第15話
メリョス村に村人が戻りそれぞれの村人が元の日常に戻った後、イサベルは村の近くにある森に隠れているセルバ騎士団の残党と合流、負傷した騎士達の傷の手当てを行っていた。
「ありがたい。感謝します。イサベル嬢」
倒れた木は椅子の変わりに、木漏れ日の下でイサベルは腕を奮った。
しかしイサベルも所詮は素人、つたない技だったろう。
だが騎士たちは口々に彼女へ礼を言っていく。
反逆者で敗残兵の自分たちをこうまで丁寧に治療してくれるとは思ってもみなかったからだ。
ひたむきにがんばる姿を隣で見ていたフェーデも彼女を称賛した。
「見事な手際だね。君はきっといい医者になれる」
「ありがとうございます。フレデリーコ様」
頬に付いた血を手で拭うイサベル。
今手当した騎士が最後の負傷者で、イサベルの周囲は木に身体を預けて座っていたり、そのまま地面に雑魚寝している騎士達で埋め尽くされている。
なかには腹を裂かれて腸がはみ出していた騎士もいた、無論イサベルも手当をして元に戻したがおそらく彼は助からないだろう。
「……」
改めてその光景を見て、イサベルは言葉を失った。
時折あがるうめき声や仲間の名前を耳元で呼ぶ騎士達の姿は見るに堪えない。
表情が曇るイサベルを見てフェーデもいたたまれなくなった。
「すまない、こんな所を見せてしまって」
「謝ることは何もありません。皆さんは英雄です。誰がなんと言おうと、国民のために立ち上がり戦ってくれた。何か他にできることがあればおっしゃって下さい。お手伝いいたします」
「ありがとう。でも君はもう家に戻るんだ。我々とこれ以上関わると君も危険だ」
フェーデはそう言ってイサベルを帰らせようとした。
実際危険だ、サロモン達追撃の手が迫ってきているはず。
フェーデも負傷者の手当が終わった今、即座に動こうとしていた。
「我々はこれから各地に散らばり同志を募る。君とまたいつか会う日が来ることを祈っているよ」
「はい……」
短く答えたイサベルは少し残念そうだった。
だが今の彼女に手伝えることはほとんどないし、致し方ない。
「行くぞ諸君。まだ終わってはいない」
土を踏み固めただけの道を2騎の馬が行く。
乗っているのはフェーデとベニート、他の騎士たちは3人1組になって各地に散らばっていった。
彼らはフェーデが作成した書状を持って貴族達や大都市の権力者、馴染みのある騎士団へと向かって行った。
仲間を増やす、その目的の為に。
「そうだベニート、グスタボはどうなった? 生きているのか?」
馬を走らせながら、フェーデは一緒に付いてきていたベニートに話しかけた。
グスタボ……トレア城に攻撃する前、最後の晩餐を共にしたあの騎士のことが気になったからだ。
結婚を前にしているのだ、できれば生きていてほしい。
そう願っていたがベニートが出した答えは言葉ではなく懐から出した『物』だ。
血が付着した首飾り……女性の髪が編み込まれたそれは間違いなくグスタボの所持していたもの。
「これだけしか持ち帰れませんでした」
「そうか……」
グスタボはやはり死んでいた。
「奴のためにも、仇は討たなければ」
「当たり前です。強者に対しては常に勇ましく、また──」
「裏切ることなく、か? ベニート、お前に言われずとも分かっているさ」
死んでいった仲間、国民の期待、それらを裏切ることはできない。
それにイサベルとの誓いもある。
彼女の為にも必ずやサロモンを倒し、国を救済する。
そのためにも今は仲間を集めなければ。
「まずは北東のベルトラン卿だ。こちらに引き入れるぞ」
「ええ勿論、参りましょう」




