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#60 恋バナ

 この物語のテーマはジェンダーです。


 物語の進行上の表現、オタク的表現があることをご了承の上、もし配慮が足りていないと感じる箇所がございましたらご指摘お願いいたします。

 必要性のご説明や表現の修正を行わせていただきます。


 また、一部過激な描写を含みます。


「舌使いとやらが上手いと嫌だからやめさせているのか?」


 待ってこの話し続くの⁉ 私の心臓が持たないんですけどでももっと聞きたい!!


「断じて嫌ではない。……性知識も教えていくつもりだが、簡単に言えば自制の為だ。リオを……、相手を思い遣ることを忘れてはいけない」

「人の気持ちも、自分はどうしたらいいのかって考えることも大事なんだ。アルカナは触ること以外でのコミュニケーション方法を学ばないとな」


 アルカナはなんていうか、動物的だ。アヴァンシアみたいに見た目が子犬みたいに可愛いと許してしまえるかもしれないけど、妖艶な女性がそういうことしちゃうと、ね、絵面がね……。

 まぁ見た目とか実年齢の幼さでセクハラを許すのもどうかと思うけど。


「それと、間違ったことをしたら謝らないとダメだぞ。してもらったことに対してお礼を言うのも大事なコミュニケーションだからな?」

「うむ。フィエスタ、やり過ぎそうになったらしい、悪い。リオには、礼を言う」

「うーん、まぁそれでいいか。どういたしまして」


 大分上から目線な言い方だけどちゃんとリオの教えに従ってるのは素直だな。根が悪い人じゃないのは分かってたけど。


「私も、言い方が悪かったかもしれないのよ。もっとちゃんと話しましょう」

「顔を覆うのはもういいのか? あれはなんだったんだ?」

「心を鎮めてただけなのよ……気にしないで」


「自己紹介が遅れたわ。私はノア・フィールダー。お兄ちゃんの妹よ」

「兄妹か……確かに似ている。金髪はキザシとか言ったか」

「俺らあんまベタベタ触られんの好きじゃねぇから、覚えとけ」

「そうなのか。覚えていよう」


 真正面からそういうの言えるのキザシの凄いとこだよな……。

 ノアもキザシも、「意外に素直なやつだ」と思ったような、ちょっと面食らった顔になっていた。


「僕はルーミー・ベルタ、です」

「猫の獣人か……お前も触れられるのは嫌いか?」

「み……あんまり好きじゃないです」

「やはり、みなそうなんだな……」

「あたしはすきだよ?」


 アヴァンシアだけがアルカナに近寄ってきた。アヴァンシアは犬感強い狼だし、撫でられるの好きな子だ。


「アリストさままおーさまじゃなくなっちゃったから、あたしは狼にもどっちゃうけど、よろしくね。アヴァンシアだよ」

「狼……触れてもいいか? 舐めるのは?」

「人のすがたでなめられるのはイヤだなぁ。狼のすがたならいいよ」


 アヴァンシアが姿を変えると、アルカナは毛並みを撫で抱き締めたり頬擦りしたりした。嫌がるどころかアヴァンシアの尻尾は揺れている。一緒にアルカナの尻尾も揺れている。可愛いな。

 頬の辺りをひと舐めすると、行為は終わった。


「毛を舐めるのは抵抗があるな……何か、もぞっとする」


 もぞ?

 動物に育てられた人が自分が人間だと知ったみたいな感覚? 人間の舌は毛繕いに向いてないってことかな?

