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WARS&WARS  作者: OGRE
戦の始まる序章……覇王降臨
12/29

覇王

 レイとマナがゼシに勧められて向かったのは中央大陸の西側にある海岸だった。その周辺は確かに綺麗だ。日の光が通り木漏れ日を作る森の道や肌理の細かい砂浜がある。岩場や洞窟もあり二人は感嘆の声を上げて二人で寄り添っていた。二人をここまで送って来たのはクリードだ。美しい白龍は岩場に頭を寝かせて寝ている。その隣にはダークネスが寄り添うように寝ていた。クリードは人間の年齢に相当するとまだ18程だという。ちなみにダークネスは17程でもうすぐ18になるころらしい。


「冷たくて気持ちいいなぁ」

「マナも楽しそうだし……来て正解だったな」

「レイ様。少し大人になられましたね」

「マーク01?」

「以前とは少し雰囲気が違うのですよ。ですが、いくら休んでいいとはいえ武具を全て置いて来るのはあまり感心できませんね」


 マーク01の説教を受けながら砂を手に取り眺めているマナに目を向ける。金色の髪がなびき短めのため髪留めなどはつけていない。そのかわり首からは金剛石の指輪がネックレスになり揺れている。レイも赤い宝石の指輪を首から下げていた。


「レイ君!」

「どうした?」

「こっちに来て遊ぼーよぉ!」

「おぅ!」


 その時マーク01が追いかけようとするが明らかにクリードが翼で止めにはいった。


「野暮はやめんか……」

「しかし」

「お主……我らが主の恋路を邪魔する気か?」

「ふむ……」


 浜に並んで座り話している二人。いつもよりニコニコしているマナを見ながら寄り添っているのだ。


「どうしたの?」

「ん?」

「綺麗だなぁと」

「そうだよね……。海も森も綺麗だしいいところだよね」

「いや何でもない」

「むぅ……気になります」

「はぁ……マナのことさ」

「ふぇ!?」

「あ! ごめん! 急に変なこといって」

「そんなことないです……う、嬉しい……かも」


 マナが顔を赤くして下を向いた。白い肌が赤くなり耳まで真っ赤になっている。ゆっくりレイが立ち上がりマナに手を差し出して立たせ貝殻拾いを始めた。所変わりギルド本部……。


「ねぇ……フィト」

「何?」

「ホントにアタシなんかでよかったの?」

「こんな美人をほっとくアホはいないよ。綺麗な髪と肌。好きだよ……アル」

「アルとフィト? それは真っ昼間からすることかいな」

「いいだろ? 社恋は自由だしな」

「あ! 馬鹿! 変なとこ触らないでよ!」

「リーンもいつまでもレイに固執せずに新しい恋を始めたらどうだ?」

「それに関してはもう抜かりないで? うちかて未練がましくつきまとうきはないんでな」

「そうか……マナかぁ。運命ってすごいんだな」


 そこにファンが現れしかめ面で任務の話を始めた。翼が小さく揺れその後ろからはギアも現れて姿を見せた。


「そこのいちゃついてる二人……お前等に任務だ。服を着たら下に来い。シドさんがまっている」

「丁度いいな。リーン。アレンとライムズを連れて任務だ。南のビーストに協力を仰ぐんだ。今は大乱期で中小の部族は危ないからな。他にもノースビーストを数名連れていけ」

「わかりました」

「了解や」


 再び西海岸。貝殻を拾いながら歩く。途中でマナがマーク01の存在に気づき見回すとクリードと話していた。レイはいつになく軽装で赤いシャツにすねほどの長さのズボンをはいている。かっこうは現代の少年と変わらないだろう。赤い髪と瞳は以前とは違い優しさを含んでいた。そして……覚醒した彼は能力を自由に解放できるのだ。バイブル……創世の書によれば覇王は冥王を排し全ての人の父になったという。そうするとその妻は母となるのだろう。


「……」

「あ……いいもの発見」

「何々?」

「ほら……これどうかな?」

「あ……。レイ君は変わったよね。覚醒と同時にさ」

「多分、俺の中で本来の俺が目覚めたんだよ。不安定だった俺の断片を取り込んでね。こんな俺だと嫌?」

「そ! そんなこと! 逆にカッコよくなってて……私じゃ釣り合わないかなって。アルさんみたいに綺麗じゃないし、リーンちゃんみたいに活発でもないし、ヴィヴィアちゃんみたいにはっきりものいえないし。ホントにいいのかなって」

