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79/81

#79 きゅんっ

 この物語のテーマはジェンダーです。


 物語の進行上の表現、オタク的表現があることをご了承の上、もし配慮が足りていないと感じる箇所がございましたらご指摘お願いいたします。

 必要性のご説明や表現の修正を行わせていただきます。


 また、一部過激な描写を含みます。


 食事をテーブルに並べるとソアラとステルヴィオを呼んだ。

 席はどうしようかとも思ったけど、ソアラがアルカナに恐怖心を持ってないみたいだったから、近めの1席空けた場所になった。

 アルカナはちゃんと食べ進めながらもソアラをガン見している。

 そんな見られたら食べにくいでしょうが。


「美味しいです」

「お口に合ってよかったのですっ」


「……あの、訊いてもいいですか」


 ソアラにそう振られたアルカナは、愛しい者を見る目で応える。


「なんだ?」

「なんで……俺のことを?」

「うむ……。明確な理由はないな。「お前だ」と思った」

「……」

「ビビッと来たってことなんだぜ? 聞いたことあるぜそういうの」

「そうですよね。見た目なわけないですよね」

「私は好きだ。ソアラはアルビノだろう? 神秘的だ」


 アルビノ⁉ だから目に太陽光が入りにくいように前髪伸ばしてるのか!

 二次元には白髪なんて当たり前……寧ろ多いくらいだから気にしてなかった!

 これもし4代目が生まれたら白髪の魔王になるんじゃ……? 白髪のイケメン見たぁああい!!


「……ありがとうございます」


 ソアラの耳が赤くなってる。

 何この子可愛い。


 いくらここが異世界でも白髪の子どもは見たことがない。学校で嫌な目に遭ったりしてなかったかな……。自然界でも人間の間でも目立つものは標的にされやすい。


「何日でもいていい。私のことを考えてくれ」

「……は、はい……」


 なんというアプローチ……イケメンか。

 アルカナって好きな相手にはこんな感じになるんだ……。


 っていうかこれはもう、脈ありじゃん……。

 放っておいても魔物がざわ付いたりしなさそうだ。

 魔王のビビビは百発百中なの?


