第10話
10月29日ぶん
短めですがどうぞ。
頭の中にある言葉を時間内にまとめられんかった。
目を覚ますとそこは学校ではなくて、病院の中だった。
電話がかかってきて直ぐに倒れたのは覚えている。それが誰からの電話だったのか、どんな内容だったのかまでは思い出すことが出来なかった。
真っ白な天井。消毒液の香りが漂うこの空間は嫌でも人を病人のように変えてしまう。今までは体に異変を一切感じなかったのに、体を動かしたくない程怠かったり、熱があるのか寒気がしたり、皮膚が敏感になって僅かな肌着の擦れさえ痒く感じたり……。
そんな、病院のベッドの上で寝ることと病人であることが頭の中でイコールによって結ばれていることを体感させられた。
長時間寝ていたんだろう。
窓に映っている太陽は、赤く染まって夕暮れ時を示している。
「よかった、起きたんだな」
「あれ? 祐作? サークルはどうしたの?」
「休んだ。学校も途中で抜け出してきた」
「そう、なんだ。ありがと」
窓と反対側には祐作がいた。
パイプ椅子に深く腰掛けて本を読んでいた祐作は、膝の上に読みかけの本を栞も挟まずに置くとこちらに笑顔を向けてきた。
なんか昔もこんなことあったな、なんて小さな笑いが込み上げてくる。
小学生の頃。
雨の日も風の日も関係なく外で遊ぶ祐作は、頭から雨を被っても翌日もケロリとしている少年だった。何度も転んで掠り傷を追っていたから免疫でもついたのだろうか。
それに対して私の身体は一般的な強度しか持っておらず、祐作についていけば一定の確率で体調不良を引き起こしていた。
その度学校を休んで、元気なはずの祐作も学校を休んで看病してくれようとしたっけ。さすがに何度か止められたようだけど。
「ごめんね、心配かけて。迷惑までかけちゃって」
「迷惑って……。今までさんざん迷惑かけてきたのは僕の方だろ? このくらい」
「ううん、これのこともあるけど、それだけじゃなくて……」
電話の具体的な内容は覚えていないけれど、だいたいの予想はつく。あの日から度々かかるようになった電話。時間が経てば少なくなると思ったけど、逆に増えてくる始末だ。
人は少しでも不快に思ったことがあったらその真偽を問わず排除しようとする生き物だ。その手がネットを経由して私の元まで伸びてきたということ。ただそれだけのこと。
「他に何かあったか? 掃除は僕が柚葉に対してだろ。料理もそう。僕の方が今まで柚葉にかけてきた迷惑が多かったと思うけど……。というか、今回倒れたのも僕のせいだよな。ごめん」
「違うよ。祐作のせいじゃない。これは私の問題だから気にしないで」
「そうなのか?」
納得したような言葉を残しながらも首をひねって考えるのは祐作らしい。
そんな彼の姿を見ていると心が落ち着いて、無性に悲しくなってくる。
病室を同じくする患者さんとその家族の話声を遮るように、私の携帯が鳴いた。
今日の筋トレ日記
腕立て伏せ30回
腹筋30回
背筋30回