「これなら信じられる?」


 いきなり正面から抱かれて驚いたらしい顔を真っ赤にして体側の手が震えている。一度離して昼食にしようと告げ木陰のある森側に行く。


「まったく……覇王もようやる。我らが寝ているとでも思うておったのだろうか?」

「主は気づいておられたよ。ダークネス。我らが話す機会をくださったのだ」

「ふむ……そうともてれるのぉ。我もそなたとは話してみたいと思うておったところじゃ」

「そうかならば話ははやいな」


 ギルド本部。現在はこの中央西区での貢献を買われ各国から志願者が現れるほどの大きさになった。そして、レイが覇王となってからはその人気に拍車がかかり止まらないのだ。加えてルナがシドに頼んで構内に設立した孤児院と魔法学校の影響でこのギルドはかなり巨大な組織になっていた。


「で、シャドーさんはもぅレイを追わないの? お兄さんとして面倒を……」

「ヴィヴィア……お前にだってわかるだろう。実の姉が近くにいても気づかない。ましてや血のつながらない数年暮らした程度の兄などいてもしかたないのだ」

「いいじゃない。私とアナタは結ばれたんだし?」

「話が飛んだぞ……ルミ」

「はぁ。お姉ちゃんはもっと他に気にする点が少々あると思うけどね」

「そうかなぁ。おっぱいだってヴィヴィアよりはあるよ?」

「ルミ……その発言だ。危ないのは……」


 ギアがギルド本部の一番高い塔に登り実務をサボっている。今のところは小休止なのか大きな戦闘は起こっていない。そして、新たに仲間が加わり支部まで増えたこのギルドの名前をタージェが決めていた。門扉の横にはめ込んだ石に刻まれている。


創立者……シド・タージェ

組織名……ホーリ・プリセクト


「確かに聖域だけどさ。中央森林区はさ。ねぇ、ルナちゃん? 僕は一応彼氏だよね? それに雑用させるの?」

「デルは口答えしないの。私についていたいなら手伝ってよ。まだ師匠に言われて仕入れなくちゃいけない魔法書けっこうあるんだから」

「……明るくなった途端にこれかよ」

「何か言った?」

「いえ、何も……」


 次々にめまぐるしく移り変わるシーンを動画と位置付けるなら俺たちはその一部だろう。世界が崩落してもその形は崩れず神とでも言う名のとりてによって世界は動かされる。


「いたいた! 早く降りて来い! 執務がたまりすぎで困っているのだ」

「もう少し待ってくれ……今、取りこんでる」

「ギア、早くこい! 執務は上官のせねばならぬことだ!」

「すぐに行くからさ」

「あぁぁ……。わかった」


 ギアの頭の中にはどのような物語があるのだろうか。はたまた……ファンには?


「この物語の神はアンタか?」

『初めましてかな? 悠久の時の狭間より来たよ。ギア、君が聞きたいことはこの世界の行く末だよね?』

「あぁ、アンタが紡ぐ世界は……どうなるんだ?」

『僕にもわからない。これは君達の問題なんだ。確かに僕は君を今ここで殺すこともできるけれど……この世界には僕は存在しないのさ。だから、神なんていない。強いていえば君達全てが神なのさ。全ての糸は絡みあって紐になり綱になり一つの塊になり絡みあう。このすべての事象が重なることで世界は成り立つのさ。君達の運命は必然の重なり合いなんだ。どこに糸をのばすかで変わる。矛盾してるけど無数にある横糸に縦糸を絡めて運命をつくるなら必然が選べることになる。それならば必然はなく世界は偶然でなりたつっていう定理がなりたつのさ。だから君の選択で僕の運命も変わってくる。ただねギア……君の糸はまだ長いんだ。けして切ってはいけないよ? 誰かが悲しむ。そして違う世界の君が僕だ。二度と過ちは繰り返さないでくれ』