 翌日、アルカナはソアラに城を案内した。

 暇だし妖精の姿でこっそり様子を窺う。

 生まれた直後の動物的な言動がなくなってすっかり大人の対応になってる。それになんだかほわほわした空気を醸し出している。

 リオ由来の隔世遺伝に私までほわるわ。

 服で見えないけど一緒に歩いてるだけで嬉しくて尻尾振ってそうだ。




 数日滞在したソアラは朝食の時に改まって発言した。


「あの……ここに両親を呼んでもいいでしょうか」


 え……それって、紹介するってこと⁉

 ちゃんとした子だな……いや世間では普通か。

 魔王城に親呼ぶってなかなかとんでもないことだけど。


「構わんが……?」

「じゃあ今日家に帰ります」

「……そうか」


 勇者は通信魔石使えないからな。

 念話でフォローしとこう。


〔アルカナ、ソアラがどういう紹介の仕方をするかは分かんないけど、親への紹介って大体前向きなことなのよ〕

〔それは……もしや〕

〔親が反対するかもだからあんまり期待しないほうがいいと思うけど。少なくともソアラは段階を踏もうとしてるのよ〕

〔段階……そうか……〕


 アルカナの周囲にほわほわとした花が飛び始めた。イメージだけど。

 恋したアルカナは可愛いな。


 アルカナが魔王城から離れられないから来てもらうしかないんだけど、ソアラはなんて説明して連れてくるんだろ……。




 1か月程して、ソアラが両親を連れて戻ってきた。

 いきなり魔王と対面というのも驚かせるし恐怖されたら厄介なので、シエラが案内役をする。勇者相手に毎回やってるから慣れたものだ。

 今回はアルカナが礼を尽くしたいだろうから、ひとつ約束をさせる。


「魔王のアルカナさんの容姿については他言無用でお願いいたします」

「は、はぁ……」


 食堂に着くとアルカナはいつもの席の隣で立って待っていた。両親の様子を見ると、耐え切れずテーブルに手を付く。

 息が少し上がっている。

 恐怖してるのは母親だけみたいだ。父親はカヴァーリの実験対象者の子孫かな。だからソアラはアルカナに恐怖心がなかったんだ。


「……ご存知かと思いますが、魔王さんは人の恐怖心を感じ取ると身体が熱を持ってしまいます。怖がらないことは難しいと理解していますが、アルカナさんはあなた方に危害を加えたりしませんので安心してください。お飲み物をお持ちしますね」


 ソアラが両親に座るよう促し、自分はアルカナの傍に行った。


「……大丈夫ですか?」

「うむ……。人の恐怖心には慣れていなくてな……大丈夫だ。……ありがとう」


 じわじわとソアラの耳が赤くなる。

 学生には刺激が強いのかな。


「父さん、母さん。俺……魔王の、アルカナさんの支えになってあげたいんだ」

「ソアラ……」


 訪れた沈黙を破ったのは、混乱が隠せていない父親だった。


「お前が決めたことなら、父さんは口出ししない……が、母さん……」

「ちょっと待ってそれじゃ私たちの孫は次の魔王ってことなんじゃないの……⁉」

「……気が早いよ」


 気のせいだろうか。ソアラの声のトーンが落ちたような。


「残念ながら……孫の成長を見ることはできない。魔王は生まれた時から成人した姿だ。それに、普通の人間は魔素の濃いアバルト領内に長くいれば寿命が短くなる。この城にはあまり来ないほうがいい」

「寿命……⁉」

「ソアラは勇者のマナがあるから影響はない。だがもし4代目が生まれれば勇者の紋章は消え、普通の人間になる。ソアラの意思にもよるが……」

「俺はここに住むつもりですよ」


 表情にあんまり変化はないけど、アルカナの胸から「きゅんっ」て聞こえた。

 ソアラとそういう話ししてないのかな。大分進んでると思ってたんだけど……。


「……反対したって聞かないじゃない……、あなた頑固なんだから」

「魔王というともっと……尊大なイメージだったけど、全然悪い人には見えないな」

「俺も逢って間もないけど良い人だと感じた」

「何より美人だ」

「ちょっとあなた?」

「……そうだね」


 照れたように声が小さくなったソアラにアルカナがほわり出す。可愛いな。

 お茶した後、両親は早々に帰途についた。


「それで、あの……4代目については、その……まだ先でもいいですか」

「うむ。ソアラの答えが出るまでいつまでも待つ」

「ありがとうございます……。ステルヴィオはどうする? 魔素が多いから居心地悪いって言ってたけど」

「城の外に行ってもやることないんだぜ。妖精の森に戻るより退屈しなさそうだから一緒にいるぜ」

「そっか、よかった」

「でもいつまでソアラと一緒にいられるんだぜ?」

「勇者のマナを魔素に変換して4代目が形成される。一般人以下のマナ量になると血の契約が切れる。数日で森へ帰らねば妖精は生きられん」

「じゃあ4代目が生まれるまでなんだぜ。ゆっくりでいいぜソアラ!」

「うん、そのつもりだ」




 それから3年くらい経った頃、アルカナから恋愛相談をされた。


「ソアラに触れたい……」


 え⁉ 今までずっと我慢してたの⁉ あのアルカナが⁉

 ソアラからもアクションがないってことか……清過ぎでしょ⁉


「ソアラはどんどん成長して更に魅力が増していく……背も私を越してしまった」


 一番の成長期である高校の3年間を一緒に過ごしたってことだもんね。

 歳の割りに低いほうだったソアラはめちゃくちゃ背が伸びた。成長痛に悩まされてたみたいだけどアルカナがヒールで緩和させていた。

 確かに可愛い印象だったのに格好良くなったと思う。声変わりは既に済んでたから変わらないけど、幾分低めになった気がする。


「あたしたちに言ってもしょうがないんだわ。ソアラにそう言えばいいんだわ」


 簡単に言うな。


「もしそう伝えたら……嫌われはしないだろうか? ソアラも触れられるのが嫌いな人間だったらと思うと、怖い……」


 か、可愛いぃいいぃ!!

