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第17話

 夜のトレア城。


 そこではサロモンが部屋の中から外の景色を眺めていた。


 日中は布を被せてある窓も夜となれば話しは別、取り払って景色を眺めるのがサロモンの趣味だ。


 空に輝く星と、頬を撫でる夜風に当たりながら椅子に腰掛け、机に置いてある瓶から葡萄酒を杯に注ぎ飲む。


 そうして気分よく飲んでいたサロモンだったが、後ろに人の気配がして腰の剣に手を伸ばす。


「サロモン様、ここにおいででしたか」


 サロモンが声のする方に顔を向けると、そこに居たのはダニエルの姿。


 金色の髪を夜風に揺らしながら静かに立っていた。


「ダニエルか。指示通りにやっているか?」


「はい、ご命令の通りに」


 フェーデ達が反乱を起こしたあと、サロモンはダニエルとその他大勢の騎士達にあることを命令していた。


 農民達の所有する鉄製の物を回収させる、そしてそれが駄目ならば娘を差し出せというもの。


 恐らくは農民達の力を削ぐ為だろう。


「鉄も娘も居ない村や都市は住民の首を適当にはねておけ。見せしめだ」


「承知しました」


 恭しく礼をするダニエルに、サロモンは杯を差し出した。


「お前も飲むか?」


「頂きます」


 ダニエルはサロモンの杯を受け取り、中身を一息に飲み干す。


 そして飲み干してダニエルは気がついた。


 ──なんだこの酒は?


 不味いのだ。


 とても一国の王が飲む酒とは思えないほどに不味い酒。


 水で薄められているのか味は薄く、雑味があり酒精も弱い。


「美味いか?」


 サロモンは微笑を浮かべながらそう問うてきたが、ダニエルからすればとても美味いとは言えない酒。


 だが美味いと言わねば何をされるか分からない。


「美味です」


「そうか、それは良かった」


 満足そうに頷いたサロモンはダニエルを一瞥したあと、再び外の景色を眺めだした。


 ダニエルからは一切表情が見えない。


「……サロモン様、1つお尋ねしても?」


「なんだダニエル?」


 一切顔を向けることなく、サロモンはダニエルの問いを聞く。


「なぜフェーデに対して甘いのですか? 奴は反乱まで起こした逆賊です。徹底的に潰さねば次また反乱を起こさないとも限りません」


「十分だろう? セルバの騎士は壊滅して敗走した」


「ですが奴の死体は確認されていません。あれがそう簡単に諦めるとも思えませんし、奴からすれば後がない。何をしてくるか分かりません」


 ダニエルの答えにサロモンは部屋に響き渡るほどの声量で笑った。


「なんだ、ずいぶんとお前はフェーデを評価しているのだな。はっはっは! 傑作だ!」


 サロモンはひとしきり笑ったあと、ダニエルのほうに向き直る。


「今日は疲れただろう? もう休むといい」


「いえ、私は……」


「休め」


 サロモンは笑顔だったが有無を言わせない迫力があった。


 恐らく問いに答えたくないだけで、ダニエルを労うつもりは欠片も無いはずだ。


 結局、ダニエルは何も聞き出すことが出来なかった。


 杯を机に置いたあと、すごすごと立ち去るしかできない。


「失礼いたします。何かありましたらお呼び下さい」


「ああ、そうするさ」


 ダニエルが立ち去ったのを確認したサロモンは置かれた杯と瓶を窓から放り投げ、机の下から別の酒が入った瓶を取り出す。


 中に入った葡萄酒も先程とは比べ物にならないほどの美酒。


「ダニエル、お前ごときに俺の考えが分かってなるものか」


 サロモンは杯に注ぐこともなく豪快に呷った。


 まるで鬱憤を晴らすかのように。






 すごすごと帰るダニエルだったが、なにやら城門の方が騒がしい。


 恐らく何処か農民が鉄を持ってきたのだろう。


「早速持ってきたか」


 折角だから農民共の悔しそうな表情でも見てやろうと思い城門へと歩いて行くが……


 なにやら違うようだ、兵士達が興奮をしているように思える。


「なんだ?」


 城門まで来たダニエルが目にしたのは守衛の兵士に囲まれる1人の女の影。


 松明に照らされたその女はとても美しい。


 栗色の髪と小麦色の肌、整った顔立ちに思わず見惚れそうになる。


「おおダニエル様、この女どうやら身代わりに来たみたいですぜ。なかなかいい女だと思いませんか?」


 守衛の兵士が全員鼻の下を伸ばしているのだけは分かった。


「たしかに良い女だ。サロモン王もさぞお喜びになるだろう。お前、名前は?」


「イサベルです」


 毅然とした態度で答えるイサベル。


 彼女の左の腕にはフェーデから借りた短剣が剥き身の状態で縛り付けてある。


 袖で隠して、油断しているサロモンの腹に突き刺してやるつもりだ。


 目の前にいるダニエルも父親の仇、同じようにしてやりたいと思っているが。


「メリョス村の娘だな。俺が確か父親を切り捨てた。どうだ? 俺を恨んでいるか?」


 イサベルの顔を知っているダニエルはここぞとばかりにイサベルを煽る。


 目の前の女が抵抗などしてくるわけもないと分かっての言動。


 実に楽しそうなダニエルとは裏腹にイサベルは悔しさと怒りの入り混じった表情を浮べておりそれがダニエルにはたまらない。


 実に嗜虐心をかきたてられる。


 さてイサベルはどんな返答をしてくれるのか?


 ダニエルは頭の中でそんなことを考えていたが……


「……致し方ない事であろうと思っています」


「ほう? 自分の親を殺されてそれが言えるとはたいした女だ。いい悪党になれるぞ」


「……お褒めに預かり光栄です」


 イサベルの表情からそれが本心でないことは分りきっていたがその言葉を言わせたことに快感を覚える。


 それがダニエルだ。


 そして次は……


「さてお前をサロモン王の所に連れて行くが……その前に1つ」


「なんでしょう?」


「服を脱いで裸になれ」

 

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