「わかった。アンタの忠告を胸に留めておくよ」


 宙に浮くギアにそっくりな学生服の少年が消えた。その後はギアも屋根から飛び降りて着地し歩いていく。何が彼に起きたのかは知らないが彼も何か考えているのだ。


「レイ君……その……あの」

「いきなりで悪いけど好きなんだ……」

「ふぇ!?」

「いつもいいなって思ってた。頑張ってるマナを見ててさ。それと……なんでかは知らないけど助けた時から惹かれるんだ。君にね」

「同じ……」

「ん?」

「私も同じ……」

「マナ……」

「レイ君!」


 まったく……こちらは甘い展開を迎えている。唇を重ねて横になった。


「マァマァ! マナお姉ちゃんはぁ?」

「ミシィ……お姉ちゃんはお仕事に行ってるわ」

「師匠はぁ?」

「アルファ……レイ君もよ」

『つまんなぁい!』

「我慢しなさい!」

「今日はみんな出かけてしまったからな」「あなた! また執務を抜け出して!」

「いや、休憩だ」

「どうかしたんですかぁ?」

「ルミちゃん! それにシェイド君! この子達の相手をしてくれない?」

「いいですよ」

「もちろん」


 3日間の猶予のうちにレイとマナはその辺りにあるゼシが持つ所有地で寝泊まりしている。かなり綺麗な石造りの建物はかなりしっかりした作りになっている。既に荷物はマーク01が運び込んでいるからそこは問題ない。


「今日はありがとう……楽しめたよ」

「……ぅぅ。意地悪しないでくださいよ」

「また……こような」

「うん。また……ね」


 鞄から拾った貝を出し見繕っている。綺麗な物を選りすぐり机に並べて良さそうなものを鞄に再びしまう。


「レイ君は過去の私と話したの?」

「あぁ、封印されたマナは何も教えてはくれなかったけど……」

「……記憶の一部が戻ってきたの」

「あの時だな?」

「うん、私じゃない私が言ってたの再び歴史が繰り返されあなたが力を取り戻すだろうって」「そうかもしれないな。多分今はその発端にさしかかっているのかもしれない」

「でも、私には解るの……歴史は繰り返されない。あなたと私でこの世界は変わるから。私じゃない私が言ってたから……それはわかる」


 椅子に座り二人で夕食にする中で話したことだった。この世界には何らかの現象が影響し変わるらしい。


「マナ……それってどうすれば」

「わからないわ。レイ君と私が結ばれることで変わるらしいけど……ただ、私の力はあなたとは対局の力を持つことは教えてもらったの。全てを受け止め吸収する力」

「俺はそれまでの体制を砕く無限の力」

「それより料理のほうは……」

「美味しいよ」

「嬉しい……」


 休暇はこれから数日続く。その頃東の雅の国で大きな変動が起きていた。帝が崩御したのだ。


「うぅ……何故こんなことに」

「仕方なかろう……これも天命なんだ。紅蓮よ」

「そうですが修羅様」

「氷鑓よ。それで? 調査は進んだのか?」

「は、それが出所が不明で少々胡散臭い感が否めませんが南朝の者の生き残りが数名中央大陸で生き残っておりそ奴らの仕業と考えるのが……」

「ふん……公家どもはそれを知っているのか?」

「は、この情報もとは公家からでして……」

「ならば……戦か」

「そうでしょうな」

「紅蓮と氷鑓は方々に居る七人衆を集めよ。今回は総力を持って向かう」

「は!」

「御意のままに」


 次の日に七人衆と呼ばれた大柄な男たちが集まり始めた。城外はあわただしく兵が動き巨大な軍勢が終結しつつある。高台にある櫓にいる白銀の髪の小柄な少年が指揮を執っている。その中で先ほどの紅蓮、氷鑓以外のメンバーがそろい指揮を始めている。呼ばれたなはどれも名高い名将と歌われるものばかりだった。


「雷軌! 西側から迂回し右の西区域の偵察を開始しろ」

「は」

「風崖はそれの後ろにつき攻撃合図を待つ」

「……は」

「岩鋼は本隊前衛だ」

「御意」

「宙慧は俺の後ろの防備」

「……」

「最後だ。闇剛は間諜を頼む」

「解りました。お……お兄様」


 実は既にその会話はシェイドに聞かれていた。彼も間諜で技量は明らかに彼の方が上でそれに誰も気づかず情報はタージェの元へ。全員は動かない。無駄な死者が出る可能性のある巨大な戦争は強大な力を持ちなおかつ年長の者や幹部クラスの者がある程度まで相手し抑えられるまで交代で相手をする。それが最良の動きだ。現在の近況上ではレイとマナな参戦は無いだろう。


