#57 誓い
この物語のテーマはジェンダーです。
物語の進行上の表現、オタク的表現があることをご了承の上、もし配慮が足りていないと感じる箇所がございましたらご指摘お願いいたします。
必要性のご説明や表現の修正を行わせていただきます。
また、一部過激な描写を含みます。
魔王の真実を公表後に、行動力溢れるオタクが魔王城にやってきてしまったこともありその対策を行った。ついでに過激派への対策にもなるのでなかなか重要だ。
ビビリのリーフの意見を取り入れ、陰鬱とした幻影はそのままに魔物除けをあえてなくし、道を透明な結界で囲むことで水族館やサファリパークみたいな仕上がりになった。魔物が普通に現れ、結界の存在を知らずに突っ込んでくる。結構怖い。
リオたちが行き来する際にも気を配り、アバルト領出入り口を常に監視できるよう映像付き通信魔石を開発。監視カメラの爆誕である。
リーフの前世での知識がなくても初代の発想力に掛かれば前世の技術に軽く追い付くわ。
いろいろな魔法具を開発し続けて3年くらい経った頃。
そんなアイデア魔法具たちをもっと広めようと行動していたギアが、成果を発表した。
「カヴァーリの商業ギルドと専属契約を結べたよ。君たちの魔法具をどんどん広めていくからな!」
初代は自前だけど、リーフはアイデアを前世から持って来てるから複雑そうな表情をしている。
まぁリーフができるお金を稼げる手段が他に思い付かなかったのだからしょうがない。元はただのDKだからリオ並みに剣術以外得意なことがないらしい。
「ギアはいいのか。魔法の研究の時間が減るだろう」
「私はもう十分自分の為に時間を使ったからな……。探究心をなくしたわけじゃないけど、君たちの力になりたいんだ」
「……お前がいいなら、俺から言うことはない」
ギアが初代に微笑む。あえて言葉にせず、気遣ってくれたことへのお礼みたいだ。
「今試作してるものとかあるのか?」
「ああ……それなら」
初代が左側の袂を探る。
物を取り出すより先に、ギアが今更に気付いた。
「あれ? ゼストって指輪してないのか?」
「……指輪? 前からしてないだろう?」
「何言ってるんだ、結婚指輪だよ」
「……」
「……」
はた、と目を合わせるゼスリオ。
「考えも付かなかった……」
「俺たちって結婚できるのか……? 戸籍とかないだろうし」
「正式な契約じゃなくても、指輪とか誓いくらいはすればいいじゃないか。強制するわけじゃないけど、同じ物を持つって絆を感じられて、いいものだぞ」
そう言うギアの薬指には結婚指輪が嵌っていた。何百年と経っても大切にしてるとか愛だわ……。凄く一途だ。
一方でアリリフも目を合わせていた。
「俺も父上も買いに行けない……。頼んでも、いいか」
「……ぼ、僕が行くんすか……」
「俺もジュエリーショップとか無縁だったから入りづらいよ……」
「リオとリーフが行ったら誤解を招きますわよ。わたくしもついていきますわ」
確かに見た目は男女だもんな。リオが童顔だから歳の差あっても夫婦に見えてしまう。
「リヴィナさん心強いっす……!」
「お世話になったお店がありますから、そちらへ参りましょう」
「うん? リヴィナとキザシは指輪買ったのか? いつの間に?」
「少なくともセリカが生まれる前の話しだ。……覚えてねぇな」
あれ、これ覚えてるな絶対。恥ずかしいからはぐらかしたな?
