第28話
フェーデ達は仲間を徐々に集めながら各地の反乱軍と合流、さらに勢力を増しながら権力者の住まう場所を襲い、略奪していく。
現在フェーデ達が居る場所はトレア王国の南東、草が生い茂った丘。
そして丘の上から見下ろしたところに旗を掲げて武装した一団が見える。
掲げている旗から察するに立ちふさがっているのは貴族の私兵達、フェーデ達が向かってくるのを今や遅しと待ち構えている。
「敵はおよそ500、8割が歩兵、残りの2割が騎兵です」
馬に跨り、偵察から帰ってきたベニートの表情は硬い。
貴族たちもやられっぱなしではなく、迎撃するというやり方をとったのだ。
丘の下に陣を構えた彼らは前面に騎兵を、後方に歩兵を配置している。
「騎兵と一部の歩兵は鉄の鎧を着込んでいます。随分と金をかけているようで」
「さて、どうするか……ベニート、農民達の中で弓を扱えるものはどれだけいる?」
「飛ばすだけなら恐らく4分の1程度かと。的に当てられるとなればさらに減りそうですが……」
「ふむ……」
丘の上にいるフェーデ達から見て、左側は湿地、右側には草がまばらに生える荒れ地、そして正面には近くの村が作ったであろう畑が広がっている。
敵が来ると言われて慌てて作物を取ったのだろう、灰色の土がむき出しだ。
「ベルトラン、ベニート、賭けをしようと思うが、乗るか?」
「勝てるなら乗る」
「私は貴方についていきますよ。フェーデ様」
2人の顔を見て、フェーデは決断した。
「決まりだ」
フェーデ率いる反乱軍と正面からにらみ合う形になった貴族側は、既に勝利を確信していた。
理由としては主に2つ、まず1つは食料などの補給線が脆弱であるという点、そしてもう1つは兵の大半が戦闘訓練も受けていない農民だという事だ。
「反乱軍に動きがあります! 荷を担いだ奴らが半分ほど湿地方面に!」
「逃げるつもりだな。よし! 正面は後回しだ、湿地方面に右翼を向かわせろ、後ろから突いて瓦解させてやるんだ」
この時私兵たちの戦力は500、対して反乱軍はおよそ600程。
反乱軍は部隊のおよそ半分を湿地方面へと向かわせ、私兵たちはそれを殲滅するために追いかけるという構図になった。
だがここで、彼らは大きな失敗を犯した。
私兵の中には弩、弓を装備した兵士たちが居たが、戦果を上げようと突撃した兵士達はそれらを置いてきてしまったのである。
「進め進め!」
鬨の声を上げながら湿地方面へと突撃していく私兵たち、彼らの動きを最初に阻んだのは泥濘だった。
「ええい、遅れるな!」
騎兵も歩兵も、泥に足を取られてまともに動くことが困難になっていた。
反乱軍は、その隙を逃さない。
「よし反転! 射かけろ!」
私兵の勢いが落ちてきたのを見計らって反乱軍は反転、担いでいた荷や元々持っていた弓を構え、射かけ始めた。
「おのれ卑怯な!」
「どこかに隠れろ!」
「死体を盾にしろ!」
反転した反乱軍は正面と側面に回り込み、徐々に負傷者を増やしていく。
湿地の中でまともに身動きが取れなくなった私兵たちは矢から身を守るすべがない。
中にはまだ死んでいない兵士を盾にして進もうとする兵士もおり、人間の醜さと愚かさを体現したかのような状態であった。
「こんなはずじゃ……クソッタレ共が!! この玉無しのカマ野郎が!! 男らしく向かってこい!!」
私兵たちのその後は悲惨なものだった。
僅かに湿地を抜けた兵士は農民たちの繰り出す槍に集団で突かれ、逃げようとした者は背中を射られる。
泥沼に膝をつきながら叫ぶ兵士もいたが、それらは反乱軍の戦果の1つとなった。
敗走を始めた私兵たちを見ながら、フェーデは次の指示を下した。
「総員突撃! このまま押し切るぞ!」
馬上で長剣を抜き放ち、フェーデを先頭に敵に向かって突撃を敢行する反乱軍……
それに対し私兵達も前に出て応戦する。
「みて下さいフェーデ様! 奴等敗走する兵士が間に挟まって混乱してますよ!」
隣で一緒に突撃するベニートが言う通り、私兵たちは混乱していた。
逃げる兵士と突撃する兵士、それらが混ざり混乱を呼んでいるのだ。
「勝ちは頂くぞ! 私に続け! 勇気ある者達よ!!」
この戦いは日が暮れる前に終結した。
フェーデ率いる反乱軍の死者は約50名、私兵たちはおよそ半数が死亡、その他20数名が捕虜となった。