「う……。朝?」

「おはよう。マナ」

「レイ君。もう朝なの?」

「そうだよ」

「寝顔見た?」

「うん」

「恥ずかしい……」


 顔を真っ赤にして手でシーツをつかみ顔を半分隠した。いくらくせのないサラサラした短い髪でも寝れば寝癖は着く。今回の寝癖はひどいらしく彼女はずっとシーツをかぶったままあたふたしている。


「ひゃう! 来ちゃだめです! まだ服着てない……」

「ほら、服」

「ありがとうございます」

「今日は森に行こう。クリードが案内してくれるってさ」

「うん、そうだね」


 ギルドの部屋。地下にあるギアの研究スペースが酒造に変わり巨大な城郭の一部に新居を構えた。ファンはその外郭にある魔法学校の講師に正式に採用され弟子のルナをそばに置き指導もしている。さらにそのまわりではタージェが町からの志願者を募り軍隊とまではいかないが大きな自警団ほどの組織の訓練をしている。彼はもともと一国の王でありそういった内政や軍事など国政には強い。その妻のゼシは細工師として腕をふるい武器や装飾品、雑貨などの物を作る教室や彼女は指先が器用なのと段取りがとてもいい料理や裁縫、などの家事も教えている。そして、新たなスタートを切ったルミとヴィヴィアは姉妹という事実が発覚し二人で協力して保育所を立ち上げている。


「ここはこうであるからして……魔法陣の展開はとても重要であり私も陣と魔法具の相性は気にしている。君たちも……」

「失礼するぞ。ファンは居るか?」

「こら! ギア! 授業中は来るなと……」

「皆、悪いが即時避難命令が出た落ち着いて荷物をまとめてギルド本部の大広間にいってくれ。親御さんも既に着ている」

「どういうことだ?」

「嫌なことになった……よりによって……“魔王”が動くとは」

「何?」

「魔王……」

「それって……」


 生徒からもつぶやきが漏れる。


「全体よく聞け! 今回は君たちの訓練の成果を見せる時だ。自分の家族は君たちに本部の守りを頼むぞ」

『おぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!!!!!』


 訓練兵の皆が武器を置き旗や担架とリュックなどを担ぎ次々に分隊ごとに分かれて走って行く。巨大な城塞の隅々にその伝達が進む中上官や幹部クラスが任務を切り上げ門をくぐって本部に駆け込んできた。


「ファンねぇさん!」

「リーンかお帰り。状況は奥に居るシドさんから聞け。私は他の者の配置を説明する」

「アレン……」

「どうした? ライムズ」

「巨大な覇気の塊が来る」

「それはさっきから感じてる。レイの放つのと同じようなものだ」


 アルとフィトも帰還し全戦力が集結し陣張りが完成していく。前戦には年長組が全員赴く。出るメンバーは一陣がファン、ギア。次にルミとシェイド。三番目にアルとこのメンバー内では若年ながら志願したフィト。最後の砦が最年長組のゼシとタージェ。現在は行軍状況をシェイドが探っているがまだ動きは無いらしい。


「綺麗……こんなところが中央大陸にあったんだ」

「うむ……空を世界に君する我らしか知らぬだろうな。しかし、ここは聖地なのだ。我々のな。主よ我らが仲間の意思を汲んでこ奴らを連れて行ってくれ」

「解った」

「そんな……」


 そこはたくさんの花々が咲き乱れ木々が木漏れ日を落とす静かな場所だった。そこには巨大な頭蓋骨やあばら骨……爪や牙などが岩のようにごろごろ転がっている。


「マーク01よ格納を急げ。胸騒ぎがする」

「わかりました」

「主たちはこの周辺でゆっくりしていてくれ。……うぬ。月の王女も感ずいたようじゃな」

「ダークネス……行けないの?」

「うぬ……。こ奴らはな龍騎士なのじゃ。かつて冥府の王との戦にて尽力し息絶えた者たちたとえ行けたとて我らは見届けるまでは動けんのじゃ。それまでは主らはゆるりとして体を休めるが得策じゃ」


