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第34話

 トレア城を包囲したまま1日が経過。


 太陽が頭上に至った時、反乱軍は攻撃を開始した。


「放てェ!!」


 各方面の指揮官たちの号令と共に、反乱軍はトレア城の周囲に向かって投石機による攻撃を開始した。


 投石器といっても投げ込んでいるのは石ではなく火の点いた藁の塊、これを敵の物資、投石器が置かれている場所目掛けて投げ込むのである。


 あくまで敵の兵士ではなく敵の『物』を狙うのだ。


 トレア各地からかき集めた投石器は20機を越えいずれも大型、サロモン率いる王国軍の所有する投石機の射程外から攻撃することが可能だった。






 投石機による攻撃が始まるのと同時、フェーデ率いるセルバ騎士団、ベルトラン率いるイェルモ騎士団がトレア城の城門に向かって進攻を開始した。


 彼らは馬を降り、剣の代わりに適当な大きさの枝を束ねたものを盾にして進む。


「よし進むぞ! 後ろを守れ!」


 フェーデは後ろに指示を出しながら枝を蔓でまとめた束を盾代わりにして徐々にトレア城へと進んでいく。


 そしてある程度進めば持っていた枝を地面に突き立て、あるいはそのまま横にして置いて置盾にするのだ。


「次だ! 後ろの持ってこい!」


 降り注ぐ矢の雨の中、フェーデは仲間たちと共に進み続ける。


 すぐ後ろを中腰で歩くベニートも苦笑いだ。


「いい天気ですねフェーデ様! 矢の雨とは!」


「黙って手と足を動かせ! 道を作れ!」


 フェーデは盾に矢が当たる音を聞きながら、後ろについて来る仲間に指示を送る。


 敵が矢を放ってきている場所まではまだ距離が離れているが、徐々に距離は詰められている。


 だが懸念するべきところもあった。


「しかしいいんですかフェーデ様。こんなに盾を置いたら馬が使えませんよ」


 ベニートがずっと思っていたことを口にした。


「馬の数は少ないし、城の中では使えん。堀まで行こうにも矢が邪魔だ」


「なるほど」


「よし我々は一時撤退! 弓兵進め!」


 置盾を戦場に並べ、安全がある程度確保された後弓兵を進ませ矢を射かける。


 フェーデはこれを繰り返した。


「いやはや疲れますね。しかもまだ距離がある」


「安心しろ。これが終われば次は堀の埋め立て、馬での突撃、城門の破壊が待ってるぞ」


 皮肉を飛ばしながらフェーデ達は撤退を始める。


 この作戦で出た反乱軍の損害は微々たるものだった。






 夕暮れ時、フェーデ達が仲間達と共に後方に下がると各所で炊事の煙が橙色の空に向かって上がり食事の用意がされていた。


 大きな鍋で腕を振るうのはイサベルや他の村の住民達、献立は麦の粥だ。


 漂ってくる食べ物の匂いにフェーデは思わずよだれを垂らしそうになった。


「これはいい匂いだ」


「もう少しでできますから。待っててくださいね」


 栗色の髪をまとめ上げたイサベル。


 イサベルは待っている兵士達に微笑みかけながら鍋の中に香草を入れていく。


「何が入ってるんだい?」


「塩漬けの魚……メルルーサを細かくしたのとバジルですね」


 実に食欲を誘う香りだ。


「出来た。はい、皆さん並んでください。大丈夫しっかり全員分ありますから」


 木のおたまで鍋をカンカンと叩き、兵士達に声をかけるイサベル。


 当初危惧していた食糧などの物資の問題だったが、ある程度は解消された。


 各地の村、都市から続々と物資が送られてきているのだ。


 自分たちの居場所を荒らされたくないからということもあるが、それ以上にサロモンへの恨みを晴らさんとしているフェーデ達を応援したいという気持ちも大きい。


 なけなしの武器を持ってここに来る者達も少なくない。


 ──とはいえいつまでも続けていては国全体の生産性が落ちる。早くせねばな。


 フェーデは淵の欠けた椀に入れられた粥をかきこみながらそう思った。


「熱ッ!」


「何やってるんですか貴方は……」


 隣で呆れているベニートには目もくれず、フェーデは粥をかきこんだ。


 味もへったくれも無い。


「いいんですか? わざわざイサベル嬢が作ってくれた料理を味わうことなくかきこんで」


「本当に彼女の事を考えるなら、この戦争を早く終わらせるのに集中した方がいい」


「の割には空いてきた他の鍋には目もくれずにイサベル嬢の鍋に並んだくせにってああ!! やめてください! 椀で殴らないでください!」


 この後2人はイサベルに薪で叩かれた。

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