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Momo色サーカス  作者: 朧 月夜
【Part.3:冬】触れられた頬 ―○○○より愛を込めて―
115/154

[25]ヒントと手掛かり 〈M♪〉

挿絵(By みてみん)


★以降は2014~15年に連載していた際の前書きです。


 いつもお読みくださいまして誠に有難うございます♪


 最近読者様になってくださいました『さかな』様より、クリスマス特別公演中の可憐なミニスカサンタモモを頂きましたので、こちらにてお披露目させていただきます☆


 さかな様! この度はナイスタイミングでの素敵なモモイラスト、本当に有難うございました!!


 先日イケメン暮イラストをプレゼントしてくださいました『長緒 鬼無里』様と、「今、珠園サーカスはきっとクリスマス公演中で、モモの衣装はミニスカサンタに違いありませんね♡」なんて会話していた矢先でしたので、まさしく作者に『さかなサンタ』さんが訪れた! と言った状況でしたw


 私自身も絵を描きますから同じ想いと思われますが、イラストを描きましたキャラには親近感が増すことも多いのではないでしょうか?


 お好きと言ってくださった暮共々、更にモモも応援していただけたら幸いです*


 皆様も是非いつか、『珠園サーカス クリスマス特別公演』にお越しくださいませ!(作者が一番行きたいと願っておりますが・・・(苦笑))



   2014年12月27日 朧 月夜 拝




「杏奈の奴……やっぱり隠していやがった!」

「え……?」


 モモは凪徒の早足に遅れぬよう小走りになりながら、隣で苦虫を噛み潰したような横顔を見上げた。雪は先刻よりも明らかに大粒になっている。


「おやじもきっとグルだっ。あの二人、ロシアの家系にも椿さんの居場所にも、おそらく辿(たど)り着いていたんだ。なのに教えもしないで、この寒い中探させるなんて……どうかしてるぜ!」


 グルルゥ……そんな(うな)り声を出しそうな程、凪徒は悔しそうに歯を喰いしばっていた。


「あの、先輩は何処(どこ)で誰から情報を得たんですか?」


 ふと思う、隠された理由と見つかった場所。


「え? ああ、今朝おやじから変なメールが届いていて、「とにかく何処でも()いてみろ、サーカスでもだ」ってあったから、ダメ元でニクーリンの窓口でも訊いてみたんだ。そしたら「名字はヤマシナじゃないけど、ツバキって名前の女性なら知ってる」って……──んんっ!?」


 ──それって、お母さんが『サーカス』と繋がっているってこと!?


 凪徒も自分の説明した言葉から、モモの気付いた驚くべき疑惑に、目を丸くして立ち止まった。


「そうなのか……? いや……単にあの受付の姉ちゃんが、お前の母さんと知り合いだっただけかもしれない。ちっくしょ、もっとどういう関係なのか訊いてくるんだった! とにかく、その辺は椿さんに会えれば本人から聞ける……急ぐぞ、モモ!」

「はっ、はいっ!」


 慌てて歩を進めた凪徒に、モモも急いで後を追いかけた。




 ☆ ☆ ☆




 教えられた住所は、八十年以上の歴史を持つ世界最大級の人形劇場から、少し北へ進んだ先、ニクーリンからも徒歩十分程度の通りに面した建物だった。石造りを綺麗な黄色に染め上げた外壁が、真白い雪景色に温かく映える。四角い六階建てに小さめの長細い窓が幾つも並び、おそらく数十世帯が暮らしているように思われた。


「此処か……?」


 正面口から扉の中に入り、階段横の郵便受けで名前を確認した。ロシア語で書いてあるのでモモには分からないが、最上階の三号室に視線を合わせた凪徒が、住所のメモと見比べて、小さくその名を(つぶや)いた。


「ツバキ・オルロフ……きっとおじいさんの苗字なんだろうな」

「オル、ロ、フ」


 モモも神妙に一言一言噛み締めて繰り返す。そして凪徒には、記憶の断片にその名が(かす)かに現れた。オルロフ──記憶違いでなければ、それは──。


「特にインターフォンとかなさそうだな。……エレベータがある。──行こう」


 モモは無言で(うなず)き、雪を払ったコートを(まと)う広い背を追った。


 六階に到着し、出た先を右へ歩いてすぐが六〇三号室だった。


 扉横のブザーを押す凪徒の後ろに隠れるように、息を殺して応答を待つ。しばらくして内側から鍵を開ける物音と、(わず)かに扉の動いた隙間から漂うぬくもりのある空気に、モモは思わず息を呑んだ。


「クト?(どなた?)」


 女性の声だ。心臓が早鐘のように打ち、知らず凪徒のコートの後ろを(つか)んでいた。


「ああ……ズドラーストヴィチェ(こんにちは)。イズヴィニーチェ(失礼ですが)──」


 が、意外にも凪徒の答えもロシア語だった。モモは不思議に思い、首を傾けて見上げてみると、少し背の高いロシア女性が微笑んで応対していた。


 分からない言葉のやり取りが数回続き、女性が招き入れるように扉を大きく開いた。凪徒はコートを脱いで奥へ消えた女性に続いたが、呆然と通路につっ立ったままのモモに気付き振り返った。


「何やってんだ、行くぞ」

「え……でも」


 現れたのは母親と同じ四十前後に見える女性だったが、残念ながらロシア人だ。


「お前の母さん、奥にいるって。以前は『山科 椿』で間違いなかったそうだ!」

「あっ──」


 凪徒の嬉しそうな目配せに、モモは袖がつっかえるほど動転した。おたおたとコートを脱ぎながら、温かな室内へ進む凪徒に走り寄った──。




★次回更新予定は十二月六日です。

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