[最終段階!?]〈N❤M〉
「モモ……」
凪徒はモモの許へ戻り、言われた通りにじっと固まった少女の頤に触れた。ようやく全ての準備が整い、一から仕切り直せる気持ちがして、初めてキスした時の強引さは消し去り、優しく柔らかく口づけた。モモの震える全身も唇も、そのぬくもりを確かめるよう僅かにしか動かされない凪徒の唇に、次第に溶け込み和んでいく。それでも長い間重なり合っていた所為か、やがて自由にされた後には、深い吐息が流れ落ちていった。
「あ、あのっ、先輩、明かり……」
再び手の掛けられた襟元を見つめて、モモは凪徒の動きを咄嗟に止めた。こんなに晃々とした照明の下では恥ずかしいと思っていた。
が、凪徒はモモの抵抗する手を退かし、
「いやだ」
「え?」
まるで駄々っ子のように即否定をした。
「全部見せろって。モモの全部、良い所も悪い所も……俺も全部見せるから」
──良い所も、悪い所も……
驚いている内に幾つかのボタンが外されて、中に着ているキャミソールの胸元が露わになった。
──あ、あたし……そう言えば、もう寝る予定で外に出てたから、下着着けてない……!
再び抗戦しようと腕を上げたが、凪徒はいつの間にかモモの寄り掛かる枕の端に顔を突っ伏し、必死に何かを堪えていた。
「くっ、くくっ──」
「せ、先輩?」
明らかにそれは『笑い』であり、きっと自分の胸元を見た所為だと察せられ、モモはにわかに頬を膨らませた。
「ご、ごめんっ……俺……ずっとモモのこと誤解してたわ……」
「……え?」
やっと笑いを止めた凪徒の顔が戻ってきて、にこやかな微笑みに変わる。
「お前って、ショーの時、相当『寄せて・上げて・盛って』るんだと思ってた」
「ひ、ひどい~!」
「だって練習着も普段着も、ちっとも胸ないじゃんかよ」
──それは目立たせるのが恥ずかしくて、身体の線が分かりにくい上着とスポーツブラを着けているからです……。
モモは心の中でそう言い訳して、再び笑い出した震える丸い背中を見下ろす。
「まぁ良かった良かった~思ってた以上にあって! 折角だからちゃんと拝ませろ」
「えっ! あっ、やだっ!! 先輩~~!!」
左の身頃を掴んだ長い指を、引っぺがそうと両手で応戦するモモ。凪徒はそんなモモを見上げ、
「じゃあ布団くらい掛けてやるから。それからこういう時くらい、『先輩』じゃなくて『凪徒』って呼べよ」
と、女性ファンを魅了してきた麗しいウインクを投げた。
「あ……えと、な、凪徒さん……」
初めて口にする凪徒の名に、モモの声は少しうわずってしまう。
「ま、『さん』付けでもいいか。……好きだよ、桃瀬……くくっ」
「先輩?」
再び現れる凪徒の隠しきれない笑い。
「モモに『セ』が付くだけで随分雰囲気変わんのな……ぷっ」
「先輩~!」
「だから~『凪徒』だって!」
「な、凪徒、さん……」
「桃、瀬……くっくっく──」
──先輩って、もしかして……ツンデレの『デレ』が出ると、笑い上戸になる?
モモは目の前で腹を抱えて苦しむ凪徒に呆然とした。
「せっ、先輩ってば!」
「だからぁ『ナ・ギ・ト』!」
「な、ぎと、さん……」
「ももせ……ぷぷぷっ」
「先輩~~~!!」
さて……この二人にれっきとした『愛の営み』が訪れますかは──皆様のご想像にお任せ致します♡
[結]
「男性は家庭を持つと、それを養う為にまた精を出す──力が出る。でも女性は……それを守る為に、闘争心は母性に変わり、自分が傷つく危険を恐れるようになる──それを感じたんだそうだ」
たとえ、そうであったとしても。
あたしは飛び続けたい。舞い続けたい。
愛されて、結ばれて、守るべき者に恵まれた、その先でも──。
ずっとずっと、いつまでも、何処までも。
先輩と一緒に! いつまでも、何処までも!!
飛んだ先に貴方の手が待っている限り、ずっとずっと──。
だから絶対掴まえて! 先輩の、大きな……温かなその手で──!!
【完】
★以降は2014~15年に連載していた際の後書きです。
最後までお読みくださいまして、誠に有難うございました!
作品はこちらでおしまいとなりますが、メンバーの未来を語る[後書き]を準備しています。
お手数ですが次の更新まで、是非お付き合いをお願い致します!!
桜の下の二人のイラストは、私が下書きを描き、希都様が彩色してくださいましたコラボレーション作品でございます♪
想像を遙かに超える美しい夜桜を描いていただき、もう二百パーセントの満足状態でございます♡
希都様には本当に沢山のイラストを頂いた上に、ほぼ更新毎に感想やご意見を頂きまして(←私が催促していたのですが(苦笑))、この一年以上の連載期間、精神的にも支えてくださった心の友でございます(涙)。。。希都様! 最後まで大変お世話様になりました!!
精神面弱々でどうしようもない作者でございますが、どうぞこれからも末永く宜しくお願い申し上げます~(汗)。
また他にもキャラ達を深くご理解くださり、素敵なイラストを下さいました皆様・有難きレビューを下さいました皆様・心のこもった感想を下さいました皆様・高評価下さいました皆様、そして最後までお読みくださいました皆々様! 本当に本当に有難うございました!!
沢山の愛を込めて・・・朧 月夜 拝




