2年の秋
「立花くん」
「佐倉」
「何聴いてるの?」
「『xxx』っていうグループの新譜」
「出たの?聴かせて」
「知ってるの?あ、田中か?」
「うん、レイナが好きだからね。レイナから借りたの?」
「いや、自分で好きだから」
「聴かせてよ」
「田中に貸してもらえよ」
「クラス違うし」
「俺とは学校も違うじゃないか」
「学校まで待てない」
「はいはい。片方だけな」
「うん。うん?最初から聴かせてよ」
「わがままだなぁ」
「立花くんはどうせもう何度も聴いてるんでしょう?」
「まあ、わかったよ」
「ありがとう、優しいね~。うん?なに?その顔は?」
「そう言う言葉や顔に騙されないようにしようと思って」
「そんなんじゃないわよ。そういえばどこだったか、近所の大学の学園祭にくるんじゃなかった?」
「もう終わったよ」
「そうなの?行ったの?」
「いやあ、行かなかった」
「ふーん。部活?」
「いや、行けば行けたんだけど」
「え?なんで行かなかったの?それほど好きじゃないの?」
「近藤が田中と行ったからなあ」
「うん?一人では行きにくいってこと?」
「いや、向こうで二人に会ったら気まずいじゃん」
「うん?なら、一緒に行けばよかったのに」
「なおさら気まずいだろう?っていうか、佐倉はあの二人と3人きりって平気なのか?」
「えー、平気だよ?4人のときも別に普通でしょ?」
「4人はそうだけど・・・はぁ。佐倉も聴くんなら、佐倉誘って行けばよかった」
「じゃあ、今度は声かけてみてよ。予定が合えば大丈夫よ」
「じゃあ、そのときは頼むな」
「うん、お安くしとくね」
「え?金取るの?」
「大丈夫。大学の学園祭って、結構本格的でおいしい屋台がお安くなってるから」
「奢れってことね?何が大丈夫なんだか」
「そういえば、志望校の学園祭とか、行った?」
「いや」
「来年は行けないんじゃない?」
「そうだろうけど、わざわざ行くか?佐倉は行ったの?」
「地元のは行ったよ。面白かったよ。東京のはこれから」
「え?東京まで行くの?わざわざ?」
「そんなに遠くないじゃない」
「でも1日掛かりだろ?」
「親戚の家に泊まるから」
「泊りがけかよ。本命の大学?」
「今の所、第2志望。来年にはどうなっているか判らないけれどね」
「まあそうだな」
「立花くん、東京出身なんだから、案内してよ」
「住んでたのは小学生の低学年の頃だから、地理も路線もそんなに覚えてない」
「屋台でご馳走するよ?」
「交通費も出してくれるなら予定が合えばだな。田中でも誘えば?」
「まあ、そうだよね」
「なあ?」
「うん?」
「学園祭の屋台の美味しさが志望動機になったりしないか?」
「そんなわけないじゃない。ちゃんと選ぶわよ」
「でも、美味しい所を選んだら、やっぱりって思われるのは覚悟しておけよ」
時間を作ってマメに会っている近藤と田中は人前ではイチャイチャしないので、その意味で言えば立花の気にしすぎ