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#51 リオ無双

 この物語のテーマはジェンダーです。


 物語の進行上の表現、オタク的表現があることをご了承の上、もし配慮が足りていないと感じる箇所がございましたらご指摘お願いいたします。

 必要性のご説明や表現の修正を行わせていただきます。


 また、一部過激な描写を含みます。




「待て」


 この場から離れられると気が緩んだところにこの強い口調はちょっとビビった。


「城を訪ねた勇者をその辺の宿に泊まらせるわけにはいかぬ。部屋を用意させよう」

「ご厚意感謝いたします。本日はお時間をお取りいただきありがとうございました。陛下のお時間がよろしい時にわたくしたちをお呼びください」

「うむ……。追って伝える。ゆるりと休まれよ」


 近衛のひとりが王に命じられ、私たちを客室まで案内してくれた。入り口は男女別れているけど中で繋がっている間取りだ。

 説明を終え近衛が部屋を出ていくと、ようやくひと息吐けた。

 リオ以外がその場に座り込む。えっノアも?


「みんな、大丈夫か?」

「こういう度胸があるのはお兄ちゃんのほうなのに……なんで敬語使えないのよ!!」

「ノアはよく畏まった言葉遣いできるよなぁ」

「ノア、めちゃくちゃ格好よかったのよ……!!」

「僕たちなんか置き物みたいになっちゃってさーせんした……!」

「みゃう……ごめんなさいです」

「はあ……王様結構動揺してたわね……。伝えたいことはまだまだあるのに話し進むかしら?」

「ちゃんと考えてくれるといいんだけど……きっと忙しいよな」

「滞在が長引くとお店の再開が遅れるわ……」


 不安を残しつつも、私たちは豪華な城に1泊した。

 夕食同様、部屋に運ばれてきた朝食をとっていると、近衛の人がノックして入ってきた。


「王陛下よりの言伝であります。この後9時から会談の時間を設けましたので時間になりましたらわたくしがお迎えに上がります。ご準備をしてお待ちくださいませ」


 近衛は一礼して出ていった。

 思った以上に早く2回目が開かれるみたい。あの後何かあったのかな……どういう判断をしたんだろうか。

 私たちは伝えるべきことを確認してそわそわと待った。

 時間よりも早く迎えが来て昨日と同じ会談の間の前に来た。近衛さんがノックすると、


「勇者御一行さま、お連れいたしました」

「入れ」


 もういるじゃん⁉

 ドアが開けられると王陛下と……前王⁉ それと王妃も⁉ なんで父と嫁も呼んだの⁉

 まるで怯む様子もなくノアが声を発した。


「おはようございます王陛下並びに前王さま、王妃さま。再びこのような場を設けていただき有難く存じます。……絵本の内容について、ご質問があればお答えいたします」

「わたくしからよろしいでしょうか?」


 え? 王妃から? 前王の発言権が強いのかと思ってたんだけど。


「どうぞ」

「伝説では魔王も……そちらのリオ・フィールダーさんも男性だと思うのですけれど、2代目魔王をお産みになったというのは、どういうことですの……?」

「それは俺が答えるよ。確かに男同士だけどゼストとは身体を重ねたよ。そしたら俺の中に魔素が溜まって塊になって、取り出したらアリストが生まれたんだ」


 聞いてる間から王妃の瞳孔が開いていったわ。この人、腐女子だな……?


「そ、そんなことがあるんですのね……た、大変興味深いお話しでしたわ……」

「信じてくれるのかっ?」


 リオのぱっと花開くような笑みに王妃は確実に胸を撃たれていた。扇で顔隠したけどバレバレよ。夫の前でよくそんな顔できたな。


「ごほん……。えー、魔王の名を呼べぬことは昨夜我らも確認した。2代目魔王が生まれたことは信じる他ない。だが、お主らが本物のフィールダー兄妹である証明はできるのか?」

「んー……証明になるか分からないけど、俺の後に生まれたノアはマナがないんだ。勇者が産まれる時、母親のマナをほとんど吸収してしまって、後に産まれてくる子に残ってないんじゃないかって、ゼストが言ってたよ」


 リオが初代の名前出す度に王妃が喜んでるぞ。流石リオたんね。 


「マナのない人間がいるのか……? そなたはSSSランクの傭兵であろう?」

「わたくしには魔法は使えません。元勇者の兄に鍛え上げられた剣の実力のみで上り詰めたランクにございます」

「なるほど……そこのリオ・フィールダーが本物であるならば、そなたにも勇者リーフにも、この国一の剣士にも勝って当然というわけであるな? ……リオ・フィールダー、そなたの身分はなんだ?」

「うん? カフェのマスターだよ?」

「……腕が鈍っていないことを祈ろう。その実力を我らに示してみよ、元勇者とやら」

「模擬戦か? いいよ!」

「随分自信があると見える。では勇者リーフとノア・フィールダー、それと騎士団長と試合してもらおう」


 えっ3人と⁉


「戦う順番は俺が決めてもいいかな? ノアが一番強敵だから最後がいいな」

「……我ら騎士団も舐められたものだ。よかろう。では闘技場へ参ろう」


 なんで毎回体育会系なノリになるわけ⁉ みんな戦い好き過ぎでしょ⁉

 リオはまず騎士団長との試合を望んだ。筋肉隆々って感じではないけど、リオよりふた回りくらい大きい。あんまり体格で負けてる相手と戦ったのって見たことないかも。強いて言うならケイくらいだ。


