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Momo色サーカス  作者: 朧 月夜
【Part.3:冬】触れられた頬 ―○○○より愛を込めて―
130/154

[40]リメイクとリハーサル 〈Ni〉

★いつもお付き合い誠に有難うございます!


 アルファベットを多用していますので、出来れば横書きでお読みください。




挿絵(By みてみん)


 静まり返った衣装室には、昨日と同じくニーナだけが存在した。丸椅子に腰掛けた端正な横顔は、少し上方を目指していて、(つや)のある唇は優しい微笑みを(たた)えている。


「ズドラーストヴィチェ(こんにちは)、ニーナさん」


 ニーナの(たたず)む空間がやけに満たされたような流れを帯びていて、モモは一瞬言葉を掛けることをためらった。が、凪徒を待たせている場合ではない。


「Hi, Momo! How are you? I wait for you. You know……how is this?(あ、モモ! 元気? 貴女を待ってたの。ね……これ、どう?)」

「え……?」


 こちらを振り返ったニーナは、モモとの再会を心から喜んでいた。そして問う、再び戻した視線の先の──


「あっ!」


 モモは刹那に大声を上げた。ニーナが示したのは、壁に掛けられたモモの衣装、あの純白のチュチュ風ドレスだった。


 立ち上がり、その衣装を手に取るニーナ。ハンガーから外し、顔前で目を見開くモモの身体に当ててみる。


「Yes! Perfect!!(うん! 完璧!!)」

「あ……凄いっ、ニーナさん……ハラショー! スパスィーバ!!(素敵! ありがとうございます!!)」


 昨日照れてしまうほど最小限だった布地の胸元には、真っ白で愛らしいファーが、一周巻かれるように縫いつけられていた。ところどころ毛足が長く、それがくるりと弧を描いて、ふんわりとしたシルエットが可愛らしさを惹き出している。


 ──あたしが恥ずかしがっていたのを心配して、アレンジしてくれたんだ……!


 これなら気にしないで思い切りやれる。モモは衣装を受け取り確信を得た。早速着替えて全身を映す鏡の前で満面の笑みを見せた。その姿はあたかも「白鳥の湖」でオデットを演じる可憐なバレリーナそのものだった。


「Thank you very much indeed!(本当にありがとうございます!)ニーナさん!!」

「Hmm……wait a moment, Momo.(うーん……ちょっと待ってて、モモ)」


 後ろから(のぞ)いたニーナは、それでも一つ気になるところを見つけて、何かを取りに駆けていった。




 ☆ ☆ ☆




「な、なんか昨日とはエラい変わりようだな……」


 嬉しそうなモモの前で、凪徒の戸惑う様子も昨日とはまた少し違っていた。


「え……? あ、ダメですか?」


 自分は特上満足していたので、その反応にモモもいささか困惑する。


「ああ、いや。衣装はいいんじゃねぇの。でも髪は随分ひっつめられたなぁと思ってさ」


 あの後ニーナは櫛と髪留めを取りに行き、モモの垂らした髪を後ろ上方でお団子に結い上げたのだ。


「に、似合わないですか? この方が舞うのに邪魔にならないだろうって、ニーナさんが」


 これなら更に「やりやすい」。モモは益々今日の演舞に自信をみなぎらせていたのだが。


「別に~お前が気に入ってるなら、それでいいだろ」


 ──相変わらずつれないなぁ……。


 そうは思いながらも、確かに自分は満足したのだから、これで行こうと気持ちを改めた。


 ──何やかんや、友達作ってんだな。


 颯爽と支柱に向かうモモのお団子頭を見つめて、凪徒はクスッと笑ってみせた。


 今から約二時間後──披露される二人の晴れやかな舞台。


 その最終調整(リハーサル)が始まった──。




★次回更新予定は一月二十一日です。

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