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Momo色サーカス  作者: 朧 月夜
【Part.3:冬】触れられた頬 ―○○○より愛を込めて―
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[12]ココロと叫び

★本日10月26日は、偶然にも「サーカスの日」だそうです♪




 ──あたしが先輩を好きなのは、見た目だけなの……?


 モモは洸騎に言われた言葉を反芻(はんすう)しながら、自分の見出(みいだ)せない心の真実を探していた。


 ──顔も良い、身長もあって筋肉もある、杏奈さんの話では頭も良くて、もちろん運動神経も飛び抜けて良い。声も透き通って好きだ……ツンデレのツンしかないことを除けば、何の文句もつけようがない……。


 ──だから? だからあたしは先輩を好きなの? ……そんなの先輩の中身を知らないファンの一人に過ぎないじゃない……。


 モモは溜息をつきながら外へ出た。先刻(さっき)の紅茶が効いたのか、トイレを目指して(こご)える冬空の下を歩く。着いた先には同じ用で来ていたリンが、流しで手を洗っていた。


「リンちゃん」

「あ、モモたん」


 いつもの可愛い声と笑顔。モモはその(おもて)と相対して、ふと疑問を投げ掛けた。


「ね、リンちゃん。いきなりだけど……リンちゃんって、秀成君のどんなところを好きになったの?」

「んん?」


 さすがのリンも目を丸くした。


「どんなトコロって……全部ダヨ!」

「え……? 全部?」


 リンの元気な即答に、モモも同じく目を丸くする。


「うん! リンのココロが「ヒデナーの全部、大好き!!」って叫んだの。だから全部~」

「心が……」

「そうダヨー! ドコとかドンナなんて言えないヨ~だってココロが叫んだんだモン!!」


 ──心が……叫んだ──。


 モモは刹那あっけに取られて口を半開きにしたが、やがて閉じ、微笑んだ。──そうだよね。きっとあたしの心もいつか叫ぶ。「先輩の全部、大好き!!」って!


「ありがとう、リンちゃん」

「へ? 何で「ありがと」?」


 今度はリンがあっけに取られたが、モモはその前を横切り、トイレの中へ去ってしまった。


 ──好きだと思っているのは自分だ。先輩があたしのことをどう思っていても、もう気にするのはよそう。例え隣からいなくなったとしても、この二年半、ずっと好きだったのが『あたし』なんだから──。


 そう想えたら途端に心が軽くなった。どんなに震える冬の空気の中でも、胸の辺りがじんわりと温かく光り、帰る足取りもフワフワと羽の生えた感じがした──。




 ☆ ☆ ☆




 翌日から再びいつも通りの生活が始まり、三日が過ぎた日曜の夜──。


「モモ、お客さんだとさ~団長室へおいでって」

「お客さん? 団長室?」


 片付けをほぼ終えようとしていた背中に暮の声が降り注がれて、モモは不思議そうに振り返った。──こんな時間に、それもどうして団長室なんだろう?


 小走りで駆けてゆき、団長室をノックして入室する──その瞬間、


「キャー! 相変わらず可愛いわねぇ、モモちゃん!!」

「……へ!?」

「お前……いい加減にしろって……」


 いきなり目の前に現れた影に抱きつかれ、両頬を撫で回され、黄色い声と、自分の驚きと……そして呆れた声が聞こえた──凪徒。


「あ、杏奈さん! お、お久し振りです……」


 相変わらずの鮮やかな赤い唇に視線を持っていかれながら、モモは苦笑いの表情で挨拶をした。杏奈の『モモのほっぺ好き』は健在のようだ。


 室内にはいつものニコニコ顔の団長、こめかみに手をやって疲れたように目を伏せる凪徒、そして自分を歓待した杏奈がいた。


「先週の日曜、此処に呼んだのは覚えておるかの、モモ?」

「あ、はい……あの時はすみませんでした……」


 杏奈は団長の正面に座り、モモはその隣──凪徒の正面に腰掛けながら、気まずそうに謝罪をした。洸騎から(のが)れて、一目散に自分の布団へ駆け込んでしまい、結局団長の用をすっぽかしてしまったあの夕。


「まぁあの時は、杏奈さんからの申し出を受け入れるか打診してみようと思っただけじゃから良いがの。で、結局、モモの返事を待たずして動いてくれたので、今日はその結果報告だ」

「結果……報告?」


 団長の言葉で一つ嬉しそうに咳払いをする杏奈の横顔へ、モモは疑問だらけの瞳を向けた──。




 その頃。テントを施錠し、点検を兼ねた見回りをしていた暮は、困ったようにウロウロしている女性の姿を見つけた。


「うちの団員にご用ですか?」


 声を掛け、それに気付いた影が近付く。


「あ、あの早野と申します。モモ……早野 桃瀬に面会したいのですが……」


 ──モモと同じ苗字!?


 暮を照らす街灯の光が、徐々に女性の全貌を顕わにした──。




★以降は2014~15年に連載していた際の後書きです。


 わたくし事ですが、『小説家のたまご』というサイトの管理者様よりオファーを頂き、おこがましくもインタビューに回答させていただきました。この作品を書いている『朧 月夜』という私が何をどう考え、どのように拙作と向き合っているのか・・・なんていう程の事は伝えられておりませんが(汗)、もしご興味ございましたらご覧くださいませ*


●小説家のたまご:たまご No.007 朧 月夜インタビュー


【前編】

 http://xn--38jva8b9cv681aipal42x.com/interview/231/


【後編】

 http://xn--38jva8b9cv681aipal42x.com/interview/234/


(・・・とお伝えしたものの、残念ながら現在このサイトは存在していないようです。。。(涙))


 覚え書きとしてココに置かせていただきます(苦笑)。




★次回更新予定は十月二十九日です。




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