修羅にも同じことが起こり戦いは一時的に止まった。そして、その一時的な静寂を破ったのはプルトンの高笑いだった。


「フハハハハハハハハハ! 貴様が何をしたところで変わらぬわ。その小僧の心の臓は我が剣で刺し貫かれとうに止まっていおる。今更……何!」


 レイがマナの腕の中から起き上がり剣をかざした。痛々しい光景だが息をのみ敵ですらそちらを見たまま硬直している。そのさなかにトゥーロンの姿がその場から消えていたことは誰も知らない。後ろでは闇剛の支えの中で修羅も立ち上がりもう一度戦う意思を見せた。


「覇王、行くぞ」

「いや……俺一人でいく。お前にはもう負荷はかけられない」

「そんなこと……ゥグ……」

「姉上!」

「マナ。少し離れていてくれ。なんでか知らないが。温かい感覚があるんだ。何かに守られてる感覚がな」


 言われるままにマナはさがり後ろに居る闇剛に協力し修羅の退避をする。レイは足取りが定まらないほど出血しており本来ならば戦うことなどままならない。だが彼にも何かがあるのだ。


「紋章よ。俺に忠誠を尽くせ。光ある王なり我は覇王!」


 逆転劇とはまさにこのことだろう。レイの傷は開いたままだったがいきなり瞬間移動をし剣を使ってプルトンの右腕を切り落としたのだ。速度はまだまだ上がる。プルトンが魔法で防御を図ろうとするが無意味だった。レイの斬撃はその結界ですら切り刻み彼の体に傷を付けていくが最終的に勝敗は有耶無耶に終わってしまい双方の痛み分けという形に落ち着いたのだろう。レイも多量の出血で体は動かずそのままギアがキャッチしなければ死んでいたかもしれない。この戦争での死者は確認されずまたレイの父親と発覚したトゥーロンの行方もまるで解らない。


「マナ……そんなに気を落とすな。ギアの話では命に別条はないそうだしな」

「ハイ……」

「マナ、ちょっといいか?」


 プルトンとの戦闘後数日が経過していた。レイは心臓に大きな穴があき本来ならば死んでいてもおかしくない状況だったらしい。だが、覇王という特別な存在にはそれ相応に特別なことが起こるようで彼は命をつなぎとめている。ただし、つなぎとめているとは言う物の意識は回復せず皆が心配しているのは言うまでも無い。加えた近況を告げると今回の戦闘で多くの地域に被害がお呼び特にプルトンの攻撃で大きなダメージを受けた南の大陸と東の北朝はもはや執政は不可能になり住民はこのギルドに移り住む他なくなっているのだ。


「お前に一つ謝らねばならない。俺のせいでやつに風穴を開けさせてしまった。不甲斐ない俺を許してくれ」

「気にしないでください。貴方のせいではないんですし。それよりもここの生活には慣れましたか?」

「お前は優しいな。生活には慣れたが俺もダメージが大きくこのざまだ。しばらくは厄介になるさ」

「ここにとどまらないんですか?」

「俺にはすることがある。レイはここを守る。俺は攻めなくてはならないんだ。お前らを助ける上でな。一応七人衆は皆置いていくつもりだ。その点に関しては問題なかろう」


 ギアが病室で椅子に座りレイを見つめている。マナに状況を説明したのち彼の元に脚を進めているファンもレイを気にかけているようだ。覇王が倒れたことで大きな不安がよぎってはいるだがここで屈する訳にもいかない。これからどうするか……ということを考えているのだ。


「ギア、自分の身も案じろ私が処置したときには既に体は回復し意識を取り戻してもいいころなんだからな」

「解ってる。だが、愛弟子を守ってやれなかった……俺にも落ち度がある。なんだろうな。これまでこんな感情は湧かなかったのに」


 そして、その日の夕方。マナが面会をしている時に彼は意識を取り戻した。奇跡的ともいえる生還に町中が湧き感動の渦は大陸中に広がって行く。覇王の力は絶大だった。


「レイ君、いつになったら目を覚ましてくれるの? もう、私は待てないよ」

「…………マ…………ナ」

「へ?」

「マ……ナ……」

「レイ君!」


 それから数日後にレイが動けるようになってからギアとファンの結婚式が執り行われた。正装が似合わない者も数名いたが滞りなく式は幕を閉じたのだった。


「レイ君……ホントによかった」

「あぁ、ありがとう」


 to be contenew

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