指のサイズを測り、カフェの定休日に指輪を買いに行った。ふたりはお店に入ってずっとソワソワしてたけどリヴィナがスムーズに店員さんと会話してくれた。
シュタインメッツ王との謁見ではまるで緊張してなかったのにジュエリーショップでソワるリオが可愛かった……。
折角なのでイニシャルを刻印してもらうことにして、1か月後にようやく商品を受け取った。
「……リオさん、こういうのって儀式的なのやるべきっすか? 普通に渡すんじゃダメなのは分かるんすけど……」
「えぇ? 俺もよく分かんないよ……」
サプライズで買ってきて渡す、嵌める、っていうならまだしも、買ってきたの知ってるしなんでもない日だもんな……。
「フィエスタさん、アドバイスとかないんすか」
「なんで私に訊くのよ。プロポーズもされたことないんですけど?」
「使えないのはスキルだけじゃないっすね……」
「聞こえてるのよ。儀式って言うほど仰々しくないけど交換して嵌め合うだけでも良いと思うのよ」
「なるほど」
話しを聞いてたリオが納得するなり初代に駆け寄っていった。
指輪が納められた箱を開いて、
「ゼスト、俺に嵌めてほしいな……」
いや言い方ぁああ⁉
言葉端折り過ぎていかがわしい感じに……聞こえてるのは私だけかぁああ!!
「……ああ」
指輪をひとつ取るとリオの左手を恭しく掴む。
薬指に指輪が嵌められていく。
あー……、尊い……。
「次は俺だな――、お揃いだ」
嬉しそうにはにかむリオの顔をもっと眺めたかったのに、初代の袖がそれを隠した。
これキスしたやつぅううぅう!!
「……誓いのキスか? 何も誓ってないぞ?」
「俺がしたかっただけだ。誓わなくても、お前が死んでも愛し続けることに変わりはない」
「ははっ、もう体言してるから説得力が違うな。……俺も、体言して示そうかな」
「リオ……」
「ふふ」
意味深な笑いよ……。
今夜は盛り上がりそうね……。
「……アリスト」
「リーフ、ここで交換するのはやめておこう」
「っすよね。あのあとにやりづらいったらないっす」
アリリフはふたりきりでいちゃ付くらしい。
この場で羞恥心もなく明けっ広げにできるのはゼスリオくらいよ……。
結婚式だったら拍手もできるけど、いつも通りいちゃ付いてるふたりに今更拍手はなんか違う。みんなスルーする他ない。
だが私としては、ありがとうございます!!
「紋章が、消えました」
まさかの翌朝、リーフがみんなにそう報告した。
お前らも昨夜盛り上がったのバレバレだけどいいの? まぁ一大事だから報告はするべきなんだけど……。
「おめでとう! でいいのかな? お腹は大きくならなかったな」
「食事の後、早速取り出すか。先に名前を決めておけ。名がなければ形を成さんらしい」
「名前……⁉ え? やっぱ“スト”縛りっすか?」
「うん? 気にしなくていいよ。アリストはゼストに関連して付けただけだから」
「む……リオの名から1字取ったのではないのか?」
「え? 違うぞ? “是とする”って“良い”ってことだろ? 最近はそういうの“アリ”って言うみたいだから」
リオのネーミングセンス……すき。
「……なんにせよ、中性的にするに越したことはないと思う。勇者の特徴も受け継がれるようだからな。女性である可能性も大いにある」
「女性の魔王も格好いいな!」
「名付けはリーフに任せる」
「えっ⁉ アリスト僕に投げないでくださいよ! 責任重大じゃないっすか⁉ 歴史に残るんでしょ⁉」
「難しく考えたら多分決まらないぞ。キザシ、セリカはどうやって付けたんだ?」
「俺じゃねぇよ」
「わたくしが名付けましたわ。ファミリーネームが“小さな星”という意味があるのでそちらに合わせて“天の”という意味のあるセリカにしましたの」
「なるほど。ヴェラールだと……“覆い隠す”、かな? そういえばリヴィナはゼストが付けたんだっけ。由来はなんなんだ?」
「“生きる”だ。俺と契約してまで生きることを選んだからな」
「名付けムズ……。もうリオさんが付けてくださいよ……」
「リーフとアリストがそれでいいなら俺が付けるよ? 自分で言うのもなんだけど結構適当になっちゃうぞ?」
