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第25話

 翌日の早朝、貴族達がそれぞれの所領に戻った後、サロモンとイサベルは城の庭で相変わらず訓練を繰り返していた。


 変わったことと言えば、サロモンが手にしている武器が刃の付いた実戦用のものになったことだろう。


「大分よくなってきたな。相手が新兵くらいなら互角以上にたたかえるだろうさ」


 サロモンは手にした剣で軽口を叩きながら振るわれる大鎌をいなしていた。


 だが軽口を叩きながらも、サロモンの視線は昨日よりも鋭い。

 

 イサベルが上達してきたことも関係しているのだろう。


「よし、休憩といこうか。なかなか教え甲斐のある女だ」


「はぁ……はぁ……」


 荒い息を吐いているイサベルに水の入った革袋を渡しながら適当な丸太に腰掛けるサロモン。


 その姿はどこか農作業を終えた後の村の男衆に似ている。


 ──意外と普段から鍛えてるんだ……この男。


 イサベルがサロモンと関わり暫く経つ、それから毎日欠かさずサロモンは剣の鍛錬に勤しんでいる。


 この事実はイサベルからしてみれば意外だった。


 てっきり民から巻き上げた財を用いて想像すらできないような贅沢をしているものと思っていたから。


 豪華なものは食事だけ、城に仕える兵士達が食べている物も農民とさほど変わりはない。


 だがどう考えても消費量よりも備蓄している量の方が多いはずなのだが……それらは何処に行ったのか?


 そんなことを考えながらサロモンの方を見ていると、なにやら慌てて駆け寄って来る兵士の姿が目に入った。


 サロモンに耳打ちしている。


「……ほう。まぁ別に捨て置いて構わんだろう。放っておけ」


 報告を受けた兵士は『信じられない』とでも言わんばかりの表情をしていたが、構わずサロモンは手を振って下がらせた。


「一体何の報告ですか?」


 気になったイサベルも問いを投げてみることにした。


 どうせ答えてくれないと思っていたが、意外なことにサロモンはすんなりと教えてくれた。


「東で農民共が反乱を起こしたそうだ。そしてその先頭に立っていた人間は、青い瞳と白髪交じりの黒髪の老騎士……まぁ間違いなくフェーデだな」


 ──フレデリーコ様!


「お前の『それ』の持ち主だよ」


 そう言ってサロモンはイサベルの腰に差したままの短剣を顎で示す。


「……知っていたのですか」


「柄頭に埋め込んだ琥珀、そんな物を持っていて、しかも人に渡すような騎士など奴以外にいない。そして奴は今東に居る。さて、これからどんな動きを見せるんだろうな?」


「…………」






 その頃、トレア王国の東部。


 フェーデ達は農民、現地の傭兵、そしてイェルモ騎士団達と共にその場所を治める貴族の城へと攻め入った。


 攻められることを想定していない豪華なだけの白亜の城、貴族が護衛と共に出かけた瞬間を見計らって攻めれば簡単に落ちた。


 現在は城の中、倉庫を漁り使える武器や物資を回収している。


「信じられねぇ。本当に俺達が貴族の城を……」


 フェーデ達に協力した農民たちが槍を手に城の中で歓喜の声を上げる。


 自分たちは勝った、搾取していた支配者に。


 その事実だけで生きていけるような、そんな気さえしている。


 だが喜んでばかりもいられない。


「武器と食料を略奪したら次に移る! それと我々の勝利をトレア中に広めるんだ!」


 フェーデが号令をかけると、全員仕事に戻る。


 そしてフェーデ自身は城の中に転がる死体に視線を向けた。


 城を守ろうとしていた兵士、攻め入った農民達、イェルモ騎士団の人間も僅かにいる。


 ──全員、このトレアの国民だ。守る守られるの違いはあるが……


 フェーデが選択したことの結果がこの惨劇を招いた。


 だが今は後悔している暇はない、それに放っておけば今後サロモンの手によって数えきれないほどの民が死ぬことになる。


「元教師としてもいち騎士としても許せん。泥水をすすってでも必ず討ち取ってやる」


 青の瞳に殺気を込めながら、フェーデは歩き出した。


 

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