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第11話

「サロモン様! 来ましたフェーデの騎士団です!」


 慌てて部屋に入ってきたダニエルがそう告げる。

 

 トレア城の中では松明がかかった明るい部屋の中でサロモンが優雅に杯を傾けている最中だった。


「手筈通りにやるぞ。ダニエル、お前はマヌエルに伝えたあと所定の位置につけ」


「はい! 御武運を!」


 来たとき同様ダニエルは帰る時もあわただしい。


 躓きそうになったダニエルを笑いながら、サロモンは杯に残った最後の一口を胃に流し込む。


 ──さて、お手並み拝見だ『先生』一国の王相手に一体どんな手を打ったのか見せてみろ。



 



「サロモン王に死を!!」

 

 夜の闇の中から抜剣した騎士達が馬蹄の音を轟かせトレア城へと迫る。


 フェーデを先頭に、他の騎士達がまるで矢のような陣形を展開しながら続く。


「サロモンめ、城の中庭と前に兵士を密集させてる。それほど己の命が惜しいか」


「赤地に黒の剣の旗……ティント騎士団か!」


 フェーデの後ろで騎士達が口々にそう言ってきた。


 そして彼等の言うことはまさしくその通りで、トレア城の前には大量の兵士が密集している。


 翻る旗はトレア王国の物と赤地の旗、暗闇に光る無数の松明の光はまるで星々の如く。


 憎き敵が眼前に迫る。


「両翼に敵影なし!」


「このままの勢いで城に飛び込むぞ! 私に続け! セルバの騎士達よ!」


 城の周囲は畑と背の低い草が茂る緑の草原、伏兵を忍ばせる場所は何処にもない。


 セルバ騎士団の騎士達に不安はない。


 我等が構成する鋒矢陣形は必ずやサロモンの命をも貫くだろう。


 誰もがそう思っていた。


「ん?」


 トレア城に近づくにつれ、フェーデは気が付いた。


 これは罠だと。


「側面に警戒しろ!」


「え?」


 叫んだ時には遅かった。


「総員突撃!!」


 鳴り響く銅鑼の音と共に、フェーデ達の両側面から槍を構えた歩兵達が草原、畑から草を背に乗せ起き上がり猛進してきたのである。


「くそ! 突っ切るぞ!」


「正面も動きました! サロモンもいます!」


 馬の腹を蹴りながらフェーデは前を向く。


 正面に見えて来るのは鶴翼陣形をとりながら馬を駆る一団。


 そしてその一団の中心にいる人物に、フェーデは目を奪われる。


 ──サロモン!


 馬に跨りフェーデ達のもとへと駆けながら濃褐色の髪を夜風になびかせ、装飾の付いた長剣を高く掲げるサロモン。


 彼が今、剣を振り下ろし、告げる。


「裏切り者に死を!!」


 そこからのセルバ騎士団は無惨なものであった。


「後ろがやられました!」


 フェーデの後ろを付いてきていた騎士たちは両側面からの攻撃に耐えられず1人、また1人と槍で突かれ倒れていく。


 落ちた松明の火が草に付いて燃え上がり、徐々に周囲が明るく変貌する。


「後方の守りも己の安全も一切捨ててこっちに来たのかッ! しかも騎士を馬から降ろすなど」


「そのお陰で我々は包囲されていますよ! おのれ!!」


 抵抗するセルバの騎士達、だが片方の敵に集中すればもう片方から槍を構えた兵士に貫かれる。


 そして後方に居た騎士はもっと悲惨だ。


 左右両側に加え、後方からも攻撃を加えられ押されに押される。


「くそ! サロモンはどこだ!? アイツさえ討ちとれれば!」 


「後ろだッ!」


 周囲に視線を動かすフェーデに仲間の騎士が叫ぶ。


 そして振り返った先には……


「ぐうっ……サロモン!!」


 剣を振りかぶったサロモンがフェーデ目掛けて突っ込んできたのだ。


 フェーデは避けようとしたが首と肩の間を斬られた。


「闇に紛れて俺を討とうとするとはお前らしくないなフェーデ、騎士をやめて他の仕事に転職したのか?」


「ほざけ!!」


 ここでセルバ騎士団のフェーデと王であるサロモン、それぞれの大将同士の交戦が始まった。


 傷口から血を流しながら戦うフェーデがやや押され気味で、加えてサロモンにはまだまだ余裕があるように見えた。


「久しぶりに斬り合ったら何ともまぁみすぼらしい剣になったなフェーデ。老いとはやはり害悪だ」


「黙れサロモン! 口を永遠に閉ざせ!」


 力任せに振るわれたフェーデの剣、だがそれはサロモンに触れることは無かった。


 紙一重でことも無く躱したサロモンは返す刃でフェーデの首を狙って迫る。


 受けた剣が火花を散らす、草原に燃え移った炎が全てを飲み込む勢いで燃え盛る。


 怒りのままに剣を振るうフェーデと、冷静に剣を捌くサロモンの熱も上がる。


「サロモンの首を討ちとれ! フェーデ様を救うんだ!」


 そんな時だった、ベニート率いる後方に展開していた部隊が合流しサロモン達と交戦。


 トレア城の前は混戦の様相を呈し始めた。


「おっと、そろそろいかんな」


 何度斬り結んだか数えるのも億劫になってきた時、周囲を炎で囲まれていることにサロモンは気が付いた。


 急いでフェーデの剣を弾いたあと、サロモンは馬を走らせ炎の無い場所へと移動し始める。


「待てサロモン! 決着はまだついていないぞ!」


 態勢を直しサロモンを追いかけようとするフェーデを仲間が止めた。


「退きましょうフェーデ様! 我々の敗北です!」


「ふざけるな! まだ奴が!」


「周りを見てください! もう戦闘の継続は出来ない!」


 そう言われて周囲を見てみれば見えてくるのは主を失った馬、折れた槍が刺さったまま転がっている味方の死体、炎の中で焼かれるのみとなった死体の数々……


「おのれ! おのれェッ!!」


「撤退! 総員撤退! 一旦退き体制を立て直す!」


 もうすっかり見えなくなってしまったサロモンに向けて咆哮するフェーデ。


 撤退を始めたセルバ騎士団だったが、彼らの数は三分の一以下に数を減らしていた。


 

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