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Momo色サーカス  作者: 朧 月夜
【Part.3:冬】触れられた頬 ―○○○より愛を込めて―
125/154

[35]谷と山

★いつもお付き合い誠に有難うございます!


 アルファベットを多用していますので、出来れば横書きでお読みください。




 それから四十分後──。


「……何か……露出度、高くないか……?」


 目の前で腰に両手を当て、仁王立ちした凪徒が、うっすら赤面しながら眉間に(しわ)を寄せ、モモを見下ろしていた。


「あ、あんまりっ、見ないでください!」


 明らかに彼の視線が自分の胸の真ん中を(とら)えていることに気付いたモモは、思わず自分の両腕で肩を抱き締め隠そうとした。けれどそれは余計にその縦に走るラインを深くすることになって、さすがの凪徒も顔を横へ(そむ)けた。


「だ、だぁれが、お前のなんか見るかよっ」


 ──む、矛盾してる……今朝は見せるつもりじゃなくても、勝手に見たくせに~!


 モモはそう言い返したい気持ちを押し殺して、抗議の視線をキッと上げてみせた。


「仕方ないじゃないですか……皆さん身長があって、これしか合う衣装がなかったんですから」


 モモが身に着けていたのはバレリーナのチュチュのような、上下半身とも必要最低限しか隠してくれない純白の本番着だった。


「まぁ着られるのがあって良かったな、“おチビちゃん”。んじゃ着替えたら、一通りステージ見せてもらって、今日は帰るぞ」

「おチビちゃんって~」


 日本であったら平均身長を(わず)かに欠ける位なのに……と、モモは少し拗ね気味にぼやき、相変わらず身体はこちらへ・顔は横を向いたまま、モモの髪をクシャクシャと掻き回した凪徒を、恨めしそうに仰ぎ見た。


 凪徒はヘタをするとロシア人よりもタッパのあるお陰で、他人の衣装でもそつなく着こなしていた。モモと正反対の黒地だが、ライン状の銀色のラメが肩から逆側の腰に向かって斜めに走り、これで舞台の上を舞ったらきっと流星のように美しいだろうと想像出来た。モモのスカートの裾にも銀ラメが散りばめられているので、良いコンビネーションとなりそうだ。


 ──しっかし、明日……やりづれぇな……。


 凪徒は衣装室へ戻るモモの露わになった細い背中を見つめて、顔を引きつらせた。と共に、


 ──あいつ、相当『寄せて・上げて・盛って』るんだな!


 勝手な想像を膨らませて、くっくと溢れ出す笑いを押さえながら、この朝と同様に背を丸め腹を抱えて、男性の衣装室へ戻っていった。




 ☆ ☆ ☆




 そんなことで笑われているとも知らずに、衣装室で独り着替えを始めたモモは、


「Can you speak English, Momo?(モモは英語話せるの?)」


 部屋には自分だけだと思っていたことと、いきなり声を掛けられたことで、刹那にビクンと背中を反らせてしまった。


「あ……ニーナさん……い、Yes, a little(少しだけなら)……」


 自分のシャツで胸元を隠し、モモは振り返って苦笑いを返す。衣装合わせの際に自己紹介をしていたニーナが、後ろで笑顔を見せていた。彼女はニクーリンの衣装係で、モモより三つばかり年上の北欧系美人だ。


「Nagito is your partner in Japan, isn’t he?(ナギトは日本でも貴女のパートナーなんでしょ?)」


 ニーナはモモの脱いだチュチュ風衣装を手に取って、ハンガーに掛けながら隣の少女を碧い瞳で覗き込んだ。


Yesはい……」

「He loves you, very much.(彼は貴女のことがとっても大切なのね)」

「え……? えっ!?」


 ──ラブって聞こえたけど、勘違いよね?


 思わず着替える手が止まってしまうモモ。


Becauseだって……」


 すぐ傍のラックに腰掛けてモモを見上げる。ニーナは少しもったいぶったように言葉を途切れさせ、


「……Nagito interrupted eyes of men with his body not to see your figure.(モモの姿が男性スタッフからは見えないように、自分の身体で遮ってたから)」

「えっ──」


 ──だから先輩は顔を横に向けても、身体の向きは変えなかった……?


 自信満々に答えを導き出したニーナへ、一瞬辿り着いた見解がそれを肯定させたが、プルプルと首を横に振るわせ、モモはすぐに否定をした。


「No, I don't think so.……He always treats me like a child.(違うわ……先輩はいつもあたしを子供扱いするもの)」

「I guess so.(そうかしら?)Surely, understand it inward!(きっとその内分かるわよ!)」

「ニーナさん……?」


 淋しそうなモモの横顔がニーナの元気な声で振り向かされて、途端パチンと音のしそうなウィンクが投げられた。


「Let the tomorrow's stage succeed for your mum, Tsubaki!(明日の舞台、椿ママの為にも頑張ってね!!)」

「ニーナさん……はいっ、スパスィーバ!!(ありがとうございます!!)」


 二人はにっこり笑顔でハイタッチをし、衣装室を後にした──。




★次回更新予定は一月六日です。

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