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最終話

 トレア城の陥落から一ヶ月。


 サロモンの代わりに城に入城した者が現在のトレア王国を取り仕切っている。


 その者の名前はエステバン、反乱軍に加担した唯一の貴族だ。


「さー、他にもどんどん仕事がありますからね。頑張ってください」


 麻服を着こんだエステバンがにこやかな表情で羊皮紙の束を持ってくる。


「騙された!! また騙された!」


 喚き散らすエステバン。


 執務室の中に詰め込まれた彼は来る日も来る日も公務に明け暮れていた。


 諸外国との外交、現在のトレア王国の内政のほぼすべて。


 なぜこんなことになっているのか?


『王になればあの城に住むことが出来て、なおかつ財産は思いのままです』


 ベルトランからそう入れ知恵されたエステバンは喜び勇んで王の役目を引き継いだ。


 だが結果はこの始末、食事する間も惜しいほどの忙しい日々を送っている。


「まぁ良かったじゃないですか。戦費はサロモンの隠し財産でどうにかなったんですから」


「その戦費はお前が私を反乱に誘わなければどうにかなったんだがな!?」


 サロモンは現在は使われていない地下の牢に大量の財宝、そして食料の類を隠していた。


 トレアの各地から集められた金銀などの財宝に加え、麦などの備蓄もある。


「調べれば他の場所にも金はあるだろうが、ちびりちびり使っていこう」


「ええ、その方が懸命だ」


 したり顔で言ってくるベルトランを睨むと、エステバンはまた書類に目を移す。


「はぁ……フリアの作ったご飯が食べたい……」


「フリア?」


「私の城の使用人だよ。お前も会ったことあるだろうに」


 そう言われ少しだけ考えてみる。


 思い浮かんだのはフェーデと共に城を訪れたとき椅子を出してくれた使用人。


「ああ、あの」


「実はな、あの使用人は私の初恋の女性だった。想いも告げずお互いこんな歳になってしまったが」


「今からでも思いの丈をぶつけてみればよいではありませんか」


 ベルトランの言葉にエステバンはうつむく。


「恋愛でも臆病になるおつもりですか? 勇気を出すんです」


「そうだな……やってみよう。今日のこの仕事を終わらせたあと。行ってみるよ」


「ああご安心下さい。フリア殿にはこちらに来ていただくよう進言しておきますので」


「ああ、そう」


 にこやかなベルトランに舌打ちしながら、エステバンは公務に戻る。


「ところでフェーデはどうしたんだ? サロモンを倒したあと姿を見せんが」


「ああ、あいつなら国中走り回ってますよ。まだまだ不安定ですからね。我が国は」






 太陽の光が降り注ぐ小高い丘。


 その上から岩に腰掛けて近くに見える村を眺める人物が2人。


 フェーデとイサベルだった。


「本当に良かったんですか? セルバ騎士団を辞めて」


「仲間を大勢殺したのは私だ。辞するのは当り前のことだよ」


 サロモンとの戦いが終わった後、フェーデはセルバ騎士団の団長の座を退いた。


 そして退いた後はイサベルと共に戦争で悪化した治安を元に戻すべく各地を渡り歩いている。


「いい天気だ。きっと今日の夜は月が綺麗に見える」


「そうですね」


 どこまでも広がる青空を眺める2人、心地よい風が頬を撫で遠くへと去って行く。


「……イサベル。少し話を聞いてくれないだろうか?」


 フェーデはイサベルに向き直ることも無く、どこか照れたような声音で話し始めた。


 フェーデの方を見たイサベルは不思議そうに小首を傾げる。


 良く見ればフェーデの耳が赤い。


「私は今の今まで剣一筋で生きて来た。勿論それに後悔はないのだが……私には生涯を共にする伴侶がいない」


 そこまで言ったフェーデは岩に腰掛けたままのイサベルの前に跪く。


「イサベル。私は君と共に歩んでいきたい。君と共に同じ景色を眺めたい。私の………………妻になってはもらえないだろうか?」


 しばしの沈黙。


「……フレデリーコ様」


 沈黙を破ってイサベルが口を開いた。


「お断りします」


 その言葉に、フェーデは肩を落とす。


「私はまだ、騎士としてのフレデリーコ様のお姿しか知りません。ですから……」


 言いながらイサベルは跪くフェーデの前にしゃがみながら頭を抱きしめる。


「もっと貴方の事を教えてください。貴方が何を考えているのか、どんな生き方をしてきたのかを、貴方のすぐ傍で」


 フェーデが顔を上げるとそこには頭上に浮かぶ太陽すらかすむほど、輝く笑みを浮かべるイサベルが居た。


「いかがでしょうか。その……フェーデ……様」


「ああ、もちろんだ。見ていてくれ。イサベル」


 お互いに立ち上がった後、視線を合わせる2人。


 しばしの沈黙の後、燦々と輝く太陽の下、2人は熱い口づけを交わした。


 


 

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― 新着の感想 ―
[良い点] サロモン王みたいなキャラ、とても好き… [一言] 完結おめでとうございます~ 途中くらいからサロモン王の魅力にやられっぱなしでした。 あとエステバン氏もとても好き(*・ω・)
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