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Momo色サーカス  作者: 朧 月夜
【Special.1:秋】塞がれた唇 ―慰安旅行は下剋上!?―
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[2] 〈N♪〉

★このページの前に秋編前半を更新しています。『前の話』をクリックして、そちらからお読みください。

「ココだヨー、入って入って」


 モモ達独身女性の部屋は、凪徒達独身男性の部屋の真向かいだった。宴会の間に整えられたのだろう、既にふっくらとした布団が敷かれている。


「……リン? モモ、大丈夫?」


 入室した途端、入口から秀成の声が呼び掛けた。リンは待ってましたとばかりに「ヒデナー!」とピンク色の声を上げて、戸口に駆け寄ってしまった。


「あ、おい! リン~何処に寝かせりゃいいんだよ!」

「ドコでもイイヨー、ヒデナー来たから行ってくるネ~! ナッギー、モモたんのことヨロシク!!」

「ちょっ……ったく!」


 自分はモモがこうなった原因でも理由でもないのにと、凪徒は舌打ちをしながら、一番隅の掛け布団を()いで、モモを静かに横たえた。


「おーい、モモ、大丈夫か~?」


 一応声を掛けてみるが、目を覚ます気配はない。


 ──暗くして、自分の部屋で待機するか。


 と、考えを巡らし腰を上げかけたところ、


「ん……気持ち、悪い……」


 モモがいきなり眉間に(しわ)を寄せた。


「モモ? 吐くか?」


 ──トイレにまで連れていかなきゃいけないのかよ~……。


 凪徒はゲンナリしながら再びモモの首と膝の後ろに手を差し込み、


「う……うっ……」

「え? モ、モモ? ちょっと待て! も少し我慢しろ!!」


 慌てて持ち上げた途端──


「う……うっそで~す!」


 ──はぁ……!?


 依然目を閉じたまま、ニコニコ顔のモモが元気良く飛び出させた言葉に、凪徒は一瞬呆然自失した。浮かんだ少女の身体から手を引き、数センチだけ落下させてやる。


「お前~! 眠った振りして、俺をおちょくってるのかっ!?」


 が、起きる気配もないので、どうやら寝言だったらしい。


「こいっつ、こうしてやるっっ!」


 凪徒は左手でモモの鼻を摘まみ、右手はまるでガマ口の財布を閉じるように、上下の唇を指で挟んで、モモの呼吸を妨げた。


「ふ……んっ……ん──っ!!」


 さすがのモモもそれを払いのけようと、必死に両手で指にしがみついたので、数秒後には凪徒もモモを解き放してやったが……。


「く……苦し……もう、食べられません~……」


 ──食べ過ぎで呼吸困難に(おちい)ったとでも思ってるのか?


 呆れて怒る気も失くしてしまう。


「酔ってあんな醜態が出てくるなんて……そんなに俺のデコピンが恐怖だったのかよ……」


 しばらくしてモモは静かな寝息を立て始めた。その柔らかな寝顔を見下ろし、やがて凪徒の心にも穏やかなしじまが立ち込める。ゆっくりと右手を上げ、そっとモモの頬に触れる。


 ──杏奈が触りたくなるのも、分からない訳でもない……な。


 モモは無意識に、その凪徒の手の甲に指先を落とすと、ふっと唇に笑みを(たた)えた。


 ──しっかし、息を止めても目覚めないんだったら、違う方法で口(ふさ)いでやれば良かった。


 ==え!? そ、それって……凪徒さん?==(作者の声)


「ゆっくり休めよ、モモ。……明後日から……またビシビシ鍛えてやるからなぁ!」


 そう(つぶや)いて、口の(きわ)を鋭角に上げた凪徒の表情は、まさしく魂を奪いにやって来た死神の微笑みそのものだった……!




挿絵(By みてみん)




 その後の凪徒が胸元の合わせをめくって見たとか、モモの(もも)(笑)をチラと(のぞ)いていったとか……そんな色気のある事実が有ったかどうかは、作者も知らぬところでございます。


 がっ!


 リンが退出した後の凪徒の様子は、案の定、暮・秀成・リンに観察されておりました……アーメン!




【Part.3に続く】




★以降は2014~15年に連載していた際の後書きです。


 どうしてこんな和風なお話が、ハウステンボスの洗練されたホテルヨーロッパにて思いつきましたのか、私には皆目見当もつきません・・・(苦笑)。


 春編三十話の『死神凪徒』wイラストを希都様から頂いておりましたが、こちらにて使わせていただきました~浴衣にまで直していただいて!・・・希都様☆ この度も誠に有難うございました!!




★次回冬編更新予定は九月二十日です。




挿絵(By みてみん)




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