 悩んでるアルカナには悪いけど! 乙女過ぎる!!


「では先にそのことを確認してみましょう。いきなり「触れたい」なんて言われたらびっくりしちゃいますから。心の準備ができてないだけで拒否することもあります。自分の心を守る為にもある程度予防線を先に引いておくのです!」

「うむ、予防線か……」

「ソアラさんにはソアラさんなりのお考えがあると思うのです。アルカナさんを大事に想っているのは見ていれば分かります。自信を持ってくださいっ」

「……うむ。話してくる……」


 暫くして私たちはまた招集された。


「来週まで返事を保留にされたんだが……どういうことだと思う?」


 いや分からんわ!!


「来週何かあるんでしょうか……?」

「サプライズ的な何かなんだわ? 来週なんてすぐだからとりあえず待ってみるんだわ」




 そして数日後、ソアラのサプライズ計画が始まった。

 朝食後にアルカナを中庭に呼び出すところから始まる。

 もちろん私たちもこっそり様子を窺う。

 廊下の暗がりと相反して中庭は朝の光がたっぷり降り注いでいて、まるで映画を見ている気分だ。


「返事、保留にして済みませんでした。不安にさせてしまいましたか?」

「……まぁ、そうだ。みなに話しを聞いてもらって少しは心を落ち着けられたが、気になって仕方なかった……」

「済みません。どうしても、今日伝えたくて」

「……今日?」

「俺、今日で18歳になったんです」

「18……?」


 18歳……ってことは⁉


「俺と、結婚してくれませんか」


 プロポーズしたぁああぁあ!!

 こんなちゃんとしたの目の前で初めて見たわ⁉

 しかも跪いて指輪まで用意してるし⁉


「……私に、戸籍など……」

「法の下じゃなくてもいいんです。ただ、「はい」とだけ言ってくれたら俺は嬉しいです」

「……はい」

「……よかった」


 感極まってアルカナ泣いちゃった……何この尊い空間。

 懐から出したハンカチで拭ってあげるソアラ。そして目を閉じたのを見計らって、キスをした。

 こ……この子やりおるぅうう⁉


「……ソアラ」

「……俺、15歳で不老不死になりたくなかったんです。待たせてしまいましたが、契約させてください」

「……」


 身体の成長を待ってたってことか。確かに4代目が生まれるまで未成熟な身体で関係を持ち続けたくない気持ちは分からなくもない。

 今まで黙ってたのはプライドか何かだろうか。身長にコンプレックスがあったのかもしれない。


 ソアラはアリリフと同じ方法で契約した……。

 セカンドキスからみんな押せ押せ過ぎじゃない? 私が奥手なだけなの……?


 契約紋が二の腕に浮かび上がる。


「今夜……部屋に行ってもいいですか」


 新婚初夜……!

 昨日まで未成年だったとはいえ段階踏みまくるじゃん。今時ここまで徹底してる人なんていないよ。絶滅危惧種じゃないの。


 何はともあれサプライズ大成功ってことで。あとはふたりに任せよう。

 解散解散。


 その日の夕食後、ソアラは改まって私たちに告げた。


「アルカナさんにマイナスの感情を持ってほしくないとは思っていますが、知っていてほしいことがあります。もし俺だけの言葉で足りないようなら、みなさんにもご協力をお願いしたいです」

Copyright(C)2024.鷹崎友柊

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活動報告にもSS載せてますので
覗いてみてください(´ω`*)。

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