表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Momo色サーカス  作者: 朧 月夜
【Part.3:冬】触れられた頬 ―○○○より愛を込めて―
108/154

[18]ロシア語と英語

「おい……もしかして、モモ、飛行機も初めてとか言わないよな?」


 予定通り空港に到着し、国際線カウンターでチェックイン。出国も搭乗も離陸も無事に済んだというのに、つい呆れた顔を向けてしまうほど緊張ガチガチで隣の席に着くモモに、凪徒は横目で問い掛けた。


「い、いえ……ありますよー中学の修学旅行で沖縄往復!」


 が、もちろんそれ以外に経験はなく、こんな長時間は初めてだ。


「だったらもう少しリラックスしとけよ。フライトは十時間半もあるんだ、その調子じゃすぐ疲れるぞ」


 凪徒は目の前の座席に、先程から目を通していた機内誌を戻し、自分の(カバン)から何やら冊子を取り出した。


「先輩は何度も飛行機に乗ってるんですか?」


 言われた通りに何とか肩の力を抜き、凪徒とは反対に機内誌を手に取るモモ。


「あーおやじの海外出張に良く付き合わされたからな。ロシアも夏なら二回ある」

「えっ!!」


 ──そ、そうなんだ……やっぱりそこは大金持ちの息子……。


 と、驚愕と尊敬の眼差しで凪徒の開いたページを目に入れたが、其処には読めそうで読めないアルファベットとは少し違う文字の羅列が見えた。


「先輩、それって……」

「ん? ああ、公演の合間にロシア語を少し思い出そうと思って買ったんだが、やっぱり時間なくてな。到着するまでに多少は頭に入るだろ」

「先輩、ロシア語読めるんですか!?」

「大学で少しかじったって言ったじゃねぇかよ。お前こそ挨拶くらい覚えとけよ?」


 言われてモモも慌てて(うなず)き、自分の鞄から少し大きめの冊子を取った。


「い、一応ガイドブック買ってきました! 確か此処の初めの方に会話集が……」

「ガイドって「るる○」かよ……。観光しに行くんじゃないんだから、ロンプラくらい買ってこい」

「ロン……?」


 と相変わらずの呆れ顔で、再び鞄から別の厚い本を出してきてモモに手渡した。


「え? あ、あの、これ、全部英語ですが……?」


 ロンプラ──正式にはロンリープラネット。世界を網羅する旅の指南書だが、通常英語版でビッシリ文字ばかりである。(註1)


「モモだって中学で英語くらい習ってるだろ?」


 ──習っていたら、みんな簡単に出来ると思ってるんですか~?


「は、い……有り難く拝読させていただきます……」


 ──これ以上、先輩を呆れさせるのは避けよう……。


 モモは適当に開いたページのアルファベットに集中し目を走らせたが、いつの間にかうたた寝を始め、食事の時間までぐっすり熟睡してしまった。(註2)


 ──別にそんなとこ、お前に期待してないけどさ~。


 凪徒はクスりと笑いながらモモの寝顔を見下ろし、再びロシア語講座の書籍を熟読し始めた──。




[註1]ロンリープラネット:日本語版もありますが、『ロシア』もしくは『モスクワ』が出版されているのか、作者も存じません。((2014年時点では)調べきれませんでした・・・すみません(汗))



[註2]居眠り:モモの名誉の為に補足致しますが、彼女も中学まではそれなりに良い成績ではございましたよ(苦笑)。




★次回更新予定は十一月十六日です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