2年の春
「立花くん」
「佐倉」
「レイナと近藤くんの話、聞いた?」
「今度、デートするんだってな」
「デートっていうか、付き合うって聞いたけど?」
「え?付き合う?」
「うん。デートは何度かしてるんでしょ?」
「え?いつの間に・・・近藤にそんな暇はなかったはずだけど」
「部活?」
「ああ。この春休みもあいつも休まず出てるし、なんだかんだで休養日にも顔を合わせてたから、どこかに出かけるような時間は取れなかったはずだけど、まさか・・・」
「まさか?」
「深夜に会っていたとか?」
「レイナの家は厳しい方だから、夜はないんじゃない?」
「佐倉、アリバイに使われてたりしない?」
「ナイナイ。それにカフェや図書館でデートって言ってたから、遅くても夕方じゃないの?」
「カフェや図書館でなにするんだ?」
「おしゃべりや勉強じゃない?それとショッピングにも行ったって言ってたな」
「それって、デートなのか?」
「デートでしょ?なんで?」
「いや、俺のイメージするデートとは違うから」
「そう?」
「だって、図書館での勉強なんて、俺たちもやったじゃないか?」
「まあ試験前に、4人でやったね」
「公園によって四阿で話したり」
「好きな作品の話になると、つい語っちゃうよね」
「帰りにコロッケ買食いしたり」
「駄菓子屋寄ったり」
「本屋で買い物もしたり」
「うーん、参考書を選ぶのをショッピングとは言わないんじゃない?それでいうと駄菓子やコロッケもかな?」
「でも、あいつら二人だって同じだろう?それに制服なんじゃないか?」
「部活帰りなら制服だろうけど、でも、制服デートってやつじゃない?」
「なにそれ?」
「いやぁ、そのままよ?制服でデートするっていう」
「そのままなのはわかるけど、そもそも制服でデートって成り立つのかってことが訊きたい」
「え?成り立つでしょ?成り立つんじゃない?」
「部活帰りの汗臭い格好で?」
「あー、運動部はそうか」
「髪もバサバサだし」
「だね」
「それでいきなり付き合うなんて、田中のお父さんが許しても、俺が許さん!」
「なに言ってるの」
「顧問にチクってやる」
「ホント何言ってんの?なんでそうなるの?」
「うちの顧問は独身で彼女もいない」
「うん?それで?朝も夕も休日も部活の指導してたら、恋愛は難しいかもしれないね」
「部活が恋人」
「ひどいなぁ。そう言う立花くんはどうなのよ?」
「ご存知のとおりだが、そう言う佐倉は?」
「・・・生徒会もあるとはいえ、私も同類だけど」
「そこで顧問に進言して、近藤をレギュラーにしてもらう」
「え?なんで?」
「レギュラーになると遠征が多くなるから」
「レイナと会えなくなるって?うわぁ、ひどいわー。わたし同類じゃないわー」
「うまく行ったら、せいぜい田中を慰めてやってくれ」
「うまくじゃないわよ、何言ってるのよ。自分はどうなの?」
「何が?彼女なんて出来ないぞ」
「違うわよ、レギュラーよ」
「そっちは鋭意努力中だが、道は険しく遠く」
「そうなの?」
「新人にもいいのがいるからな」
「まだ春休みだけど、もう入ってきてるのね」
「多少ね」
「立花くんも卒業前から参加してたものね。期待できる子?」
「ああ、凄いのもいるよ。才能がある上に好きでやってて努力も惜しまない。なんでウチの高校なんかに来るんだ?」
「迷惑だ?」
「いやいや、彼の将来のためにだね、もっと上を目指した方がだね」
「俺のほうが好きだ、とかは?」
「うーん、負けてるとは思わないけど、同じくらい?先輩達もそうだけど、みんな好きでやってるからな」
「そうか」
「そうだとすると、田中がイチャイチャしてくれれば、近藤が脱落するかも」
「ほんと、ひどいね、立花くん。何か有ったの?」
「ひどくないだろう?近藤が部活より大切なものに気付いて田中と幸せになれば、佐倉も田中を慰める必要がなく、俺はライバルが一人減るんだから、みんなハッピーじゃないか?」
「二人が愛情を育んだら、立花くんはその熱で干からびるんじゃない?」
「え?そうならないように、俺に二人を邪魔しろってこと?」
「違うわよ。なに言ってるのよ」
「佐倉こそ何が言いたいんだよ?みんなで幸せになろうぜ?」
「それならまず、二人を妬むのをやめないとね。ひとを妬む様な人は幸せになれそうにないし」
「妬みや嫉みをエネルギーに、向上心を燃やすってのは?」
「妬みとかがキレイに燃え尽きればいいね?」
「その笑顔、ムカつくからやめて」
グループ交際に巻き込んでおいて、田中と近藤は離脱