 その場でレイが巨大で無骨な大剣を地面に突き立て何かをつぶやき残りの三本の剣も同様に突きたてた。その後はマナと共に海岸線に出て歩いている。


「レイ君は私との初めての会話覚えてる?」

「いろいろあってわかんないけど……」

「今の私になってからの」

「あぁ、記憶がなかったころのか。正直驚いたよ。こんな華奢な女の子が封印されてるなんて思いもよらなかったしな」

「私、これは運命だと思うの。私とレイ君が出会えたのはね。記憶の断片にだけど貴方にそっくりな男の子の記憶があるの。でも、その子は死んでしまったみたい。だけど、ギアさんやファンさんが貴方や私の運命を変えようとしてるのかも知れないわ。なら、私たちも」

「そうだね。でも、断片なら俺にもある。俺はこの世界で生きるらしい。永遠に……」


 そして、ついに東の大陸。雅の国が動き出した。無知な公家衆が将軍である修羅に圧力をかけついに大軍団を中央大陸に送り込むことになったのだ。彼はそれを望んではいなかったが民主会議国家でありがちな政党独裁によって支配された国の議会決定には逆らえないのが実情というところだろう。


「修羅様……」

「紅蓮、気にするな。本来女のお前を戦場に連れだしたくはなかったのだが……」

「バカなことを……」

「お前は俺が守る」

「氷鑓……あんたなんかに守られたくないのよ!」


 行軍はゆっくり行うようだ。無益な戦いはしない主義らしい将軍の修羅とそのほかの武官はできる限りの死者を出さずに本国へ帰りたいらしい。今のところはその理念にかなった動きができているからいいもののそうもいかない事態になって行くのだ。なぜなら……裏で手を引く者がいたから……。


「ふん……スケアよ首尾は上々のようだな」

「は、プルトン閣下」

「ククク、これで、東と南が俺の物となるのだ。クルーエルは来たか?」

「はい、今朝がたここへ」

「ふむ、それで。オニキスよ貴様はどうなのだ?」

「フフフ……主よ。そこまで簡単に結果は出ませんぞ? わしが術式をかけてから24時間は必要ですからの」

「ふむ、俺もあまりいい予感はせぬ。誰かがこの世界におらぬはずの人が出入りしたようだ。すこし。プランを変更せねばならぬな」


 海岸線で並んで座る二人の目の前に巨大な前足が落ちて来た。黒い鱗の塊のような無骨な腕。龍族とはそういう物らしい。赤く輝く爪が三本際立つ手がマナを掬いあげた。


「キャ!」

「済まぬ。主よ。急がねば……覇王を届けねば」


 マーク01がレイに鎧と四本の剣を手渡し金色のオーラを放つ。隣に舞い降り手をダークネスと同じように差し出したクリードに乗りそのまま背中に這いあがった。クリードがダークネスに合図をしマーク01はマナの手に治まった。


「行こう! 改新の地へ!」

「うぬ、行こう!」

『我らが故郷へ!』


 二頭の龍が空に舞う頃にギルドから少し離れた荒野の真ん中で第一陣の二人が構えている。そして、敵の槍兵がルミへ突き立てようと走りこんでくるが……。


「この鎌は……お前らの力を奪う!」


 味方の攻撃は数が少ない割に強大で敵の兵に大きなダメージを与えるが殺しはしない。特にギアはレイから聞いて敗戦後の残兵の悲しみと運命をよく知っているのだ。そして、それに同調したファンも結界を使って攻撃隊の進路を限定するにとどめているらしい。


「ふむふむ……。相手はかの有名なオーブ・ギア・オーガか。面倒だな」

「はい、報告によればその相方は翼がある女だそうです。光魔法の結界術にたけているようで味方の前戦隊は苦戦している模様です」

「ふふん……。なら、俺が出よう」

「は?」

「燃えないか? 現代最強の戦略家と魔導師が組んでいるんだ。面白い戦いができるだろうな。久々だ。こんなに燃えるのは」

「まさか! スフィア・ファン・アイリスですか!」

「そうだろう。アイツらは仲が良かったからな。それに俺のなじみだ……やつらがくっついていることくらい知っている」


 軍配を隣に居た兵士に預けかなり大きな薙ぎ払い槍を陣所から持ち出した。4メートルと少しはアルその巨大な槍を軽々と片手でもって歩きだす。白銀の短髪が風でなびく中陣所が大騒ぎになり敵軍の兵士が負傷者や味方を担いで逃げていく。そして、放った言葉は……。


『修羅様が前に出るぞーーーーーーーーーーー!』


 TO BE CONTENEW



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