#58 百合展開
この物語のテーマはジェンダーです。
物語の進行上の表現、オタク的表現があることをご了承の上、もし配慮が足りていないと感じる箇所がございましたらご指摘お願いいたします。
必要性のご説明や表現の修正を行わせていただきます。
また、一部過激な描写を含みます。
「セクシーなお姉さんが生まれた……⁉」
リーフは精神年齢DKのままね……。
まぁウェーブの掛かった黒髪ロングのみならず、リーフ似の豊満なバストでよりセクシーさに拍車を掛けてるから、DKには刺激が強いのか。
勇者側の特徴がどんどん反映されていってるけど、何回も繰り返していたらどうなるんだろ? そのうち魔王がマナを有する人間になったりするのかな?
まさかね。
「獣人……。これは次の勇者が来たら隠したほうがいいな……」
獣人の魔王なんて、人間の獣人への差別がもっと酷くなることは目に見えている。勇者が情報を持ち帰って広められでもしたら厄介だ。
今後について思案していると、当の本人がようやく口を開いた。
「お前が先代魔王か……ではそっちの犬の娘が母君か? 随分可愛らしい勇者だな。いやもう勇者ではないのか……」
「……っ!!」
肌蹴るギリギリの色っぽい3代目が四つん這いでリーフに近付くと、膝立ちになって両頬を掌で包み込む。
な、なんか百合展開でドキドキする……。
そんなことをされたリーフは仮にも自分の子ども相手に顔を真っ赤にして、言葉が出てこない。
「アルカナ、俺は魔王のお前であってもご機嫌取りなどしないぞ。リーフを放せ」
「ふふ、妬くな父君よ。お前も可愛いな」
リーフの頬から離した片手を2代目の頭に持っていこうとすると、2代目はそれを払った。
「リーフ、いつまで呆けている。……俺よりもアルカナのほうが好きか」
「そ、そんなわけないでしょ⁉ これはその……男のロマンっていうか……」
「……ロマンとはなんだ?」
「えぇ? えっと……アルカナ……さん、みたいなお姉さんに可愛がられることってなかなかないんで、してもらいたいけど無理だよなぁ~って思って憧れてる欲求、っすかね……?」
「呼び捨てでよい、リーフ」
「ひえぇ! 耳元で囁かないでくださいっす!!」
「いい加減にしろ、アルカナ」
ずっとリーフに触れていたアルカナの腕を取った2代目は、反対側の手で3代目の耳後ろに触れた。
「うむ……なかなかのテクニシャンだな父君よ……」
犬って耳後ろ撫でられるの好きなんだっけ。目を閉じて気持ちよさそうだ。尻尾も揺れている。
2代目はリーフで知ったのか狼たちで知ったのか……詮索は野暮か。
「ロマンについては……少し分かった。さっきアルカナがお前にしたこと……俺にもしてほしい」
「……ッ⁉ だから……なんでそういうこと今言うかな⁉」
茹だってそうなくらい顔が赤い。リーフって攻めに弱いんだな。
転移で自室に行ってたらしいリヴィナが戻ってきて、何やら布を持って3代目に近付いていった。
「はしたないですわよ。せめて帯紐で前を合わせてくださいまし」
「うむ。気品がありながらも可愛らしい顔をしているな」
アゴクイ……!
何? 本当に百合気質の人なの?
