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Momo色サーカス  作者: 朧 月夜
【Part.3:冬】触れられた頬 ―○○○より愛を込めて―
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[27]罪と罰 〈M*T〉

★以降は2014~15年に連載していた際の前書きです。


 つい3日前に昨年最後の挨拶をしたばかりですが・・・(笑)。


 新年明けましておめでとうございます! 旧年中は拙作共々大変お世話様になりました* 今年もどうぞ宜しくお願い致します!!


 今話が二〇一五年最初の更新となります☆ タイトルから何やら怪しい雰囲気ですが、四月中旬完結までの四十話弱、何卒お付き合いくださいませ♡(ちなみにロシア人作家ドストエフスキー著「罪と罰」と同じになったのは偶然ですw)


※今回の再投稿では、三月上旬に完結致します。




「おい、いつまで隠れてるんだよ、モモ!」


 凪徒はタイミングを(のが)して依然出てこないモモへ、ハッパをかけるようにぼやいたが、モモは二人の会話を聞くことだけに集中していた所為(せい)か、心の準備が出来ないまま押し出される形となった。


「「あ……」」


 現れる、椿とモモの言葉にならない心の声。


「あの……あの……もっ、桃瀬です! ……お、母さ、ん……」

「も……も、せ……──」


 モモは身じろぎすら出来ぬまま、気付けば凪徒の前に立たされていた。視界に映った母親は、一瞬瞳を合わせたものの、モモの名を(つぶや)き両手で顔を覆ってしまった。モモより淡く長い茶色の髪を後ろで結い、見える手の甲は雪のように白い。


「神様は本当にいらっしゃるのですね……生きている内に貴女に会えるだなんて……こんな罪深き私にも……光を与えてくださるだなんて……」

「お……母さん……?」

「『お母さん』と呼んでもらえることなんて、一生有り得ないと思っていました……ありがとう……ありが、と──」


 涙が掌を伝って落ちていった。椿はほんの少し嗚咽(おえつ)を洩らして、やっと落ち着きを取り戻し、近くにあったハンカチで涙を(ぬぐ)って顔を上げた。


 モモの大きな瞳をほんのり細めたような、憂いを(たた)えた優しい眼差し。自分よりもロシアの血の濃いことが感じられるすっとした鼻筋と輪郭。そして同じ形をした小さな丸みのある唇は、泣くのを我慢しながらうっすらと微笑んでいる。


「そちらへ……行っても良いですか?」


 モモはもっと近くで母親を感じたいと思った。自分は駆け寄りたい衝動を押さえているのに、(いま)だベッドを挟んでの二部屋を(また)いだ会話は明らかに不自然だ。


「ご、ごめんなさいっ……こんな狭い部屋に籠もったままで、立ち話をさせてしまって……今、そちらへ行きますね。とても……みっともない姿で、申し訳ないのですけれど……」

「え……?」


 椿は……立ち上がりはしなかった。両肩が上がり、身体の両脇の何かを動かすように腕に力が込められた。やがて身の高さを変えぬままベッドのこちら側に現れた姿は、車椅子に座っていて、膝の上には厚手のブランケットが覆い被さっていた。


「お、母さんっ──」


 予想もしていなかった全貌に、モモの身体は引き寄せられるように駆け出して、椿の足下にしゃがみ込んだ。片手は車椅子の肘掛けを(つか)んだが、反対の手はブランケットに触れ、その先にあるべき物に触れられず、手の先の空間がひしゃげて、ハッと引き戻してしまった。


「あ、脚が……」


 震える声で、それでも何とか顔を上げ、目を合わせる。


「驚かせてしまってごめんなさい。桃瀬……と、呼んでも良いのかしら? 呼べる資格が、私にはあるのかしら……。貴女を置いてきた(バチ)が当たったの……貴女を迎えに行けなくて……本当に……ごめんなさい……」


 椿はモモの髪をそっと撫でようと手を差し伸べたが、それすらもいけない気がして、その手で再び顔を覆ってしまった。モモはもう一度、恐る恐る椿の膝に触れる。




 その下には、伸ばされている筈の……両脚が、無かった──。




挿絵(By みてみん)




★以降は2014~15年に連載していた際の後書きです。


 ほぼ拙作専属絵師となりつつある(笑)希都様から頂きましたイラストです*


 お読みくださった後に「(たぎ)った」そうでw、お忙しい時間を縫って描き上げてくださいました♡


 希都様☆ いつも拙作の為に睡眠時間やお仕事の時間を()いてくださり、本当に有難うございます! それもこんなに素敵な二人・・・大切に致します! 多謝!!



   2015年1月14日 朧 月夜 拝




★次回更新予定は十二月十二日です。




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