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第36話

 結論から言ってイサベルが言っていた脱出路はふさがれていた。


 だが王国兵の塞ぎ方は雑に過ぎた。


「中に入ってしまえば人が立って歩けるだけの幅と高さがある。あとかなり進んでみたが奥の方で埋められてた。だがやわらかい土だけで軽く埋めただけだ。いくら掘っても石も岩もなかった」


 以上が井戸から戻ってきたベルトランの話。


 城の方向に延びるその脱出路は現在は反乱軍の人間が数百名が協力し掘り進めている。


「この穴が開通して、奇襲ができればサロモンに一泡ふかせられる。お手柄だイサベル」


「ありがとうございます」


 イサベルの肩に手を置きながら笑いかけるベルトランは夜空の下でもわかるほどとてもいい笑顔をしていた。


 その姿はまるで花が咲いたよう。


「ああそうだ、エステバン公」


「なんだ? ……ああそうだ忘れていた。ごほん……イサベル、君の功績を我々が忘れることは──」


「いえそうではなく」


 どうやらベルトランが言いたいことは『良いことをしたのだから誉めてやれ』ではないらしい。


 では何か?


「エステバン公」


「なんだ?」


 イサベルに向けていた笑顔を、ベルトランはエステバンに向けつつ一言。


「人足の給料はお願いしますね。イサベルに褒美も」


「……ああ、そう」


 エステバンにはベルトランの笑顔がひどく歪んで見えた。






 夜明けごろ、反乱軍の強力もあり脱出路は開通直前まで掘り進められた。


 ベルトランの言った通り殆どが土だったお陰でだが最後までは掘らない。


 今日行われる突撃に合わせて開通させ、城内へと一気に雪崩れ込む手はずだ。


 そしてこの作戦を実行するのはベルトラン率いるイェルモ騎士団。


 南の城門側から攻撃を加えるのはフェーデ率いるセルバ騎士団を筆頭に各方面から兵士を集めてくれた指揮官たちが務めてくれる。


「いよいよですな。サロモンを地獄に叩き込む日です」


「少し黙っていろベニート。前と同じ浮かれていては勝てるものも勝てん」


 セルバ騎士団は以前の戦いでセシリオの裏切りがあったとはいえ多少の油断もあった。


 だが今回はそれは無しだ。


 油断も隙も無く、確実に勝利するための条件を積み上げる。


「我々が突撃し中頃までたどり着いた時、銅鑼を鳴らしてベルトランに合図しろ」


「手筈通りに」


 後ろに控える騎士、農民達にフェーデは視線を送る。


 緊張と不安の入り混じった表情を見てフェーデは天まで届けと言わんばかりに声を張り上げた。


「聞け! ここに集まりし2万と8千の同胞達よ! 身分も立場の壁も乗り越え集った同胞達よ! 我々はこれより故国を取り戻す戦いに赴く! 苦難もあろう、不安もあろう、だが決して屈服してはならない。 我々の明日をつかみとれ!」


 フェーデの言葉の後、集った反乱軍が歓声を上げる。


 我こそは国を救う英雄なり、彼こそはこの国を救う騎士、フレデリーコなり。


 胸を叩き、握る得物に力を込める。


 まっすぐに敵を見据え、待つ。


 先頭に立つ騎士、フェーデの指示をただ待つ。


 大軍であるとは思えない程の静寂に包まれる中、フェーデは静かに長剣を抜き放つ。


「突撃!!」


 もはや怒号ともとれそうな号令の後、フェーデは勢いよく馬の腹を蹴り一直線に敵陣に向かっていく。


 そして同時に後方から放たれる弓と投石器から放たれる矢と岩。


 青い空にそれがまるで流星の如くフェーデ達の頭上をやすやすと越えていく。


 反乱軍達は置盾の林を抜け、埋め立てた堀を越え、長槍を構える敵に真正面から向かっていく。


 大地を踏みならし猛進するその姿はまるで黒い津波のように王国軍へと襲い掛かった。


 矢と岩の雨に倒れた敵を馬蹄で踏み砕き、まだ戦う意志のある者達は反乱軍によって次々討ち取られ大地に鮮血をぶちまける。


 騎馬を警戒して用意された長槍兵はフェーデ達にその穂先を向けることなく槍をその場に投げ捨て、去って行く主の姿を見守るのみ。


「作戦は成功だ!」


 反乱軍の1人が叫んだ。


 その理由は城内だろう。


 城壁の上に登っていた王国軍の兵士達が城内に向かって矢を放っている、場内から勇ましい鬨の声が聞こえる。


 ベルトラン率いるイェルモ騎士団が奇襲をかけたのだ。


「よし今だ! 破城槌急げ! 早く!」


 地に濡れた剣を振り回しながらフェーデは後方からやって来る反乱軍の兵士達に命令する。


 彼等が持つのは巨大な丸太。


 それを数十名で運んでいるのだ。


 無論それの用途は……


「ぶち込んでやれ!」


 城門に向かって撃ち込むためだ。


「中に土嚢でも積んでやがるのか!? 開きゃしねぇ!」


「うるせぇ! 黙って体動かせ!!」


 丸太を持って怒鳴る兵士達に逞しささえ感じながら、フェーデは丸太を打ち込み続ける兵士達を守るために奮戦する。


 向かい来る敵の腹を蹴り飛ばし、首筋に剣を突き立てる。


「枠がひしゃげ始めてる! 次で開くぞ!」


「ぶち込め!」


 あともう少しで城門が開く、そんな時だった。


 城壁の上によじ登ったのだろう。


 ベルトランが現れフェーデ達城門の前に居る兵士達に向かってこう叫んだ。


「サロモンが逃げた!! 北の城壁を破壊してそのまま北の囲いに向かって進んでる!!」


 

 


 

 


 

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