「両者ーー始め!」


 王が合図するとリオは即座に距離を詰めた。その速さに一瞬驚いたようだけど、流石は国を守る騎士団の団長。しっかり反応してる。けどリオの手数に圧倒され防戦一方だ。

 決着は数分で着いた。


「次はリーフ、おいで!」


 リオはまだまだ元気だ。

 騎士団員のどよめきなんか気にも留めていない。


「手加減はいらないからな。騎士団長より粘ってもらわないと」

「勝つ前提っすね……。ま、手加減なんてするつもりないっすけど!」

「リーフ、インナーは着てるのよね?」

「着てますっ!」

「ならよし、行ってきなさい!」


 リーフが位置に付くと再び王の合図で試合が始まる。

 リオが同じように距離を詰めるけど、それが分かってるリーフは勢いを削ぐ為に切っ先が遠くなる右へ移動する。それさえ読んでいたリオが突きに攻撃を変えるも、リーフは後ろに引いて躱す。

 よく手合わせしてるからお互いをよく分かってる。

 初めてふたりが試合した時よりも確実にリーフの腕が上がっている。リーフと団長ならさっきより良い勝負になってたかもしれない。

 団長よりは長い試合にはなったけど、リーフはリオの低い姿勢からの攻撃は苦手らしい。


「はぁっはぁ……あざっした!」

「じゃあ……最後だな」

「ノアさん、仇取ってくださいっす……」

「任せて! 私を最後にしたこと後悔させてあげるわ!」


 ノアが勝ったらリオが勇者だって証明にならないから! 目的忘れてんでしょみんな⁉


「もう息が上がってるんじゃない? そんな状態で私に勝てるのかしら?」

「集中力が上がってきたところだよ」


 リオたんイケメェエエン!! 微笑みが余裕の表れ過ぎてときめく……!! あぁああぁ汗がエロいぃいい!!


 いつの間にか周りも盛り上がっている。騎士団の中でも傭兵ノアは有名人らしい。

 応援されてるノアはファンサせずにリオと対峙する。

 ふたり構えて試合開始の合図が掛かるも、動かない。リオが疲れてるところを一気に攻めるかと思ったけど、集中力が上がったっていうのは強がりじゃなかったようだ。

 観客の声が段々と消えていき、静かになった。ふたりには最早聞こえてないだろうけど、そのタイミングで同時に飛び出す。

 剣を交えてはいなし、次の一手を瞬時に繰り出す。

 木剣の叩き合う音が止まらない。

 ほぼ互角に思える。でもノアがリオに勝ったことはない。ノアのほうが剣速はあるけど体力・集中力・センスはリオのほうが上だ。長引けば不利なのはノアも分かっている。けどほとんど隙がない。

 ノアが確実に守りに入るだろうと分かっていたリオは顔面目掛けて強く振り下ろす。ノアはちょうど十字になるよう剣をほぼ横にして守ったけれど、ふたりの木剣が、折れた。

 リオは咄嗟に柄を下に捨てる。それでもノアの頬を少し掠めてしまった。


「済まないっ、血が……」

「お兄ちゃんの所為じゃないでしょ。木剣が強化されてなかったのよ」


 ヒーラーを呼んだりざわ付く場を治めたのは、ルーミーのスキル、癒やしの歌だった。

 超回復……。ノアの傷は勿論、疲労までも癒やされていく。

 歌い終わると、ルーミーの歌とフィールダー兄妹の試合に向けての拍手が起こる。王がリオとノアに近付き手を挙げるとやがて止んだ。


「そなたの実力は確かに勇者のそれだ。彼こそがリオ・フィールダーだと、異論のある者は前に出よ!」


 え……まさか騎士団のみんなにも絵本を見せていたの……?

 誰も前に出てこない。リオが先代勇者だと認められたんだ。


「では改めてそなたたちの話しとやらを聞こう。まだ本題に入ってはいないのだろう?」

「……忘れてたっ!」

「やだっ、つい真剣になっちゃったわ!」


 フィールダー兄妹可愛い……。

 闘技場を後にするふたりにいろいろ声が掛かった。今度はノアは手を振って応える。


「私が英雄リオの妹だってことはここだけの秘密ね!」


 アイドルへの声援並みに了承の声が飛び交う。

 ノアがSSSランクになれたことにみんな得心がいっただろうな。そりゃ強いわっていう。


「英雄はやめろよ」

「だって勇者は今はリーフじゃない。元勇者も先代勇者も長いもの」

「だからってなぁ……」

「ルーミー、回復ありがとうね」

「みっ、このスキルがあってよかった、ですっ」

「ありがとう、まったく疲労がなくなったよ。まだまだやれるな」


 体を動かして緊張まで解れたのかいつもの他愛ない会話だ。目の前に王様いるんですけど?

 私たちは会談の間に戻って、仕切り直した。


Copyright(C)2023.鷹崎友柊

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活動報告にもSS載せてますので
覗いてみてください(´ω`*)。

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