1年の秋
「立花くん」
「佐倉」
「この間は文化祭来てくれて、ありがとね」
「こっちも、呼んでくれてありがとな」
「一高祭行くから、よろしくね。立花くんからもらった入場券で、レイナを誘うから」
「田中だっけ?」
「そう、田中レイナ」
「美人なんだよな?」
「美人だよー。あれ?ウチの文化祭で会わなかった?」
「と思う。田中はなんか言ってた?俺に会ったとかって」
「聞いてないけど、あれ?会ったかどうかわからないの?なんで?」
「顔、覚えてないし」
「えー?卒業アルバムとかで、確認してないの?来週までに確認しておいてよ?はじめましてなんてレイナに言ったらダメだからね?」
「佐倉と一緒に来るなら判るだろう?」
「従姉妹も一緒に行く予定だから」
「解った。確認しとく。卒アル、どこやったかな?」
「捨ててないでしょうね?まったく。もう少し前に判っていれば、貸すこともできたけど」
「あ、近藤に借りるわ」
「そうね。まあ、従姉妹はみんな、私に似てるらしいから、レイナとは区別つくと思うけど」
「へえ」
「上の従姉とは姉妹ってよく聞かれるし、下の従妹とは双子ってよく言われたわ」
「ふーん。イトコの分の入場券とかは?」
「上の従姉は生徒会経由で入手してたし、下の従妹はなんと!彼氏のお兄さんが一高生なんですって!」
「彼氏って、そのイトコ、いくつよ?」
「中2!」
「はあ・・・羨ましい」
「ほんとよね」
「・・・佐倉と双子みたいにそっくりなんだよな」
「下の従妹?そうだけど、何が言いたいの?」
「何がって・・・今のその表情を見ると、佐倉は俺の心が読めてるはず」
「そういう事は、自分が彼女作ってから言ってよね」
「言ってないし。彼女、作らないだけだし」
「へぇ、そうですか」
「でもホント、部活や勉強で、遊ぶ時間はほとんどない」
「そうかもね」
「佐倉も生徒会までやってたら、彼氏作ってる暇ないんじゃないか?」
「いいこと言うわね、立花くん。そうね。上の従姉も生徒会のせいで彼氏いないし、私も仕方ないわね」
「生徒会のせいって・・・まあ、できるやつはそんなの関係ないんだろうけどな」
「なによ?どっちの味方なのよ?」
「味方もなにも・・・敵じゃないし同類だけど、助けることはできないからなぁ」
「・・・味方とは言えないか」
「うん」
「しょうがない、同類を増やすしかない。レイナを生徒会に引き込もうかな?」
「迷惑な。巻き込むなよ」
「女子校を選んだ時点で、諦めているはずよ」
「俺は男子校だけど、諦めてないからな」
「さっき作らないって言ったじゃない?」
「まだ作らないだけで、俺だってその気になれば」
「今まではその気になってなかっただけ?」
「その通り」
「今から本気出すってやつ?」
「いや、まあ」
「いつから出すのよ?」
「・・・佐倉」
「なに?」
「その言葉、ブーメランだろう?」
「うっ!」
「そうやって、自分を責めちゃダメだ」
「なあにそれ?傷をなめ合う展開?」
「下の従妹にも当たるなよ?」
「・・・私の心が読めてるんだったね」
「同類だからな」
「確かに、お互い、助けにはならないわね」
双子の片方に恋人がいたら、もう一方にもいるイメージ