1年の春
12話目に「インド人」とのあだ名で泣く女の子の話が出てきますが、インドの民族や宗教や風習を揶揄する意図はありません。どうかご了承ください。
「立花くん?」
「佐倉?」
「久しぶり」
「卒業ぶり」
「どうしたの?座席空いてるのに、どうしてドアの所で立ってるの?」
「いや、座ると降りるときめんどくさいし」
「ふうん、そう。駅どこから?ここからじゃないの?」
「一コ前」
「遠くない?」
「知り合いん家に自転車駐められるから」
「ふうん。その制服、立花くん、一高だったのね」
「うん」
「似合ってるわね」
「え?そう?」
「男子って大き目のサイズにするのかと思っていたけど、立花くんはちょうどいいじゃない」
「どうせ制服買い直さなきゃだからって言って」
「そんなに体が大きくなるの?」
「いや、服が小さくもなるけど、破けるからって」
「え?破けるものなの?」
「男子高校生は破くって。母親は納得してなかったけどね」
「へえ、そうなんだ。今日は?部活?」
「うん」
「春休み中から参加してるのね」
「卒業式前から顔出してたよ」
「そうなの?すごいわね」
「普通じゃないか?佐倉は」
「私は生徒会の手伝い」
「生徒会?」
「ええ、従姉に手伝わされてるの、新入生歓迎の準備を」
「佐倉も新入生じゃん」
「そうよね?ヒドイでしょう?」
「嬉しそうに」
「ふふ。まあ、こういうの好きだからね」
「ふーん。部活は?」
「入るつもりだけど、まだ決めてないの」
「中学ん時のは続けないのか?」
「悩んでる。新しいことも始めたいしね」
「ふーん。制服、佐倉、一女だったんだな」
「ええ。似合ってるでしょ?」
「自分で言う?」
「仕方ないのよ。家系的に、もう身長が止まるから」
「その身長なら充分だろうけど・・・似合うって、サイズのこと?」
「え?そうよ?」
「それは似合うじゃなくて、合う合わないって言ってくれ」
「似合う」が寸法が合うかどうかだと思っている人が、何を着ても似合う人の中にいる説