表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

伊予 狐 河野道直

作者: 伊予蜜柑

 今は道後公園の中に、こんもりとした小さな山のような丘がありますがそこに四百年ほど前、あの山には湯築城という、河野家のお城がありました。

城主には河野通直という名前の方が四人居ましたが、この話は、その三人目の通直のときのお話です。


 ある日、道直様の奥方が突然、お2人になりました。このお二人の奥方は、顔はもちろん、背の高さも、声も、何から何まで一緒で誰がみても、どちらが本当の奥方分かりませんでした。

みんな途方にて医者に診せても

 「何ぞ魂が分かれるという奇病ではないでしょうか。」などと言い、手のほどこしようもなかった。

 その時、通直様は、

  「ひとつ考えがあるけん。」

 ろ、言い出し、この二人の奥方を座敷牢に閉じ込めてしまわれた。

座敷牢の奥方には何の食べ物もあげてはいけないというので、家来たちは心配しておったら、四目目になって、やっと、

  「食べ物を牢内に差しいれよ。」

 と、言うたんよ。そして、通直様は、じっと二人の食事ぶりを見ておいでたら、一人の奥方は落ち着いて、箸を運んでおいでるのに、もう一人の奥方は、ガツガツと耳まで動かして食べたした。それを見た通直様は、すぐに取り押さえました。

そしたら、たちまちそれは一ぴきの古狐の正体をあらました。

 通直様は、自分をだましたこの古狐に腹が立ってしょうがないけん、火あぶりにしようと思い、庭にたきぎを高く積み上げたんよ。すると、大小三千びきもの狐がお城のねきに寄ってきて、その代表の狐が一生懸命に頼んできました。

 「実はこれは、貴狐明神の子孫で四国狐の頭領です。今、焼き殺されたら、きっとご領内に災いがおきましょう。もしお助けくだされば、必ずご恩にむくいましょう。」

 と、命ごいをしました。その神妙な様子に通直様も、

  「今後四国から出て行くんだぞ。」

 と約束させて、この古狐を許しました。大小三千の狐は、まもなく船に乗って、むかいの中国地方にいってしまいましたとさ。


                         おわり

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