リーフはともかく魔王もそれでいいみたい。
あ、また魔王って呼べなくなるのね……2代目かな? もう3代目は最初から3代目って呼ぼうか。悩んでるリーフには悪いけど私たちはその名前を呼べないのよね。
「じゃあ……、アルカナかな? “神秘”っていう意味だ。魔素の塊が人の形を成すなんて神秘だろ?」
「リオは名付けの才もある」
「父上のは惚れた欲目だろう……」
「秒で決まった……流石リオさん」
魔族を増やし魔王への恐怖をなくす計画の実験として、カヴァーリを取り囲むように既に陣を張っている。それを遠隔で発動させてから3代目を誕生させる。
今日はちょうどカフェの定休日といういこともあり、みんな立ち会うことになった。
リオの時と同じように魔法陣を描いた紙の上にリーフが立ち、アリストが魔術を発動させた。
魔法陣が光り出すと、リーフがお腹を押さえながら膝を突く。気を配ることができなくなったのか、消していた犬の耳と尻尾が出てきた。
2代目が陣に入り、リーフの手の上に手を重ねた。
「手を退けろ。引っ張り出す」
「うぅ……アリスト、気持ち悪……」
空いた片手で頭を抱き寄せられたリーフは縋るように2代目の服を掴んだ。
リーフが甘えてるとこ初めて見た……。私たちの前じゃ全然こういうの見せないのよね……。
お腹からずるずると魔素が取り出されると、2代目は自身の羽織りを被せて3代目の名を呼んだ。
「アルカナ・ヴェラール」
そういえば2代目も裸の状態だったな。あの時は子どもの姿だったけど今回は既に大人のはずだ。
一応鑑定しながら注視しているとステータスが表示された。肩書きは“3代目魔王”になっている。
服の中からのそりと起き上がった3代目は魔王に共通する黒髪ロングを有している。
勇者の要素は、性別と獣人だった。
登場人物、名前の意味一覧。ついでに誕生日。
フィエスタ(フォード)
祝祭
リオ・フィールダー(日産・トヨタ)
川・野外に出て遊ぶ人
3月18日(魚)
キザシ・スターレット(スズキ・トヨタ)
物事の始まりの予兆、芽が出る・小さな星
9月6日(乙女)
シエラ・ストラーダ(スズキ・三菱)
山脈・道
12月12日(射手)
ルーミー・ベルタ(トヨタ)
ゆったりした・美しい
10月29日(蠍)
ゼスト・ヴェラール(ホンダ・ランドローバー)
熱意・隠す、覆う
11月13日(蠍)※本人は記憶なし。
ケイ・ローグ(スズキ・日産)
軽の中の軽・お茶目
リヴィナ/サクラ・バネット(日産)
生きるの造語/桜・小さな
9月27日(天秤)
アルティマ(日産)
最後の、最も遠い
アルメーラ(日産)
大粒のダイヤ
ラニア・ローグ(日産)
青い鳥
ノア・フィールダー(トヨタ)
動き
4月10日(牡羊)
アリスト・ヴェラール(トヨタ・ランドローバー)
最上の、優秀な
4月20日(牡牛)
リーフ・アリオン(日産・トヨタ)
葉(大気を浄化)・オールインワンの造語
7月9日(蟹)
エッセ・ヴィオス(ダイハツ・トヨタ)※傭兵ギルド受付さん
本質・旅行
6月13日(蟹)
セリカ・スターレット(トヨタ)
天の
8月5日(獅子)
アヴァンシア・ローグ(ホンダ・日産)
進化する
アトラージュ(三菱)
魅力的
ギア・フィールダー(スズキ・トヨタ)
アウトドア道具全般
2月3日(水瓶)
カローラ・ビュート(トヨタ・光岡)
花の冠・美しく遊ぶ人
イグニス・クライダー(スズキ・ホンダ)※アーデン村長
点火・基準、夢想
ジーニア・バンディット(ホンダ・スズキ)※オタク1
?・何にも頼らず自分の力で生きる人
アクア・ソルーナ(トヨタ)※オタク2
水(透明感、誰もが必要とする)・太陽と月
アルカナ・ヴェラール(ルノー・ランドローバー)
神秘
12月1日(射手)
トヨタ良い名前が多過ぎる件。
作中、リオはアリストのネーミング適当だったけど、ちゃんと良い意味もあったのです。
フィールダー家がアウトドア過ぎるのはたまたまです。
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