 アヴァンシアは人の姿に戻った。


「あたしも狼のすがたなら人をなめるの平気だけど、人のすがただとしたくないって思う。ふしぎ」

「……狼に戻ったらまた触れてもいいか」

「うん、いいよ!」


 リオはお昼を作りに行って、初代とアルカナも厨房についていった。初代はリオにちょっかい出されないように見張りかな……。

 食堂のテーブルに昼食が並んだ頃、リヴィナだけが転移で戻ってきた。


「アリストとリーフのところへはわたくしが運びますわ。それとシエラの体調があまりよろしくありませんの。わたくしの部屋で休んでいるのでそちらで一緒にいただきますわ」

「そうか……心配だな。何か食べたいものがあるなら作るから、シエラに伝えておいてくれ」

「分かりましたわ」


「リヴィナ……私もついてっちゃダメなのよ……?」

「あら犬耳。契約は済ませましたのね。フィエスタでしたら大丈夫でしょう」


 意味あり気な言い回しでリオは不思議そうな顔をしたけど、深く訊くことはなかった。

 私たちはお昼を持って転移し、先代の私室と同じく普通のドアをリヴィナが叩く。


「昼食を持って参りましたわ」


 暫くしてリーフが顔を出した。


「リヴィナさん、あざっす」

「もう不老不死ではないのですから、アリストにも食べさせてあげてくださいまし」

「あ……そうっすね。分かりました――ってフィエスタさん⁉ またでっかくなってるし、犬耳⁉」

「そうなのよ。さっきアルカナと契約したのよ。森に帰りたくないから」

「そうなんすね……。でも別れが先延ばしになるのは嬉しいことっす」


 お昼を渡すと次はリヴィナの私室へ転移した。

 自分の部屋なのにノックをしてから入る。


「お腹が空きましたでしょう? 昼食にいたしましょう。リオには体調不良と伝えましたので何か食べたいものがあれば作ってくださるそうですわ」

「済みません、リヴィナさん……」


 目を温めていたのか、タオルを外したシエラは視線を落としたままながらも応えた。

 まだ腫れてる……。


「シエラ、私アルカナと契約したのよ」

「――っ! 耳……」


 ようやく顔が上がったシエラが私を見る。

 この驚きは名前を呼べていることに対してかな。いくら恋をしても、シエラに魔王の名前は呼べない。


「お昼、食べるのよ。お腹空いてちゃ碌な考えにならないのよ」

「いえ……食欲が、出なくて……」

「……コーヒーだけでも、どうぞなのよ」

「……いただきます」


 シエラはひと口含んだだけに留め、腕を膝に落としてしまった。

 もしかして初めて逢った時、元相方に失恋した直後だったから空腹だったの……? 食べものが喉を通らないくらい思い詰めちゃう子なんだ……。


「……契約したいって言ったら最初断られたのよ」


 シエラは特に反応を見せなかったけど私は続けた。


「生き長らえる為っていう個人的な願いじゃ嫌だったみたい。自分を愛してくれる人を傍に置きたいって言ってたのよ」

「……」

「逢ったばかりでお互いよく知らないから、契約してから知っていくことになったのよ。私がアルカナを嫌いになったと判断したら契約破棄して死に至らせるって脅されちゃったけど、きっと不器用なのよ。愛されたい、嫌われたくないって想いが強いんじゃないかな。とりあえず今、嫌われない為にどういうことをしちゃいけないのか、リオたちが教えてるのよ」


 まだアルカナのことを何も知らないシエラに少しでも伝わったかな……。


「誰彼構わず可愛いと褒めていたのは愛を返してほしかったのかもしれませんわね……確かに不器用ですわ。少し冷たく接し過ぎましたわね……」

「はっきり嫌だと伝えたらやめてくれるみたいなのよ。キザシにも触れないって言ってたのよ」

「……それはひと安心ですわ」

「ずっと訊いてみたかったんだけど、リヴィナはいつからキザシを意識し始めたのよ? ここで再会した時はそういう感じにはまったく見えなかったのよ」

「あの時は……陰陽術の弟子として……、この話し、キザシには黙っていてもらえませんこと?」

「え? うん、分かったのよ」

「リヴィナさんは……初代さんのことがお好きだと聞いていたのです」


 シエラが会話に乗ってきた。これは良い傾向だ。


「え? 誰からですの?」

「……キザシさんなのです」

「……本当にあの人は察する能力に長けていますわ……。今思えば何度かゼスト様前提で話していましたわね……。わたくしは、キザシに陰陽術を教えてる時点で惹かれていたのかもしれないと思っていますの」


 実は両片想いだったってことか……!

 甘酸っぱい修行時代だな!


「ある日突然逢えなくなってとても心配しましたわ……その後姿を見せたキザシは、かつてのわたくしのような、なんの望みも持っていないような顔をしていて……。何かあったのは明白なのに、追求はできませんでしたわ……。懐刀を渡し、どう使うかはキザシに任せましたの」


 あの懐刀は形見とかじゃなくて、本当にお守りのような、大切なものだったのね。

 懐刀を見つめるキザシの優しい目は、リヴィナに向けられたものだったんだ。


「キザシとはそれきりになって、それでも片時も忘れたことはありませんでした。別れが別れでしたし、キザシが何をどう選択したのか気掛かりだったのでしょう……」

「リヴィナの存在があったからきっとキザシの心は折れなかったのよ」

「……わたくしは一番つらい時に手を差し伸べてあげられませんでした。そう思ってもらえていたなら、嬉しいことですわね……」


 キザシはリヴィナには全部話したと言っていた。

 多分、一番近くにいたのに助けてあげられなかったこと、リヴィナは後悔しただろう。

 キザシが実際にどういう目に遭っていたのか詳しくは知らないけど、その最中(さなか)にリヴィナに逢いに行っても何も言えなかった気持ちを察することくらいはできる。

 好きな人なら猶更、知られたくなかっただろう。


「……フィエスタはキザシの過去をご存知でしたの?」

「何も知らないのよ。でも、そういうことがあったんじゃないかって」

「……そうですのね」

「……キザシさんにもおつらい過去があったのですね。意外と言ったら失礼ですけど」

「周りにそう見せないように振る舞っているのですから、無理もありませんわ」


 シエラはまったく話しが見えないだろうに、本人のいないところで訊くべきじゃないと思ったんだろう。


「でもキザシに逢う前は、リヴィナは初代の傍でずっと片想いをしていたんでしょう? 初代はそういう目でリヴィナを全然見てなさそうだったし、つらくはなかったのよ……?」

「まったく、ですわね。傍に置いてもらえたことも、御髪(おぐし)を整えさせていただけたこともすべて幸せでしたもの。ゼスト様とどうにかなりたいとは思っていませんでしたから。キザシと別れた時のほうが、胸が痛くなりましたわ……」

「初代さんへの想いと、キザシさんへの想いは違うものだったということですか……?」

「まったく違うとは思いませんわ。けれど、……言葉にするのは難しいですわね……。想う相手が違うことで愛する形も変化したということかもしれませんわね」

「愛する形……ですか」


「シエラ、自分の気持ちに蓋をしないで。「感じた気持ちを大切にして」って、シエラが言ったのよ。どういう愛の形になるか分かってないかもしれないけど、アルカナにちゃんと今の気持ちを伝えてから、どうするか決めてほしいのよ。アルカナはきっとシエラとの契約を拒んだりしない」

 キザシの過去はep.11「キザシ独白」をお読みくださいませ。


Copyright(C)2024.鷹崎友柊

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活動報告にもSS載せてますので
覗いてみてください(´ω`*)。

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