「人妻に気安く触れるものではなくてよ」
「お前も旦那がいるのか。妬いてしまうか?」
リヴィナがちらりとキザシを見たので私も見た。
全然妬いてなさそう……。
「何見てんだフィエスタ。妬かねぇよ。あいつ本気じゃねぇだろ」
「あの金髪か……」
「……キザシにもこういう触れ方をしたらわたくしが黙っていられませんので、お遊びも大概にしてくださいまし」
嫉妬というか、キザシのトラウマを気遣っての発言だ。
克服できたっていうのは好きな人限定の話しだろうし、確かに危惧すべき触れ方だわ。
「服はすぐに仕立てますが暫くはこの格好でいてくださいな」
「少し窮屈だ」
「……確かにあなたには似合っていませんわね。耳も隠す必要がありますし……デザインについては少し考えさせてくださいませ」
「よろしく頼む」
なんだか子どもをしつけてるみたい。経験者なだけある。
「アリストの時のように城の案内と、諸々を教えなければな……アリスト、お前は休んでいろ。大勢と仮契約したんだ。人々の思考が煩わしいだろう」
「ありがとう父上……」
「そうか、仮契約すると不老不死と一緒に思考感知も付いてしまうんだったな」
「えっ⁉ 街中(まちじゅう)の人の思考が⁉ それでずっと眉間に皺寄ってたんすね……。そういうことは早く言ってくださいよ。僕もアリストに付いてていっすか?」
「うん。そうしてあげてくれ」
「お前たちは祖父君(おじぎみ)か? まだ若いから似合わん呼び名だな」
「俺は呼び捨てで構わないよ。リオ・フィー……ルダーじゃないのか。リオ・ヴェラールだ」
「リオ・ヴェラール……聞き慣れんな。だが良い響きだ……」
「なんか気恥ずかしいな」
突然いちゃ付き出すゼスリオよ。
「祖父君よりもリオのほうが可愛らしい顔でいい」
リオの顔に手が伸びたけれど、やっぱり初代が阻止した。
「孫であってもリオに気安く触れるのは看過できん」
「……ゼストは嫉妬深いからな。でもアルカナ、他人に簡単に触れるものじゃないよ。そういうの嫌がる人もいるんだ。触られるのも、それを見るのも。こんなことで人から嫌われてほしくない」
「……そういうものなのか? ならば我慢しよう……」
「……少しずつ覚えていこう。あんまり我慢し過ぎるとストレス溜まっちゃうから、程々にな」
リーフと2代目は転移で自室に戻り、リオと初代が3代目の案内をすることになった。
私もあんまりのんびりしてたら死んじゃうわ。リーフとの契約は切れてしまった。恐らく昨日の夜のうちだから今日中にはここを出ないと。
「なんか凄い人だったわね、アルカナ」
「珍しく真っ先に挨拶行かなかったな」
そういえばコミュ力お化けのノアが挨拶に行かないなんて、本当に珍しい。
「……そうね。私もリーフみたいにされたら嫌だな、って思っちゃったわ」
「苦手なタイプってことか? まぁ誰にでもあるだろ。俺も近寄りたくねぇな」
キザシのようなトラウマがノアにあるとは思えないし……。自分からは行けるけどパーソナルスペース詰められるの苦手なのかな。
前にリオは人に対して壁を作るところがあるって話してたけど、もしかしてノア自身にも当て嵌まることだった?
「み……。生まれたばかりで人との距離感が分かってないだけだと、思うです。僕たち猫は警戒心が強いけど、犬は好奇心の強い人たちが多い、です。人に興味があるんだと思うです」
「……見た目が美人だからその発想はなかったわ。なるほどね……犬だと思えば可愛いかもしれないわ。でもそれってアルカナを人として見てない感じがして失礼かしら……」
「第一印象だけで嫌いって決め付けるのは、良くないです」
「ルーミーの言う通りね。アルカナ自身を見られるようにする為にもちゃんと話すべきよね」
みんなから嫌われてしまったら、3代目はきっとネガティブになってしまう。人間に被害を出さない為にも、リオたちがいろいろ教えていかないと。
私はもう、ここにはいられないから。
「フィエスタさん……」
私に呼び掛けたのはシエラだった。
3代目の強烈なキャラでみんな忘れてただろうけど、私との別れが近いのよ。
「やだっフィエスタはまた妖精の森に帰らないといけないじゃない⁉」
「流石に3回連続で勇者と契約すんのは難しいのか?」
「妖精王のあの様子じゃ、多分……。ここにはもう来られないのよ」
「みゃう……」
「あの! ……契約すれば、帰らなくてもいいのではないですか……?」
「……勇者と一度でも契約した妖精はマナ量が増えてしまうのよ。だから、普通の人間と契約できなくなるのよ」
本来優れたスキルを持った妖精が妖精王に、そして勇者に選ばれる。そんな優れた妖精は脱走妖精として生きることはできない。勇者に選ばれ旅に出た思い出ができれば外の世界に行きたい気持ちが強まるけれど、選ばれない限り森にいるしかない。
妖精の世界は、かなり閉鎖的だ。
だから役に立たないスキルを持った私が何度も外の世界に行くのは、妖精王だけじゃなく周りの妖精からもバッシングを受けるだろう。そんな中、何千年と寿命が尽きるまで生きるか、脱走して自殺を図るか……。
リーフと契約する時もかなり噂になってたみたいだったし、帰りたくないというのが本音だ。
それならいっそ、ここで死んだほうが……。
「契約するのは私たちとではなく……魔王さんとです」
……え?
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